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60歳からの古本屋開業 第6章 Beatlesレディオ Vol.01(1)ぶっつけで始めてしまうのだ

登場人物
夏井誠(なつい・まこと) 私。編集者・ライターのおやじ
赤羽修介(あかば・しゅうすけ) 赤羽氏。元出版社勤務のおやじ


録音開始

 さて、いよいよビートルズネタによるWEBラジオの録音である。
 題して「Beatlesレディオ」。
 酒よし、肴よし、準備よし。
 レコーダーをセットして、いざ、いきなり録音スタートとなった。

タックスマンをかけながら

「タックスマン」を訳すと"税務官“、"税金取り立て人という意味。
  歌詞はこんな内容です。

税金の仕組みを教えましょう
あなたの取り分が1、私が19です
 
なぜなら私はタックスマン
そう、私はタックスマンなのです
 
5%では少な過ぎるとお思いですね?
全部とられないだけでも感謝しなさい
 
(中略)
 
なぜなら私はタックスマン
そう、私はタックスマンなのです
 
税金を何に使うかなど、聞いてはいけません
(ハハ、ミスター・ウィルソン)
これ以上とられたくなければね
(ハハ、ミスター・ヒース)

タックスマン(ジョージ・ハリスン)

ビートルズの税金95%問題

(夏井)なんか、恐ろしい歌詞ですね。

(赤羽)イギリスの当時の税金って、最高で88%とか、不労所得の課税を合わせると、さらに最高で98%だったらしいですよ。「あなたの取り分が1、私が19」なんです。頭おかしいというか。労働党政権でしたからね。
 
(夏井)これだと働く気なくすでしょう。
10億円かせいで、収入が5000万円てことですよね。10億円かせいでも5000万円で暮らせと。誰ですか、こんなことやった総理大臣は。
 
(赤羽)ミスター・ウイルソン、ミスター・ヒースって、歌詞の中に出てきてますが、このウィルソンが1964年から70年にかけてのイギリスの首相ですね。ビートルズの活動期とまるかぶりです。社会保障充実のために金持ちを狙って、めちゃくちゃな税金をかけた。一方のヒースは、その当時の野党、保守党党首。歌詞にウィルソンだけ登場させるのはバランスが悪いと考えたのか、ジョージらしい気の使いようで登場です。
 
(夏井)あれだけ稼いで、95%持っていかれちゃったら、そりゃ~女王様から勲章くらいもらえますよね。
 
(赤羽)当時(今も引きづってますけど)楽曲の権利も変な契約でとられてしまってますよね、ノーザン・ソングスっていう音楽著作権会社ですけど、自分の歌を歌うのに、カラオケ使用料を取られるような状況がずっと続いて。
 
(夏井)曲の権利も奪われ、稼いだお金の95%持っていかれ。なんか周りは悪いやつだらけ。よく一生懸命働いて、笑顔でいられましたよねー。
 
(赤羽)とにかくひどい契約で。でもやめるわけにいかない。曲は作り続けないといけない。そういう契約だったみたいです。
年間6曲作り、会社に献上する。シングル何枚、アルバム何枚を出すという契約もありましたから。
特に60年代前半は、世界中でツアーをやりながら作曲もやるわけです。
 
(夏井)以前、小林克也さんの「ビートルズから始まる」というラジオで聴いたのかな。
朝起きて、2時間作曲して、そのあとテレビなどに出て、夕方からライブをやって、終わったらスタジオに戻ってきて録音するなんて生活をしていた、という話も聞いたことがあります。
 
(赤羽)ツアーの移動中に乗り物の中で作った歌などもたくさんあると思います。
 
(夏井)それでもあのレベルの曲、アルバムを作るんですから考えられないですね。
しかも作り出した良い曲を世に出すと、他人が儲かる。でも、つい良い曲ができてしまう。うわー凄い世界ですね。
 
(赤羽)ポールが言ってましたけど、基本的に浮かんだ曲はその日のうちに完成まで持っていく。メンバーでいろいろ意見を出しながら、アンソロジーでやっていたようなやり取りで、いろんなバージョンを録音までしてしまう。だいたいの曲は1日か2日で作ってしまうようです。
 
(夏井)凄いな。本当の天才ですね。ただちょっと話は変わりますが、そうやって作った曲を5、60年たった今も「やれやれ!」「聞かせて、聞かせて!」って言われるのってどんな気持ちなんでしょうね。
 
(赤羽)今いちばん良いと思っている曲を常に作っているのに、50年前の曲をやる。凡人が考えたら、なかなか辛いものがあるようにも思えますが、ポールはどうなのかな。皆が喜んでいるから、結構本人も喜んでやっている感じもしますね。
 
(夏井)ビートルズの歌をステージで歌えば、5万人くらいが歓喜しているわけですから、そうかもしれませんね。たしか「イエスタデイを歌わないと、みんな納得しないしね」とか言っていたような気もしますし、ウケるということを単純に喜んでいるのかな。それはそれで凄いな。
 
(赤羽)それとポールの凄いのは、何十年たっても、曲をもとの形のまま歌っているところです。
 
(夏井)そういえばそうですね。日本の歌手なんて昔のヒット曲を歌うと、違う歌い方になってますもんね。ちょっとずらした歌い方したり。
 (※沢田研二さんは昔のままのキーで歌っているそうです。すごい!)

(赤羽)たぶん、出来たときに変えようがないくらいに完成されちゃってるのでしょうね。
 
(夏井)凄いなー、曲が天から降ってきて、1日で変えようのないくらい完成度の高い曲にしてしまう。凄い。
 
(赤羽)あの短い8年間で200曲以上も作ってるけど、あくまで発表した曲が200曲で、その何倍もボツ曲を作ってるんでしょうね。あの「ゲットバック」を観ても分かるけど、変な曲も一杯やってる。
 
(夏井)でもその曲も徐々に蔵出しされて、私たちが買う、ということが今後も続くんでしょうね(笑)。
(※『ナウ&ゼン』発表前に、こんな話をしていた!)
 
(赤羽)彼ら自身は、アルバムに入っている曲もそうでない曲も、駄作だと思って作っているわけではないですから。
 
(夏井)そうそう。
 
(赤羽)その中で、50年前に作ったイエスタデイを「もう一回やれー、もう一回やれー!」と言われ続けるわけで。彼らにしたら「もっといい曲がほかにもあるよ!」と言いたいかもね。
 
(夏井)ポールもビートルズをやめてウイングスやってるとき、発表されなかった曲を全部出しておけばよかったのに。
 
(赤羽)イヤー、たぶんポールね、忘れちゃうんじゃないかな、過去に作った曲なんて。忘れるというか、興味がなくなるというか。天才ってそういうところあるみたいですよ。新しいもの生み出すのに、過去のものは全部捨てていく。
僕らみたいな凡人、一生かかって良い曲が作れるのか、作れないのかといった人間は、ずっとその曲を覚えているんだろうけど。

タケカワユキヒデ「ビートルズの曲ってこじんまりしてるよね」

(夏井)そういえばこの前、赤羽さんが言ってた言葉を急に思い出しましたが、凡人と言えば、こんな天才が作った曲を、あのゴダイゴのタケカワ ユキヒデは「ビートルズの曲はスケールが小さいね」なんて言ってたとか。
 
(赤羽)「こじんまりした曲が多いよね、そういう時代だったんだね」と評したことがありましたね(笑)。たしかにガンダーラは壮大な曲だけど(爆笑)。タイトルだけは、でかい!
Aパートがあって、Bパートがあって、サビが来てどうのこうの、その構成自体が「こじんまりしてる」みたいな言い方してましたね。
 
(夏井)うわー、まさに天に唾するみたいな言葉ですねー。タケカワさん引っ張って行って、ポール本人の前で言わせたいよね。
 
(赤羽)まあ、あの当時、2分とか3分で終わる曲が多いから、ボリュームとしては「こじんまり」はしてるんだけどね。
特にポールはホワイトアルバムなどもそうだけど、ちょっとした短い「こじんまり」とした曲が得意だからね。俳句みたいな感じで、どんどん出てくる。
 
(夏井)こじんまり!(笑)
 
(赤羽)その出来上がった品質の高い曲を繋げていくと「アビーロード」のB面みたいな大きなスケールの作品になるわけで。一個一個は、まあ「こじんまり」はしてるけどねー。「ゴールデンスランバー」とか、こじんまりしてるもんなー(笑)。
 
(夏井)タケカワ ユキヒデにとってみればそうなんでしょうねー。ガンダーラだし。
 
(赤羽)ガンダーラより、アクロス・ザ・ユニバースのほうが大きいけどね。

(つづく)


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