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96【事業再生・常に持つべき視点】地方在住経営コンサルタントの思索

写真は岡山市の金融街、市役所筋です。地方都市といえど、この十年程は加速度的にどんどん風景が変化しています。
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はじめに


前回は「事業再生・基礎の基礎」と題して、全体像をお伝えしました。
↓前回ブログ。

今回は少しだけ踏み込んで、経営危機の時のみならず、業績が安定している平時においても持つべき「大事な視点」を述べたいと思います。実は、盲点でよく忘れがちな視点です。もし、良ければ最後までお付き合いください。

忘れがちな視点

もったいぶらず、結論を言います。

それは、個人資産を含めた時価評価です。

つまりは、法人・個人合算の時価に置き換えた貸借対照表を常に決算毎に考えるということです。

一見簡単なようで、難しい面もあります。しかし、いざ経営がバックギアに入ってからは、冷静な判断や計算ができなくなることがあるので、平時からきちんと法人個人合算で、本当の純資産額を把握しおくことが大切です。

つまり、平時から常に個人資産も含めて、

「今、現金化でき得る何を持っているのか?」

「いざ、経営がバックギアに入ったら何をどの順番で現金化するのか?」

という視点を持つことが重要です。

尚、この場合、個人資産の範囲は代表者自身だけではありません。特に、事業再生フェーズの場合は、代表者の両親、代表者の配偶者とその両親の資産も、一覧表に記載できるのであれば、生命線の一つとなり、金融機関の支援獲得においてはプラスの面しかないこともお伝えいたします。

経営者自身が企業の所有者(オーナー)であり、経営のかじ取りを担っている立場であることがほとんどです。要は所有と経営が分離されていることはまれです。

そのため、法人代表者個人の資産背景が、金融機関の継続支援のカギとなるという日本特有の事情も押さえておくべきと考えています。

実態が資産超過か?債務超過か?

年商10億円規模までの中小、零細企業に、保有する未稼働及び遊休資産があるケースは意外と多いと言えます。

製造業においては、稼働率が著しく低い設備。直接営業に影響しない所有不動産などが例としてあげられます。

次に、ゴルフ会員権、リゾート会員権は企業の経営が好調時には、営業マンからの攻勢に耐えきれず、購入してしまっていることがよくあります。これらも、いざという時は売却対象となります。

さらに言えば、以下のポイントを踏まえて、法人個人合算の貸借対照表をシミュレーションできていれば、転ばぬ先の杖となります。

・時価に換算できるものはできる限り時価評価しておく。
・個人資産においても同じ。
・誰の個人資産まで計算するかは、それぞれの事情によるが、できる限り多く正確に把握しておくことに越したことはない。
・経営の「いざ」という局面にどんな個人資産を現金化して投入できるかは、経営者の交渉力や一族全員のスタンスによることろが大きいのであらかじめ交渉しておく。

※上記を踏まえて、本当の純資産額を決算期毎に計算しておことをお勧めします。ちなみに金融機関は毎期決算後に融資対象企業の、本当の純資産額の計算作業を行い、債務者としての格付が算出され、リスク度合いに合わせた基準金利や、融資限度額の目安が設定されています。この事実をシビアに、経営者は理解すべきと考えます。

二つの考え方で本当の純資産額を計算しておこう

考え方①事業継続時の本当の純資産額=存続価値
継続B/Sと呼んだりします。一番のポイントは、経営に必要な不動産や機械設備は簿価のままということです。なぜかと言うと、単純に処分しないからです。処分すれば営業がままならなくなるわけですから、簿価のままでOKです。遊休不動産は路線価を元に計算します。販売手数料や、場合によっては解体費用などもかかり、急いで売る場合の減算分なども考慮し、現実的な販売価格の70%程度の評価が妥当と言えます。上場株式は時価で評価できます。ただし、換金性の乏しい関係会社株式などはゼロ評価です。

考え方②事業廃業時の本当の純資産額=清算価値
基本的に存続価値と同様の算定方式です。しかし、廃業・清算を前提に評価するわけですから、営業に関連する設備や不動産も全て売却を想定して時価評価します。

この二つの純資産額を計算し、どこまで個人資産を入れられるかで、経営されている自社の本当の純資産額がはじき出されます。

財務的に「いくら余力があるのか?」を把握せずして、施策を考える経営者は往々にして、身の丈以上の積極投資に走りがちです。

自らの財務的体力を個人資産も含めてシビアに計算できる経営者が、生き残り、企業を発展させていく可能性が高いと言わざるを得ません。

売却処分のあるべき順序

最後に、ひとつの目安ではありますが、売却処分、現金化の順序を提示します。
①法人の未稼働、遊休資産
②代表者個人の資産
③代表者配偶者個人の資産
④その他一族の資産

事業再生において「貸借改善」「損益改善」の二本柱であると前回述べました。今回は「貸借改善」分野の一歩目である、現預金量増加のための資産処分へ繋がる考え方と具体策について書きました。この一連の処分で得た、現預金や借入や個人資産から調達した虎の子の資金をどう、積極投資して売上を向上させていくのかという「損益改善」の分野に突入していくというのが、事業再生の基本的なおおまかな時系列と言えます。

まとめ

・年商10億円規模までの中小、零細企業の経営者は常に、個人資産を含めた純資産額を計算しておくべきである。

・事業継続させるケースと廃業の二つのケースで純資産額を計算すると自社の余力が分かりやすくなり、打つべき施策の精度が向上する。

・事業再生において資産処分などの「貸借改善」から「損益改善」へという流れがスタンダードである。
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株式会社なかむらコンサルタンツ

代表取締役 中村徳秀

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