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布考(ぬのこう)エッセイ/第一回:「つつみ、つつまれる」

テキスタイルデザインのzoi zoiです🐺
布にまつわるエッセイをスタートします。布を考察するみたいなタイトルになっていますが、布を題材にしたゆるいエッセイです。2週間に一度くらい更新できたらいいなと思っています。よろしくお願いします。

第1回「つつみ、つつまれる」
現在、わがやの雰囲気は布で成り立っている。わたしは暇ありゃストックの布を引っ張り出し、ちょっと気に入らない空間をふわっと覆う(ごまかすともいう)。

すこしでも視界に不穏な空気を感じると、大学院の調査で訪れたマレーシアのバティック、フランスの繊維街でかったアンティークの生地、エスニックのお店で買ったインド木版の生地、モンゴルの友人にもらったストール、IKEAのキッチンクロス、zoi zoiの試作生地など、あらゆる布でその場を覆い包んでしまう。

たとえばそれは、取り込んだもののすぐに畳めない洗濯物の山であったり、読みかけの本の山、無骨な印刷機、プリンター、ミシン、請求書の山、蓋のない娘のおもちゃかご、オープンな食器棚、収納先迷子な物 etc.......... すこしでも負なイメージを感じ取ったら、布をかけては満足している。

というのも、わたしが一人暮らしをしていたときは「物の住所」を定め、常に整理整頓された部屋であることを意識して生活していた。このような整理整頓の意識は、大学卒業後にお世話になった恩師や、アルバイト先の経営者の方々に叩き込まれた。恩師らは、毎朝トイレ掃除からはじまり、アトリエや作業場の掃除を終えてから作業をはじめるという習慣を大事にしていた。

わたし自身、20代になりたての頃はあまり片付けが得意ではなかった。アルバイトやアシスタントを経て、その習慣を叩き込まれたことから、部屋や作業場が整っていないと、なんとなく気持ちが悪く作業や家事が進まないのだ。

しかし、夫と暮らすようになってから「物の住所」は夫婦の間でなかなか共有されず(夫は夫で置きたい場所がある)、子どもが生まれたての頃は整理整頓よりも、目の前の赤子が最優先事項であった。産後は片付けたいけど、すぐに片付けられない状況が続く。

里帰りをしなかったのもあり、育児初心者の夫婦は小さな赤子にてんやわんやだった。産後1ヶ月が過ぎた頃、わたしは慣れない育児と、片付けたくても片付けられない状況にストレスを感じていた。そこで、思い切ってすぐに手がつけられない場所や、収納が整っていない場所に一番お気に入りの布をふわりとかけてみた。

その効果は予想以上に絶大だった。お気に入りの布でイライラの要因を覆うことで、目に見えるストレスが緩和されるだけでなく気持ちも華やいだ。

さらに、「すぐに片付けたいわたし」と「余裕があるときに片付けたい夫」とのいさかいも減ったのである。

おむつや、娘のおもちゃ、湿疹の塗り薬などの赤ちゃんセットは風呂敷で包むのもお気に入りだ。ごちゃごちゃした赤ちゃんのお世話セットを風呂敷で包むことで「物の住所」におさまった効果が生まれる。あと、風呂敷でつつんでいるので、夫婦間でポンポン投げて渡せるのも良い。(赤ちゃんのお世話をしていると、ああ、それとってー!みたいな状況が度々ある)

布をかけるメリットはホコリ問題が解決される点にもある。ほこりから守りたいものにも、わたしは布をかけまくっている。もちろん、布にもホコリは貯まるので定期的に洗濯をする。定期的に洗濯をすることで、別の布をかけるかえると部屋の雰囲気が変わるため、手軽に模様替えをした気持ちにもなる。

これは「くさいものには蓋をする」、結局は布でごまかしているともいえる。しかし、このお気に入りの布で部屋の気になる部分を覆うだけでなく、わたしの心と家族の平和が布によって穏やかに包まれている。

そんなわけで、わがやのインテリアは色んな国のテキスタイルで溢れている。そこに統一性はないが、とても華やかである。

- Isuyama sumie

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zoi zoiでは月に一度「Pattern Story:生地の物語」として新作生地をリリースしています。お気に入りの生地として活用してもらえたら嬉しいです。

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