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自分らしさと家業を継ぐこと〜父の初盆を終えて〜

松竹芸能で税理士芸人として活動しています、税理士りーなです。
今日、今年1月に他界した父の初盆を終えました。
私は祖父&父が税理士という家に一人っ子で生まれ、税理士になりました。
決してやりたい仕事ではありませんでした。

今日は、「家業を継がなければならないことに、苦しみを覚えている人がいたら、少しでもそれを軽くできるかもしれない」という記事を書きますね。
2代目さん、3代目さん、X代目さんのお役に立てればと思います。

子供の頃から父の仕事を見ながら、税理士という仕事が嫌いでした。
いったい何が楽しいのだろう?と。
科学や数字が好きだった私は、大学は理系に進みソフトウェアの会社に就職しましたが、結局25歳の時に家業を継ぐことを選択しました。
それをしなければ後悔することがあるかもと思ったし、両親と一族の期待を裏切ることが怖かったからです。(実は、当時の恋人が「君の家のために税理士になるよ」と言ったのも理由の一つ。実家のことを人任せにできなかったの。)

自分で法律の勉強が向いていないことはわかっていました。
でも、自分が頑張ればなんとかなると甘く見ていたのです。
税理士の勉強を始めてから13年かかり、最終科目を合格したのは38歳。
途中テーマパークでバイトしたり、大手パソコン教室のインストラクターとしても働きました。
でも、この遠回りは私の「好き」を確認する作業として、どうしても必要でしたね。やって良かった。

結局、大学院で税法免除を2科目いただき、税理士になることができましたが、苦手を克服できないまま、今も苦手な税法と戦い続けています。
これで本当に良かったのだろうか?
いつ税理士を辞めてやろうか?
と何度も考えました。

でも、私はお笑い芸人になって「踊る税理士芸人」として活動するようになって、ようやく「税理士」という簡単には手に入れられない武器を自分のために使えるようになりました。
お笑い芸人の養成所に入れば、だれしもすぐに覚えてくれました。
「初めまして」の人も、私の肩書きに食いついてくださいます。
普通の税理士が助けられない人を助けることができるということも、わかりはじめました。

そんな経験をするまでは、この家に生まれたことをポジティブに捉えられませんでした。
私が生まれる時、親戚一同「税理士の跡取りが生まれる」と男の子を期待して、男の子の名前ばかり考えていたそうです。
(父は7人兄弟だったので、私の伯父や伯母も祖父の跡継ぎが生まれることを喜んでいました。)
私が女の子として生まれた時に全員が落胆したという話は、何度も両親から聞かされました。
さらに、幼少期から「あなたは自分で税理士になるか、税理士の婿養子をもらうかのどちらかね」と言い聞かされてきました。
昭和の時代でしたから、仕方のないことかもしれませんが、、、
本当に辛かったな。。。

何度も「この家に生まれたせいで自分の人生を奪われた」なんて言ってひがんでいました。
これは、私が20歳ごろからずっと言い続けていたセリフです。

20歳の時、ドイツで開催された手品の世界大会で6位に入賞したときも、
「手品のステージはこれで最後にしてね、あなたには税理士になってもらわないと困るから」
と、手品のコンテスト出場は最初で最後という約束でドイツに行くことを許されました。
大会後に「次はシアトルのコンクールにおいで」とお誘いをいただきましたが、私は「これが最後のステージですので」とお断りしました。
悔しかった〜。

最近になって母に
「あのとき手品を続けていたら、どうなっていただろうね」
と話したら
「そうよ!なんであの時断ったの?!もったいない!」
と返されて、「なんでやねん!」
すごく寂しい気持ちになりました。
子の心も親知らず、、そんなものなのかもしれませんね、、

まぁ、それぐらい、親たちにとっては祖父の税理士事務所を継ぐということが大きなミッションだったということなのでしょう。
私が税理士試験の最終科目の合格通知を受け取ったとき、涙ながらに父が言った一言
「看板が、守れた、、、」
私の人生よりもそれが大切なの?と泣きたくなりましたが、でも、父にとってはそれをクリアしなければ生きた心地がしなかったのでしょう。

今、私は「わたしらしく生きる」ということにこだわっていますが、
実は母の教育方針は「人と同じように普通に育てる」ということだったそうです。
それに反発して育った結果がワタシなのかもしれません。
私は普通じゃイヤ!オンリーワンの私でいたい!

世の中の2代目さん、3代目さん、X代目さんは?
親や自分の生まれた環境を恨んだり憎んだりしていないでしょうか?
私は3代目だからまだマシです。
50代目とか、すんごい老舗の跡継ぎさんはそりゃあ大変なプレッシャーでしょう。

人の価値観はさまざまです。一人一人の個性を重んじる考え方もあれば、いく世代にも渡り受け継がれる歴史を重んじるというのももちろんあります。
「家業を継ぐ」というのは一人でできることではありません。
タスキをつないでずっと継続するというのは、本当に大変なことです。
その一部として必要とされるということも尊いと感じられます。
特に今の時代は個性を尊重する風潮にあるので、自分らしく生きることを重要視されるようになってきていると思います。

若い頃は、このどちらかしか自分には選べないと思っていましたが、今は「誰もが両方を選べる」と感じています。
X代目さんは、自分が「〇〇商店のX代目」という肩書だけを背負わされると思いがちですが、もう一つ、自分だけの看板も一緒に背負えば良いのです。
・和菓子屋の15代目でサーファー
・旅館の20代目女将でロックバンドのドラマー
・町工場の4代目で路上パフォーマー
そして、税理士事務所の3代目でお笑い芸人 などなど、、

幸い、現在の日本では「働き方改革」で副業が推進されています。
会社員も副業を始めているほどですから、自営業者が別の副業を始めても良いじゃないですか!

大切なことは、「あとを継ぐ」ということを選択することで
「自分であることを諦めない」こと。
跡継ぎさんにも、自分のオリジナルの人生があることを忘れないでください。
あとを継ぐというプレッシャーで死んでしまいたくなる時もあるかもしれません。
でも生きていれば、あとを継いだ向こう側に必ず「自分らしく生きる方法」が見えてくると思います。

自分らしく生きるということは素晴らしいことです。
でも、家業が歴史のある事業を営んでいて、それを引き継げるチャンスがあるということも、負けず劣らず素晴らしいことです。
あなたは、その両方を手に入れられる人。
こんなラッキーなことありませんよね!

今年、父を亡くしてようやく、親や家に縛られた自分を解き放てたような気がしています。
私は税理士、だけど祖父とも父とも全く違う税理士。
いまようやく、この大きな大きな肩書きをくれた実家に「ありがとう」を言えるようになりました。

X代目さんも、あとを継いだことで縛られないでください。
あなたは世界中でたった一人のあなたです!

うまく伝えられているかわかりませんが、
必要な人に届くと良いな〜と思います。
ファイトです!!

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