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タルコフスキー「ストーカー」

初めてこの映画を観たのはいつだったのだろう。

ずいぶん前のことなのではっきりとは覚えていないが、映像を観て「これこそロシアの風景だ。」と感じたということはロシアに行ってから観たということなのかもしれない。

冒頭のシーンからその映像美に釘付けになる。

薄暗いほとんど光の差さない部屋と、その部屋の中をようやく覗けるくらい隙間が開いた両開きの扉。

光と影だけがエフェクトになっているとても印象的な絵だ。

タルコフスキーの映画を観ていると、まるで静物画を観ているような気分になることがよくある。

静寂が漂っている動かない一枚の絵を眺めているような感覚。

そして、先日観た「ブレードランナー2049」や「透明人間」とは全く比べ物にならないくらい、数分間何も起こらないカットが多用される。

まだ冒頭部分から3分の1も観れていないのだが、タイトル名にもある「ストーカー」と呼ばれるゾーンの案内人であるアレクサンドルが作家と物理学者である二人の男とともに"ゾーン"という立ち入り禁止地区に侵入する、という話だ。

映画が製作されたのが1979年だから、ゾーンがチェルノブイリ原発事故を暗示しているというわけではないだろう。でも、廃墟のような景色を観ていると、どうしてもイメージが重なってしまう。

ただ、物語の設定上ではゾーンの奥にすべての望みを叶える部屋がある、と言われているのだ。

作家は自分の求めているものを知るため、物理学者は真理を探るためにゾーンへ行こうと心に決めた。

原作はストルガツキー兄弟の『Пикник на обочине』(路傍のピクニック)。ストルガツキー兄弟のSF小説「滅びの都」もなかなか読み応えのある小説だったのでオススメしたい。

タルコフスキー版のSF映画には未来的なものや派手な演出はほぼないが、光と影、水の描き方が独特なので続きを観るのが楽しみだ。

求めているのが何なのか 
いや 求めていないのが何なのか 
答えが出ない

口に出すと溶けてしまう 
太陽に当たったクラゲみたいにね

ストーカー⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️


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