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「巻いて食べる」はエンタメだ

子どものころ、夕食が手巻き寿司の日は無性にうれしかった。

生魚と酢飯の組み合わせが好きだったというのももちろんあるけれど、例えばご飯にお刺身を乗っけて海鮮丼にして食べる、とか、回転ずしに連れて行ってもらう、とか、そういう時の喜びとはあきらかに別物の、それはうれしさだったと思う。

手巻き寿司はエンターテインメントだ。
四角い海苔に酢飯を載せるときの、量(思ったよりだいぶ少なめにしないと巻いた時にはみ出したり、すぐにお腹がいっぱいになってしまったりする)と広げ方(後から乗せる具材の厚みや大きさも考えながら)。
乗せる具材の選別(大好きなサーモン? たまご焼きとツナマヨ? 薬味は乗せる?)と、いちばんおいしいバランス。
いっちょ前に「お料理」をしている気分で、慎重に海苔を丸める。
そうして種々の選択肢における熟考を経てできあがる「自分が今いちばん食べたい組み合わせ」のお寿司をほおばったときの幸せ!

だいたい、「巻く」という料理法を考えた人はすごいと思う。
おいしいものたちをぎゅっと寄せて、おいしいものでくるむのだ。大口をあけてかぶりつくと、いろんな種類のおいしいものたちが大挙して口の中に押し寄せてくるのだ。もっとおいしくなってしまうではないか。

大人になって知ったのは、そんな楽しみ方ができる料理が手巻き寿司以外にもけっこうある、ということ。
ちょっと気合を入れてブランチしたいときとか、気の置けないだれかをおもてなししたいときには、「自分で巻いて、食べる」食事をしたくなることがある。「具を入れすぎた!」とか、「この組み合わせおいしいよ!」なんてわいわいしながらわしわし食べると、なんだか童心に帰れる気もして。

■クレープ・ブランチ

noteでも何度か話題に出しているお料理マンガ、「きのう何食べた?」。
日々の気取らない食事からちょっと気合を入れたおもてなし料理まで献立のアイデアがぎっちりと詰まっているのだけれど、読んだときに最も心が躍ったメニューのひとつが「おうちクレープ」だった。休日の遅めの朝にクレープを焼いて、ビールを飲みながら食べる、というシチュエーションも良い。
晴れた休日の朝に、よしクレープを作ろう、と思い立つと、それだけで人生が美しいもののように思えてくる。

クレープのいいところは、特別な器具も材料も必要ないので、普段お菓子作りに縁がなくても思い立ったらすぐ作れてしまう、というところ。生地にベーキングパウダーが要らないのがミソだと思う。
具材もわりとなんでもいい。甘いのでもしょっぱいのでも。パンに合うものはだいたいクレープにも合う。生クリームは高いしホイップするのが面倒なので、我が家はたいてい水切りヨーグルト(それも重しを乗っけて時短するレシピ)で代用する。
ゆるーく準備しても、焼きあがったクレープと具材を並べるだけで、なんだか食卓がおしゃれに見えてテンションが上がる。

特に好きなのは、レタスとトマトの上に生ハムと半熟の目玉焼きを乗せて巻いたもの。温かいクレープときりりと冷えたトマトのコントラスト、生ハムの塩気とそれをなだめる半熟卵のまろやかさが混然一体となって、くちの中においしさが満ちる。

ヒャー
ワー

もっとジャンキーな気分のときはスライスした玉ねぎとコンビーフを軽く炒めて醤油をひとたらししたものを乗せてもよい。

キャー

ほの甘いクレープ生地と、こってりした加工肉の風味が抜群に合う。

ツナとクリームチーズの組み合わせには、たっぷりのキュウリを加えたい。やったことはないのだけれど、ほうれん草やアスパラと、ベーコンやスクランブルエッグを合わせてもおいしそう。

こんな調子でついおかず系の具材(と、ビール)に夢中になってしまうので、くだものやチョコレートソースを用意していてもそこまでたどり着けないことも多い。

そんなときは慌てずすこし生地を残しておいて、翌朝に甘いクレープを楽しむのもまたよし。

↑ちなみにこのいちごジャムもシロさんレシピ

■タコパ(メキシカンなほう)

関西人ゆえにタコパ(たこ焼きパーティー)には幼いころから親しんでいたのだけれど、最近初めて執り行ってとても楽しかったのがタコパ(タコスパーティー)である。
もともとはサルサソースやタコミートの自作が意外と簡単なことを知ったのがきっかけ。
それから時々タコライスを作っては食べていたのだけれど、それだとどちらかというと「ごはんもの」になってしまうので、もっとビールがぐいぐい飲める感じで楽しみたいな~! と思ったのだった。
トルティーヤは出来合いのものをAmazonで購入(あとから近所のスーパーで普通に売っているのがわかってちょっと拍子抜けした)。ついでにコロナビールもまとめ買い。

ウェットティッシュはご愛敬

トルティーヤをトースターで軽く温め、レタスにアボカド、タコミートを乗せてサルサソースをたっぷりかける。ピザチーズをぱらぱらかけて、巻いたら完成!

自分でサルサソースを作ると、好きに辛さが調整できるのがよい。このときはレシピ指定のスパイスの他にカイエンペッパーを入れて、ちょっと辛めの味付けにした。

ちょっと粉っぽくて独特なトルティーヤの風味が、「異国の料理」感を加速させる。意外と野菜が取れるので罪悪感なくどんどん食べてしまう。言わずもがなビールが進む。
夏の休日にぴったりのメニューだと思う。

■生春巻きバイキング

以前こちらの記事でも愛を語った、生春巻き。
野菜をおいしくたくさん食べたいときの救世主だと思っている。

いつもはそのとき食べる分を一気に全部巻いてしまうのだけれど、いつかやってみたいな、と思っているのが、具材とタレを何種類も用意して、各自好きに巻きながら食べること。
今度お客様があったときかな、と夢想している。

***

「手巻き」のごちそうは、おいしくてたのしい。
具材と巻くもの(海苔と酢飯とか、トルティーヤとか)を事前に準備しておけば食事中にばたばたする必要がないし、必ずしもアツアツ出来立てを提供しなくても恰好がつくというのも、おもてなし向きだと思う。
これからも積極的に各国の「手巻きごはん」の力を借りていきたい。

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