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ビートルズ風雲録(10) キャバーン・クラブ、ジョン・レノンとポール・マッカートニーが初めて出会う

いよいよクオリーメンとしてバンド活動を始めたジョン・レノン。
その才能が、もうひとつの才能と出会うことで世界が変わってしまいます。
その運命の日。1957年7月6日が近づいています。


1957年 キャバーン・クラブ、誕生!

1957年1月16日、キャバーン・クラブが開業します。
オーナーはアラン・シトナー。彼はジャズ好きで、医者の息子でお金持ち。ロックにはまったく興味はありませんでした。
彼は以前パリで訪れたことのあるジャズ・クラブ「ル・カヴォー・ドゥ・ラ・ユシェット」をイメージして、以前は地下室、空襲の避難所、倉庫として使われていた建物を改装します。収容人数はほぼ600人。

オープニングのステージは午後7時にスタート。こけら落としは、マージーシッピージャズバンドという地元のジャズ・バンドです。その後、ウォールシティジャズメン、ラルフ・ワトモフジャズバンド、コニーアイランドスキッフル・グループが出演。やはりジャズがメインですね。
オープンに先立ち、キャバーンはリバプール・エコー紙やメロディー・メーカー紙など様々な新聞で紹介されました。オープニングナイトを大々的に宣伝しようと考えたシトナーの作戦が奏功し、押し寄せた観客の2/3が入場できないという大盛況となりました。
歴史の舞台が現れた瞬間でした。

1957年、ジョンとポールが出会う

そして、1957年7月6日。歴史が動き始めます。

ジョン・レノン

この日の午後、リバプールはウールトンにあるセント・ピーターズ教会の敷地のお祭りで、ジョン・レノン率いるスキッフル・グループ、クオリーメンが演奏を披露しました。
メンバーは、ジョン(ボーカル、ギター)、エリック・グリフィス(ギター)、コリン・ハントン(ドラムス)、ロッド・デイヴィス(バンジョー)、ピート・ショットン(ウォッシュボード)、レン・ギャリー(ティーチェスト・ベース)の6人。結成時よりかなり充実していますね。
午後2時、最初のトラックが玉座に座ったお祭りの主役、ローズクイーンを乗せて入場します。
続いて、クオリーメンをはじめとする少年たちを乗せたトラックが入場。ジョンは移動するトラックの荷台でギターを弾きながら歌い続けました。
その後メンバーは、裏庭のステージで演奏、さらに、その日の夜も道路の反対側にある教会ホールに登場することになっていました。

ポール・マッカートニー

さて、こちらポール・マッカートニー。今日は待ちに待った教会のお祭りの日です。とにかくかわいい女の子をゲットしたい、そんなことばかりを考えています。リバプール・インスティチュートの同級生、アイヴァン・ヴォーンが一緒です。アイヴァンの目的はクオリーメンの演奏を見ること。悪ガキ仲間のジョンがリーダーのいかしたバンドです。彼自身もティーチェスト・ベースで、ちょっとだけですが、バンドに参加したことがありました。
「お前もきっと、ジョンのことが気に入るよ」。
アイヴァンは、ポールに言いました。
「すごいやつなんだ」。

二人の邂逅

ジョンたちが夜のステージのための機材をセッティングしているときです。
ジョンの友人アイヴァン・ヴォーンが、見知らぬ男の子、ポール・マッカートニーを連れて現れました。
「実はギターが弾けるんだ」「かなり上手いんだぜ」などと、アイヴァンがジョンに紹介したかもしれません。
後にポールはインタビューで、実はこの出会いの前にバスに乗っているジョンを見かけたことがあったと語っています。地元では知られた不良でしたからね。「すごくクールな見た目だという以外は何も知らなかったんだ」「長いもみあげがあって、髪なんかをグリースでなでつけていたんだ」と。バスを降りるところまでを見ていたそうです。
早速ポールはエディ・コクランの「Twenty Flight Rock」とジーン・ヴィンセントの「Be-Bop-A-Lula」、そしてリトル・リチャードの曲をメドレーで披露。教会のピアノも弾いてみせました。
ジョンはどれほど驚いたことか。彼のセンスがポールの天才を見誤るわけはありません。
ライブの後、アイヴァン・ヴォーンとポールはクオリーメンのメンバーとともにウールトンのパブに行き、そこで年齢を偽って盛り上がります。

ジョンの選択

お祭りが終わって、ジョンと悪友ピート・ショットンは、ポールを自分たちのバンドに入れるかどうか話し合います。ジョンこそが誰よりもポールの才能を認めていました。しかし、ジョンは自分がリーダーでないと我慢できません。才能のあるポールにリーダーの座を奪われる? これはジョンにとっては、つまりバンドから追い出されるということを意味します。
このジレンマにあってジョンは最善の選択をします。ピート・ショットンにポールをクオリーメンに入れようと告げるのです。
2週間後、ピート・ショットンはポールがウールトンの町を自転車で走っているところに出くわします。
「おい、ポール。ジョンがクオリーメンに入れって言ってるよ」。
しばらく考えたあと、ポールはピートに誘われるまま、クオリーメンに参加することにしました。

キャバーン開業の年に二人が出会うなんて、なんという運命、めぐりあわせでしょう。


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