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ポールには友達がいない ~残念なビートルズ(6)「やっぱりポールは空気が読めない?」

1968年8月8日。
ローリング・ストーンズが、ニューアルバム「ベガーズ・バンケット」完成とミック・ジャガーの誕生日を祝って盛大なパーティーを開きました。
来客はジョンとヨーコをはじめ、有名モデルやアーティストなど、ロンドンのセレブが大集合。
会場はミックとキースがオーナーのベスビオ・クラブです。
支配人のトニー・サンチェスがDJを務め、先行プレス盤「ベガーズ・バンケット」を初披露します。会場は大盛り上がり。
特に先行シングル発売が予定されている「ストリート・ファイティングマン(Street Fighting Man)」は絶賛の嵐。
当然「これはすごい曲だ!」となりますね。うん、うん。

さて、そこに遅れて来たのが、御存知、われらがポール・マッカートニー。
会場近くのトライデント・スタジオから、発売前のシングルレコードを持って、ご機嫌で登場です。
ポールは、それをトニー・サンチェスに、ちょっと控えめに渡しました。
「これをかけてみてよ。僕たちの新作なんだ」
サンチェスも、さすがにポールから手渡しされたら断るわけもいかず、いや、そこまで考える余裕もなかったかもしれません。よせばいいのにローリング・ストーンズの新作発表の場で、ビートルズの新作を流してしまいました。
それが、よりによって……「ヘイ・ジュード」なのです。
静寂がパーティー会場を覆いました。いままでの喧騒が嘘のような静寂。
とてつもない名曲に出会ってしまったことを、会場の誰もが理解したはずです。
とてつもないシングルをぶつけられ、「ストリート・ファイティングマン」は粉砕されました。
さらに、よせばいいのにB面も流すサンチェス。
こちらは、ジョンの傑作「レボリューション」です。
さすがのジョンも、ポールのこの行動にはあきれ返ってしまいました。ああ、もうここにはいられない。泥酔状態で即退場。ミック、すまん。
ポールの記憶では、ミックが近づいてきて「ヘイ・ジュード」を絶賛してくれたとか。
悪気がないから、そのときの記憶もバラ色です。
しかしトニー・サンチェスは、「ミックは不機嫌だった」と語っています。
不機嫌ながらも、認めざるを得ない大傑作「ヘイ・ジュード」。
それを認めるミック。
そのミックの心境を理解できない天才ポール・マッカートニー。
そんな図式ではないかと推察いたします。
ミック、さすがだよ、大人だよ、かっこいいよ。

さて、「ヘイ・ジュード」で「ストリート・ファイティング・マン」発表パーティをめちゃくちゃにしたポール。
諸説ありですが、このお話には後日談が。
ビートルズ「ホワイト・アルバム」に収録された「ホワイ・ドント・ウィ・ドゥ・イット・イン・ザ・ロード」。
この曲、「ストリート・ファイティング・マン」を聞いてひらめいてしまったものらしいのです。あるいは「返答歌」であるとか。
人の曲のお披露目パーティを無茶苦茶にしておいて、それで曲を作って、しかもジョンお気に入りの一曲に仕上げちゃうなんて。
だけど悪気がないのですから、ご本人はミックへのプレゼントくらいに思っていたのかも。
空気を読めないのも大概にしてほしいですよね、この天才め!
(あくまでも、諸説あり、です。)


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