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映画感想「彼らは生きていた」

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いつか使える、「通」ぶれる映画評の切り口④
:原題に言及すること

今回紹介する「彼らは生きていた」の原題は、
「They shall not grow old」=「彼らは年を取らない」

・邦題だと、そのニュアンスが伝わり辛いんだよねー
・邦題が、ネタバレになってんだよな、これ
・原題はさ、聖書の一節から名付けられててー
とか、言い出せば、あなたも立派な、いけすかない映画通気取りです。

さて、「彼らは生きていた」ですが。

監督は、「ロード・オブ・ザ・リング」「ホビット」シリーズでおなじみ、ピーター・ジャクソン。
ニュージーランド出身の、デブオタク監督です。
スプラッター映画出身でして、CGや特殊効果を駆使した、あけっぴろげというか、油こってりというか、そんな作風。
が、要所要所はドラマチックを通り越して、センチメンタルな、もしくは湿っぽい展開も、ちらほら。
好きな監督です。

だが、今作は、意外にも「ドキュメンタリー」。
内容は、簡単に言えば、「ものすごい『映像の世紀』」
主にイギリス兵士を撮影した、膨大かつ劣化したフィルムを、デジタル技術で修復。カラー化。音声を加え、約100分に編集。

これは、なかなかの衝撃です。

序盤は、歴史をおさらいしつつ、志願した兵士たちの感情が語られつつ、白黒かつ傷が多めのフィルムが流れ続ける。
しかし、戦場に到着した途端、本領発揮!
違和感が全くないとは言いませんが、少なくとも90年代の映像を見るとき以上には、鮮明に映し出される、およそ100年前の映像。
生々しさが半端ではありません。

ざっくり言えば、
序盤:モノクロで歴史おさらい
中盤:カラー化された、最前線の塹壕などの、日常的映像
終盤:突撃と戦闘の模様
と分けられるのですが、その構成が見事。

100年前ということで、とっても珍しかったのでしょう。
撮影されている兵士たちが、ことごとくカメラ目線なのです。しかも、よく笑う。
そして笑うと、泥まみれなので、歯がよく映える。
正直、全然白い歯・美しい歯じゃないのに、白く見えるほど、泥まみれ。

からの、戦闘開始。それは、今まで見た映画を遥かに超える、圧倒的臨場感でした。

「いや、そりゃドキュメンタリーなんだから、映画よりは臨場感あるだろ」と突っ込んだ、そこのあなた。

ある意味、正しい。

がしかし、そのクライマックスに至るまでに、
・ナレーションの構成
・膨大な映像の取捨選択
・カラー化
・中盤に「日常」を入れるという溜め
ここがあってこその、終盤なのでして、そういう意味では、まごうことなき映画であります。

いやー、すごいもんを見ました。

不幸な時勢、を感じる昨今ですが、「いろいろあるけど、これよりはましだな」と思うことは、間違いない。

コロナがなければ、映画館で見たいところでしたが、なんと、Amazonプライムビデオなんかでも配信されています。
快適な部屋で見る、第一次世界大戦の悲劇。映画の醍醐味ってのは、こういうところにもある。

ぜひ。

追伸
見た映画のタイトルや本数をメモっています。
「彼らは生きていた」も悪い邦題ではないのですが、原題のほうが気に入ったため、「They shall not grow old」で、メモには登録してやりました。
ニヤっとする自分がiPhoneに反射し、気持ちわりーなこいつ、と思いました。


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