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『シャイロックの子供たち』 池井戸潤 (文春文庫)

昨年、2022年にWOWOWで連続ドラマWとして制作、放送されたのを機に、書店で手に取り、ずっと積読になっていたのを、2年越しで読了。解散した元V6のメンバー、井ノ原快彦主演。味のある、クセの強い登場人物と配役が印象的だった。

原作は、架空のメガバンクの支店を舞台に、第一話から第十話までの短編集のような体裁でありつつ、その中心には支店で起きた現金紛失事件と、課長代理、才木の失踪をめぐる謎が据えられている。

巨大組織の人間関係、組織の論理、支配的上下関係、目標、数字、ノルマに囲まれて競争する企業人、特に銀行員の姿は、真に迫っていて、半ば社会不適応で、人から指図されるのが大嫌いなために、フリーランスにならざるを得なかった自分としては、読んでいて本当に辛い。辛かった会社員時代を思い出してしまうからというのもある。

そうしたギスギスした舞台という骨格の上に、家族への想い、守りたいプライド、出世への渇望、金銭を稼いで豊かな暮らしをしたいという願いが、肉付けされて、ほろりとさせられたり、クスッと笑わせてくれる部分もあって、緊張と弛緩の波が心地よい。

その結末については、WOWOWのドラマでは小説と異なる独自の解釈をしていて興味深い。どちらも自分としては気が利いていると思う。来るべき映画版が、どんな構成でどんな結末になるか、阿部サダヲをはじめとして、こちらもクセのある役者が数多く出ているようなので楽しみだ。

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