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みんなで作品を作る インスタレーション作家 松澤有子さん

(※今回のインタビューを動画にまとめています。よろしければ、動画も合わせてご覧ください。)

逗子出身、逗子在住のインスタレーションアート作家として活躍される松澤さん。

インスタレーションとは空間現実、空間そのものが作品になるアートのこと。地方の廃校や使われなくなった酒蔵を作品に落とし込む事が多い。地方の芸術祭にでることも多かったが、今は地元、逗子を中心に活動している。

インスタレーションがコミュニケーションに

オーストラリアに住んでいたころ、アートの大学で版画をやりたいと思っていたけど、専攻学科が無くて、版画や彫刻などいろいろなことが学べる学科でアートを学んだ。
例えばラグビーチームからくつ下を拝借して、 新聞紙を詰めて100足ほどワイヤー刺して砂浜や草むらに立てるなど、いろんな作品作りをやっていた。
やっていくうちに、こういう表現の仕方もあるんだなって気付き、
自分に合ってると感じた。
自分がネイティブでなく話せないことがプラスになって、インスタレーション作品がコミュニケーションツールになった。

世代と場所を超えた一体感

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今までで一番印象に残った作品は大地の芸術祭(新潟)トリエンナーレでの展示だった。
 
山を登り切ったどん詰まりのところに12軒の集落の分校があった。
バスも、店も近所にないので、新潟でバイクを購入。
数か月くらい前から現地に入って制作を開始した。 
 
そこに集落のおばあちゃんがおにぎりを差し入れてくれた。
待ち針のインスタレーションを制作していたら、そのおばあちゃんが
手伝ってくれるようになった。
そしたらおばあちゃんがおばあちゃんを誘い、集落の中で広まっていった。
「おばあちゃんが現代アートをつくっている」というのが話題になり
NHKでも放映・紹介され、台湾からも見に来るようになった。
言葉は伝わらなくても、ひとつのことをみんなでやることで
コミュニケーションが生まれて一体感が出てくる。
インスタレーションの制作を通じて、心地よい空間が生まれた。

【世代を超えた一体感を強く感じた。
 全く出会うことのなかった人たちが、
 共通の時間を過ごすことで知り合えていく過程はとっても大事なこと。】

みんなで作品を作ることで街が活性化し、
今まで来なかった人々が街に来るようになった。
当時交通整理するほどの多くの人たちが来た。

【人の一生懸命さを見ると、感動するし自分ももっと頑張ろうと思える。
今までにないエネルギーが生まれた。】

また、松澤さんが東慶寺で結婚式を挙げた時にも集落のおばあちゃんが来てくれた!

【今でも、おばあちゃんたちに起こされて、制作する日々が懐かしい】

松澤さんは新潟でのインスタレーション作品を通じて、地域の人と繋がり、
作品を作ることで街が活性化されていくことを肌に感じた。
「新潟でのインスタレーション作品をきっかけに今度は地元、逗子でも
インスタレーション作家として参加することで街を活性化させたい、
と強く思うようになった。」

逗子の魅力とは?

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逗子は手に届く範囲で人や場所が近い街だと語る松澤さん。
役所との距離が近く、
海・山も近く、子育てには最高な環境。
特に、心に余裕がある人が多いのか、どんな人も受け入れてくれるので、住みやすい街だと思います。
 
【街によって個性があるのが面白い。
農村は、こつこつと作品を育てる。
漁村は、今日やって今日結果出す。みたいなところがある。
街でやるのと田舎でやるのも違う。
 
逗子は一緒に何かをやるにの向いている!
やりたいと思える土地柄なのでは?】

子育てをしながら作品作りをするのは大変だが、
地元で作品展ができることで子育てと作品作りを両立できている。

地元、逗子でも作品作りをしたい

今まで地元、逗子で作品を制作・展示をすることがなかったが、
2017年に逗子アートフェスティバルのアートフォリオ企画を見かけ、
市民が作る作品を応募していたのを知った。そこで、
当時のZAFのプロデューサーであったshibaさんから展示空間を作ってほしいと頼まれた。
その出展したポートフォリオを現・ZAF共同代表の長峰さんが
見ていてくれていたのだ。

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翌2018年、長峰さんがZANに加入し、
松澤さんの旦那さんと松澤さんの作品に感銘を受けた長峰さんが出会い、
松澤さんのインスタレーション制作・展示場所探しをしてもらうようになった。
 
【子育てをしていると「地域」と関わることが必然となり、より地域の大切さを実感した。だから、地域のみんなと関わってできるスタイル、つまり逗子でも新潟でやったようなインスタレーション作品をやっていきたい気持ちが強くなった】

松澤さんのZAFでの作品「ぼくたちのうたがきこえますか?」は
皆で一緒に作品作りをしたいという想いを込めてこのタイトルにした。

コロナ禍での制作・展示となった2020年も、地域の人との繋がりを諦めたくなかった。
【コロナで色々なことが遮断されたけど、ひょっとして自分で色々制限しているだけじゃないか】
これをとっぱらったとき何がみえるんだろうと思い、
2020年は「まぜこぜおばけ」という展示を行った。

【コロナ禍で、さまざまなことに線引きがおきた。
会いたいひとに会えなかったり、行きたいところに行けなかったり。
孤独や、先が見えないその得体の知れないものへの、不安や、喪失感を感じる反面、命そのものが身近になったり。地域のありがたみ、自分の生活そのものを見つめる機会にも皆さんなったのかなと。
そんな中感じたことは、色々な制限や分断は、物質的な面においても精神的な面でも案外、自分で境界線を作ったり、自分と他人を線引きしたりして苦しくなっている部分ももしかしたらあるのかなあと。そんなこんなで一旦、いろんな境界線を取っ払って混ぜこぜにしたらどんな世界が広がるのだろう。どんな景色が見えるのだろう。という想いから作品作りは始まりました。生きてるものも死んでるものも、私も、ジャガイモも鳥も、
みんな一旦まぜまぜ♡】

2021年はコトをアートに

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2018年から始まった「ぼくたちのうたがきこえますか?」では
3年間で延べ2000人以上の方が参加して頂いた。
その人のつながりを「制作の繋がり」だけでなく
違うつながり方を模索している。

【制作から、ストーリー。コトをアートにしたい。
制作が始まる今からもうアートは始まっている。
今年は人の繋がりを大事にして、美術館という展示をしたい。】

「ぼくたちのうたがきこえますか」という形では一旦今年で一区切り。
この3年間でたくさんの人が関わって出来上がった作品。一区切りとなる今年は、やっぱりたくさんの出会い、たくさんの人と作り上げたい思いが強く、作品作りだけでなく、ショップや、ゆっくりいられりカフェのようなものがあれば、もっといろんな角度からこの作品に関わってもらえるのでは。と。

作品があってショップがあって、カフェがあって。。。
それはまさに美術館じゃない?!
美術館っていう響きは、イメージもしやすくもっとたくさんの人にわかりやすく、ワクワクしてもらえるんじゃないかと。

美術館という形で実現できたら、その場所に来たらみんなつながるようになる。作品そのものより制作過程全てもアートになる「今から」始まっているっという想いが強くなっている。

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アートを正しく理解してもらいたい

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アートの価値を知ってほしい
アーティスト業界の課題は予算が無い状態で、どこまでできるのか?ということ。
アートの労力をゼロと思ってほしくないし、
アーティストの地位向上を考えていきたい。  
作品を生み出す労力を分かってもらい、アート関係者含めて、みんなにも真剣に向き合って欲しいと強く思っている。

【アートのこと知らなくてもアートの価値を感じて欲しい!
アートは無くても、人は死ぬことはないけれど
アートが無くなると、人の心が死ぬと思っている。】

作品の分かる分からない関係なく、感じて楽しむことが大事。「好きだ」という感覚は大事だし、感じたことを言葉にすることに意味がある。

日本では、普通に好きなアート作品を買える環境が無いのが残念だと話す松澤さん。オーストラリアではスーパーの一角で個人の作品が売っていて自由に買える環境にあった。

【日本では、アートに対して構えているように思う。
 まずは感じることから。いろんな見方があっていいと思う。
 今までの経験とアートが出会って感じることが出来る】

その時に感じたことを表現し続けたい

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今まではこの芸術祭にでたい、有名になりたい、って思っていたけど、
現在では、地域とのかかわりをしていく中で松澤さんの考え方は変わってきている。   
【「その時に感じたものを作品として表現し続けたい」想いは変わることはない。「どんな世界が見えるんだろう?」って空想しながらつくっている】

目標を立てると、向かうことに意識が行ってしまい、
到達する事で本当に大事なことを忘れそうな気もする。  
  
表現しつづけながら、その先に見える将来や世界がどうなるのか
ワクワクしながら作品作りを楽しみたい。

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インスタレーションは人々と芸術作品との敷居を低くする、芸術様式です。
逗子は「なんでもやってみよう」と受け入れて、考える人が多く
松澤さんの作品は逗子にぴったりだと感じます。
松澤さんの持ち前の明るさ、元気さで皆を巻き込んだ作品作りを行い、
参加者皆が「私が作ったんだよ!」って楽しんでもらえる作品が生まれることで逗子にアートが拡がっていく。アートには街を活性化させる力がある。
 
このことを体現されている一つが松澤さんの作品だと思いました。

ぼくたちのうたがきこえますかワークショップ

日時 :11月6日(土)、7日(日) ほか
時間:11:00 - 16:00
開催地:小坪飯島公園プール
​住所:神奈川県逗子市小坪5丁目24−9
アクセス:JR逗子駅・京急逗子葉山駅 京急バス「鎌40 JR鎌倉駅行き」リビエラ逗子マリーナ前下車、徒歩4分(バスの進行方向に直進)、JR鎌倉駅 京急バス「鎌40・41 JR逗子駅行き」小坪下車、徒歩7分(漁港方面に下り、最初の信号を右折)

ぼくうた公式instagram:https://www.instagram.com/umino_hotori_museum/

インタビュアー/ライティング:井出川薫
撮影/編集:本藤太郎

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