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死んだと思っていたじいちゃん

当時、母方の両親(じいちゃん・ばあちゃん)は生きていたが、父方はばあちゃんしかいなかった。

4,5歳頃、疑問に思い「じいちゃんは?」と父に聞くと「昔に死んだ」と言われた。

「そうか」と思い、死因など聞くことはなかった。

そして、20年の時が経ち、5年ほど前のことである。

実家で父母妹の3人で「じいちゃんが入院した」という会話をしていた。この頃、母方のじいちゃんも亡くなっていたので、私のじいちゃんはもういないはずだった。

「誰の話?????」と思いながら、黙って聞いていると、父方のじいちゃんの話だった。

「え????????」と頭の中はパニックになった。全く理解できなかった。

確認すると父方のじいちゃんは生きていた…!

蘇った訳ではなく、死んでいなかった。父が発した「昔死んだ」というのは冗談だったらしい。もちろん、言った本人は全く覚えていなかったが…

どういう事かと言うと、私が生まれる以前に離婚していたらしい。そもそも母と結婚する前の話なので、母も会った事がなかった。

離婚の理由がじいちゃんにあったらしく、腹が立ってもう会わないつもりだったらしい。

後に聞いた話だが、父の兄である叔父さんは早くに結婚していて、従兄弟は離婚前のじいちゃんとよく遊んでいたらしい。離婚して急にじいちゃんがいなくなったため、従兄弟が叔父さんに「じいちゃんはどこ行ったん?」と聞くと「北海道に旅行へ行った」と答えられたらしい。そこからずーっと会えてなかったので「長い旅行やなー」と思っていたらしい。発言に責任を持たない本当に適当な兄弟だ。

「老衰していて、あまりご飯が食べれないので長くない」との事だったので入院している病院まで初めて会いに行った。

チューブが繋がっていたため、会話はできない状態であったが意識もしっかりしていて話している内容は理解していた。

しかし、私はじいちゃんがいないものとしていたので全く会話も浮かばなかった。微笑み合った程度だった。

その数週間後に亡くなり、次に会ったときは葬儀場であった。

思い出が一切ないので、何も振り返ることはなかったが「今、私がここにいるのは、この人のお陰でもあるなー」と感慨深いものがあった。

私が会えたことも良かったが、1番は腹が立って会いたくないと言っていた父がじいちゃんの死に素直に立ち会えている姿を見れて嬉しくなった。

お盆だからという訳ではないのだが、死について考える機会があり、思い出すことが多くあった。

私の中で死んでいたじいちゃんに出会えた変な体験でした。


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