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「自己否定をやめるための100日間」という朗読を聞いてみた

最近、気になっている人がいる。前から気にはなっていて、Twitterでフォローもしている坂口恭平さん。とにかく多才で多彩で自由奔放なんだけれど、「生きのびるための事務」といった本も出版されている不思議な方である。

そんな坂口さんがスペースで今書いている本の朗読をされているようだったので、簡単にお昼を済ませた後に聞いてみた。聞き始めて7分を過ぎたあたりから笑いが止まらなくなったが、ケラケラ笑っているうちに朗読が始まった。

自己否定に関するこれから出版されるという本なのだが、とにかく自分と向き合い、とことん分析していく様子が手に取るようにわかる。印象的だったのは自己否定をしているときは時間を感じられなくなる、という件や自己否定している様子を3人に語らせる、というもの。頭の中でやるのではなく、紙の上で私(自己否定されている人)、敵(罵倒する人)、友達(信頼できる人)の3人にやり取りをさせるらしい。

そうすることで出てきた結論が自己否定の目的が葛藤するためである、というものだった。この発想はなかったので新鮮だったのと、何より分析の仕方が明快でとてもわかりやすかったので舌を巻いた。さらに驚いたのが坂口さんとリスナーのやりとりである。

自己否定をしがちで自信をなくしているであろうリスナーに「じゃぁ、あなたの自己否定リストを文字にして書き出してみよう!」とどんどん質問を振り、それを紙に書いていく坂口さん。「、、、それで自分には生きる価値がないと思っちゃうってこと?そこまでじゃないか」みたいなことが何度か起こる。あまりにもストレートなので聞いている方も思わず笑ってしまう。

「え、ということは坂口恭平と電話していれば自分に価値がないって思わないってこと?それでいい?」

寂しい、自分には生きる価値がないと訴える相手を受け入れる気満々である。懐が深いというかなんというかやはり只者ではない。かと思えば「買い物に行くときは僕と話してるよりいいってこと?」買い物という行為にすら嫉妬しているかのような物言いに思わず笑ってしまう。どこまで本気なんだ。こんな調子でこの人はこれまでに何人の人を救ってきたんだろうか、と思わず考えてしまった。坂口恭平さんは「いのっちの電話」というサービスをもう2012年から提供されているのだ。ここまでできる人はなかなかいない。本まである。

リスナーとのやり取りが素晴らしいのも「いのっちの電話」での経験が生きているのだろう。なんてったってのべ2万人もの人とこれまで話をされているのである。これを携帯電話を公表して実践されているのだから、本当に気が遠くなる話だ。行政に任せていられないからと個人単位でやる、という考えに普通の人は至らない。

どこにいて何をするか、というのも大事なんだけれど結局は「誰と繋がっているか」なのかもしれないなぁ、と話を聞きながら思った。あとは積み重ね。他人と比較する暇があるくらいなら、一心不乱で楽しみながらどんどん積み重ねていく。

とにかく今日たまたま録音されたスペースを聴けたのはラッキーだったし、なんなら「自己否定リスト」なるものを文字に書き出してみたくなった。


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