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マーケティング

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マーケティングについて書いた記事です。
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数値を「追う」「見る」の定義を揃える

スタートアップだと「KPIを追いかける」「この指標を見る」のようなやりとりはよくありますが、この「追う」「見る」の定義は大きく2つあり、定義を統一しないと議論が混乱します。 ある数値を目標として達成するために行動する(コミットメント) ある数値を目標とせず、結果だけを確認する(モニタリング) 例えば、こんな会話があったとします。 A「マーケティング部ではリード数を追うので受注までは追っていません」 B「受注しないと売上にならないから受注まで追うべきでしょ」 A「リ

耳鼻科のようにセールスとマーケティングを診察する

医者は内科・肛門科・皮膚科と診察部位に応じて細分化していますが、耳鼻科は一まとまりになっています。耳と鼻は耳管で繋がっており病気の併発も多いので、両方の診察が必要だからです。もし医者が耳科と鼻科に分かれていたらスムーズに診察できないでしょう。 同じことがセールスとマーケティングにも言えます。事業会社では別部署に分けられ、支援会社も広告代理店、営業支援会社などと片方の領域に特化することが多いですが、この2つは密接に繋がっているので両方を診察する必要があります。例えば、私が過去

マーケティング版のお薬手帳と薬剤師を用意する

薬には同時に服用すると副作用を起こしたり悪化するものがありますが、同じことがマーケティングにも言えます。 例えば、ある会社が広告代理店、Web制作会社と契約しており、前者から「Web広告で流入数を増やしましょう」、後者から「WebサイトのCVRを上げましょう」と提案を受けたとします。以前に書いた通り流入数とCVRはシーソーの関係にあるので、この2つを同時に取り組めば矛盾を来しますが、それに気付かずに失敗する会社がよくあります。薬の処方時には薬剤師が飲み合わせを確認してくれま

アルゴリズムハックから顧客視点に立ち戻る

デジタルマーケティングにおいて、プラットフォームのアルゴリズム研究は日々行われています。SEOであればGoogleで上位表示、SNSであればXで大量のインプレッションをとるためのテクニックが存在しますが、こうしたアルゴリズムハックを意識しすぎると顧客視点を見失うことがあります。 例えば、SEOで「記事の文字数は3,000文字以上」のようなテクニックがあります。これは顧客に情報量の多い記事を届けようという考えから来たものであり、その目安として文字数が示されたにすぎない(実際、

BtoBマーケティング世代論

一言にBtoBマーケティングと言ってもスキルや事業領域は人によって大きく違うわけですが、特に「世代」による考え方やスタンスの違いが大きいのではないかと感じています。 BtoBマーケティングの3つの世代人材不足と言われ続けるBtoBマーケターも緩やかに人が増え続けていますが、国内でBtoBマーケターが増えたターニングポイントが2つあると思います。「MA上陸」と「SaaSの春」です。 EloquaやMarketoやPardot(当時)などのMAが日本に上陸したのが2014年前

KPIのカニバリを防ぐ

マーケティングやセールスの指標には、一方が上がると他方が下がるというシーソーの関係が存在します。例えば、Web広告で配信ターゲットを潜在層に広げるとインプレッションやクリックは上がりますが、CTRやCVRは減りがちです。また、商談数を増やすために導入確度の低いアポを取ると受注率は下がります。 これ自体は自然な現象なので問題無いのですが、シーソー関係にある指標A、Bを部署(または担当者)A'、B'のKPIに設定した場合、一方がKPI達成のために努力するほど他方を妨げるというK

痔の治療を通じてマーケティングについて考えた

マーケティングと医療は似ていると私は何度か書いていますが、4月に痔が悪化して病院に行ったとき、それを考える出来事がありました。 痔の手術軽症の外痔核なので、医師からは「軟膏を塗るのと切除する、どちらの治療もできるけどどうする?」と聞かれましたが、私はこれに丸投げな印象を受けました。医療は患者の自己決定権に基づいて行われるので(インフォームド・コンセント)私に判断を委ねられるのは理解できるのですが、痔に詳しくない私は「どうする?」と聞かれても判断が難しかったからです。結局、い

支援会社でエンドユーザー視点を習得するための副業のすゝめ

私は広告代理店など支援会社向けに人材育成の仕事をすることがあります。クライアントワークを行う現場社員のスキルや案件対応力を伸ばす目的で、座学でノウハウを教えたり、実案件に伴走して提案資料にレビューしています。実務スキルはある程度まで伸ばせるのですが、習得が難しいのがエンドユーザー視点です。 エンドユーザー視点とは、製品を利用するエンドユーザー像(ペルソナ)からコンテンツや施策を逆算することです。当たり前のことを言っているようですが、これをスムーズにやれるのは事業会社でのマー

支援会社・事業会社はどちらも経験すれば良い

「支援会社・事業会社のどちらが良いか?」はマーケティングの転職やキャリア論における定番のテーマですが、この問いは二択ではなく、どちらも経験すれば良いと思います。自分にどういう働き方があうのか分かるからです。 ※「支援会社」の定義は広告代理店・CRMコンサル会社・Web制作会社・SEOコンサル会社など、クライアントワークとしてマーケティングを支援する企業全般です。 この問いに悩む人は、支援会社・事業会社いずれかに勤務しており、片方の経験しかない人が多いでしょう。いわば隣の芝

広告代理店がCRMの提案や要件定義をできるようにしたい

CRM提案を丸投げする広告代理店「Web広告においてはCPAだけでなくLTVが重要」「CRMも絡めた提案が必要」というのは多くの広告代理店が理解しているでしょう。古い記事を漁ると、売れるネット広告社の代表・加藤公一レオさんが「代理店はCRM領域で踏み込めるか」と2016年で指摘されていたので、実際にはもっと前から問題になっていたはずです。 しかし、実際にはクライアントからCRMを相談された場合、自社で提案を作っている代理店はほとんど無いと思います。CRMに詳しい支援会社を

支援会社経由のクライアントワークは信頼構築できるまでお受けしません

※本記事における「支援会社」とは、クライアント向けにマーケティング・採用支援をされる会社全般を指します(広告代理店・制作会社・コンサルティングファーム・MAパートナー会社・RPO会社など)。 以前、エンドクライアント→マーケティング支援会社→広告代理店→私 の三次請け案件の話が来たものの、結局辞退したことを書きました。 この件は私とマーケティング支援会社・代理店との考え方のミスマッチが辞退の原因でしたが、価値観のすりあわせをしなかったのが私の反省点です。広告代理店の人とは

なぜセールスやマーケティングから人事にジョブチェンジする人が少ないのか

事業部→人事のジョブチェンジのトレンド最近は「人事経験不問」「セールスやマーケティング経験者募集」という人事の求人をよく見かけます。私自身、BtoBマーケティングを長らく続けて、3年前から採用の仕事を始めましたが、セールスやマーケティングスキルが採用に活きるだけでなく、事業部の経験があることで人材要件や組織の理解度が深まるので、事業部経験者が人事にジョブチェンジすることで大きな成果を出せるというのは、実体験としても理解できます。 一方で、セールスやマーケティングから人事に

Web広告のカスタマーサポートの品質が低下し続ける理由

前回、Microsoft広告に不当な理由でブロックされた話を書きましたが、Microsoftに限らず、全体的にWeb広告プラットフォームはカスタマーサポートの品質が低いです。 一般的に、カスタマーサポートやカスタマーサクセスには「ハイタッチ」「ロータッチ」「テックタッチ」の3種類があります。Web広告に当てはめると、 ハイタッチ:顧客とのミーティング ロータッチ:電話・メール・チャットでの問い合わせ対応 テックタッチ:オンラインヘルプやコミュニティ となるのですが、

Microsoft広告を出稿する前にポリシー違反でブロックされた

Microsoft広告は2022年から日本で利用開始されました。Google、Yahooに次ぐリスティング広告として注目されており、私もたまに運用するのですが、なぜか広告を出稿する前なのにポリシー違反でブロックされる事案がありました。現在は解消されているのですが、同じ目に遭った企業のために、経緯や解消方法を記載しておきます。 ブロックまでの経緯私が取引しているクライアントA社にて、Microsoft広告を運用することになり、2023年11月にA社にアカウントを開設いただいた