初めての夜勤
8月6日になった。初の夜勤開始は前日5日の23時前。夜の接続は悪いだろうと1時間に家を出たら珍しく待ち時間がゼロだったため、シフト開始時間の20分前に着いてしまった。ちょうど遅番のシフト会議の最中だったようでみんなに「間に合いすぎだね!」と笑われたくらい。相変わらず同僚たちは和やかである。
23時からシフトが始まったが就寝時間後の見回りから、前日のリストの整理、ゲストへの連絡カードの作成など少しはやることがあったので安心した。そうでもしないと時間がなかなか経ってくれないではないか。ロシア語話者のリーダーがかれこれ1時間半くらい姿をくらましている間にゲストから鍵が閉まらない、隣のベッドがうるさくて子どもが寝付けない、クーラーが寒すぎる、などの苦情がいくつか届いた。その度に別のリーダーと一緒に現場の確認をするのである。
「もう少し静かにしてください」
「壁を叩かないでください」
「確かに寒いですね」
「少々お待ちください」
実際に話すロシア語は少ないがゲストの苦情を理解出来なければ対処ができないのはいつも通り。ありがたいことに頑張ればなんとかわかる範囲のことだった。ただ、ウクライナ語話者が来たときはお手上げだった。こればかりは仕方がない。
今、ちょうど目の前の時計が2時を過ぎたところだが若者がスマホゲームで遊んでいる音が聞こえてくる。おそらく3時を回らないと静かにならないのだろう。
日本は朝の10時過ぎ。息子と相方は宮崎で朝ごはんを食べている頃だろうか。親友とカヌーに出かけた娘はとっくに眠っているだろう。そして私はなぜか男性ばかりの中で一人カウンターの後ろで待機しているのだから人生とは不思議なものである。昼間の仮眠が効いたのか今のところはまだそれほど眠気を感じていない。やることがないと言っても仕事モードになっているんだろう。
もう少ししたら向かいのターミナルにあるキオスクに何か甘いものでも買いに行こうかな。空港のターミナルも今では難民の登録(チェックイン)デスクになっている。飛行機を待つためのベンチも待合場所になっている。あれだけよく利用した空港の変わり果てた姿に一抹の寂しさを感じなくはないが別の役割を果たしているのだからそれはそれでいいのだろう。クーラーが効いているので少し寒いのが難点だがお腹が空いたらカップヌードルでも食べようかな。少しだけフライト中の気分になれるかもしれない。
現在、3時前。残すところあと4時間半。
このあと、22歳の同僚とチェスをやったのだが思いのほか白熱して1時間半近くもウンウン唸りながら頭を使ったらへとへとになった。何でもやってみるものである。「ぼくはチェスは上手い方だと思うんだけど、完全に負けだよね。もっとチェスをやった方がいいよ」と練習を勧められた。この職場、どうやら仕事以外にやることの方が多いらしい。ロシア語とチェスとバレーボールにバスケが上達するならいいじゃないか。いいのか、それで。
また同僚との距離が縮まった。何でも一緒にやった方が仲良くなれるのだ。何でもいいけど眠すぎる。
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