勝負ごとに必要な要素は、すべてこのゲームから学んだ(気がしてる)
電源を入れると、ガチャガチャとやかましい電子音が鳴り響き、スタートすると蚊のなくような「ぷぁ〜ァん」とした不快な音が聞こえてくる。
この記事は90年代に少年期を過ごした人向け…いや、該当していたとしても、多くの人は忘れ去っているかもしれない。
覚えている人はごくごく一部だろう。そんな「はみだし者」に向けて書いてます。その割には情熱を込めて書いてるのは、ぼくが「はみだし者」だからに他ならない。
いや、ぼくだってどうせ書くなら多くの人に共感されたいっすよ。
「わかるなぁ〜」「懐かしい!」ってね。
でもね、書くしかないんです。このテーマで書くしかないんです。
このお題タグを見つけた瞬間、考えたんですよ。「ぼくだったら、どのゲームが浮かぶかなァ…」って。
そしたらですね、なぜだか本当にわからないんだけど、浮かんできたんですよ。あのガチャガチャした電子音と蚊のなくような「ぷぁ〜ァん」とした音が。なぜだか本当にわからないんだけど。
なんてこった。オマエかよ、よりによってオマエかよ!
でもまぁ、浮かんでしまったものはしょうがない。
よーし、書いてやろうじゃないか、オマエを題材に #自己紹介をゲームで語る というテーマをよぉ。
90年代、確かにぼくはオマエに夢中になった。ゲームボーイの白黒の画面に釘付けになって、手に汗を握りながら真剣にオマエに向き合ったよ。
単純なルールだけど、なかなかどうして、高度な戦略性と駆け引きが求められる。
そして高得点を狙うには、時として思い切りある判断も必要というギャンブル要素。
勝負ごとに必要な要素は、すべてオマエから学んだと言っても過言ではないよ。本当にありがとう。
そう、オマエの名前は…
クイックス
「クイックス」です。
ゲームボーイでクイックス。
このフレーズで、桂小枝さんの声と南京玉すだれが浮かんだ人は、共に時代を生きたソウルメイトだと言えよう。おめでとう、そしてありがとう。この記事はキミのために書いてる。
いやね、この「クイックス」ってゲーム、どれだけの人が覚えてるのかなぁ。ぼく的にはあの「テトリス」と同格なんすよ。
ゲームボーイで「テトリス」が発売されたのが1989年。その翌年の1990年に「クイックス」は発売された。
「クイックス」
なんか響きがカッコよくないすか?「クイックス」ですからね。早そうだし、複数いそうだし。
突然ですが、ここで1990年がどんな年だったのかを振り返ってみよう。
1990年は、いわゆるバブル景気最後の年であると言われている。翌年には土地バブルも崩壊し、平成不況へと突入していく年だ。Wikipediaに書いてあったので間違いない。
ただ、当時11歳だったぼくが、そんな難しいことを感じているはずもない。
ここで「クイックス」と「バブル景気」を結びつけて、いい感じの切り口を記事にしようと一瞬だけ思ってしまったことを謝りたい。この切り口は潔くここで終わりにする。
…思い出してきたぞ。ぼくが「クイックス」に惹かれたのは、ただ単にテレビCMを見て興味を持ったからのようだ。めちゃくちゃシンプル!全然「はみだし者」じゃない!
でも、そのくらいインパクトがあるCMだったんすよ。とりあえずこれを見てください。
ここでようやく「クイックス」というゲームの説明に入ろうと思う。
CMを見たらわかると思いますが「クイックス」は陣取りゲームです。
で、この南京玉すだれが「クイックス」です。陣取りをしている最中、コイツに接触するとゲームオーバーという緊張感マックスのゲームです。
ちなみに冒頭で話した「ぷぁ〜ァん」って蚊のなくような音を発してるのはコイツです。
わかります?この南京玉すだれ(クイックス)が、こんな風に伸びてくるんですよ。
いや、クイックス(南京玉すだれ)か。どっちかわかんなくなってきた。確実に言えることは、ゲームの説明だということを忘れてしまうほどのCMのインパクトだということです。
まぁいい、説明を続けよう。このレジャーシートが陣地です。プレイヤーは画面内にラインを引き、囲った陣地が「自分のエリア」になるというルールです。
これが実際のゲーム画面。こんな風に細かく線を引いて「自分のエリア」を増やしながら…
「クイックス」を追い詰めていくわけですよ。
そしてふたつの画面を見比べてください。変化してる数字と変化してない数字があることに気づきますよね。というか気づいてたはずです。
この赤で囲っている数字、つまり75%というのがゲーム側がぼくらプレイヤーに求めている占有率です。75%以上の陣地を取ればクリアです。
そして青で囲ってる数字が現在の占有率です。3%から11%と伸びているのがわかりますよね。
75%の目標に対して11%…圧倒的に足りないじゃないすか?こんなの途方もないと思うじゃないですか?
でも安心してください。次の瞬間こうです。
い、一気に88%に達したァァアア!!!
このように「クイックス」がいない場所が「自分のエリア」になるので、囲ってしまえば「クイックス」がいない部分をすべて占有することができるんですよ。
で、ですね。この「線を引いて陣地を取る」という単純な作業ですが…これがなかなか奥深いんですよ。
※本当は「クイックス」意外にも「スパークス」という物体がいて、そいつに接触してもゲームオーバーになります。なので、これから話す話は「スパークス」のことを考慮してないので、実際にはそんな単純な話ではないよっていう、前置きを「クイックス」を詳しく覚えてる人のためにキチッとしておきたい。
要はですね、このゲーム、細かく線を引いていけばジワジワ進んで勝つことができるんですよ。
この形ですね。「クイックス」は変な音を出しながら予測不能な動きをするので、細かく細かく積み重ねていくのがコツなんです。一気に陣地を広げようとしない。
ただですね、ここで小学校時代のぼくは学ぶわけです。
そんな勝ち方、つまんねぇな…と。
小学生にして気づいてしまうんですよね。勝つためだけにやってるんじゃねぇよなって。
何がぼくらを熱くさせるのか?それは「どれだけ張れるか?」であって、つまり「リスクを追えるか?」ってことだな、と。
とどのつまり、ゲームは博打なんです。
このことを言葉じゃなくて、体全体で感じてしまうんです。つまりですね…
「張り」ってのは・・・・ひりつかなきゃダメっ・・・・・・!
ひりつかないんですよ、細かく刻んで陣地を増やしていくという戦法は。
三度勝てば顔は紅潮し・・・・・・・・・・体温が上がるくらいの「張り」・・・・!
そうなんすよ、それを感じたくて、小学生はゲームに興じてるんです。
逆に・・・・三度負けたら・・・・・・・・血は逆流・・・・胃まで痛んでくるそんな「張り」・・・・・・・・!
この感覚ですね。これが勝負ごとを熱くさせる「リスク」ってやつです。
ぼくは、小学生ながらこのことを明確に感じていました。
驚くべきことは、この時点でまだカイジの連載はスタートしてなかったんですよ。カイジの連載は1996年からなので、6年も早くこんな大事なことをぼくらに伝えてくれたんです。
しかも言葉も使わずに。ゲームという体験を通じて。
カイジは教えてくれます。この「リスクを負う」という考えは、何もギャンブル狂が悪魔に取り憑かれ、自暴自棄になってヤケクソで全てを投げ打つ…という意味ではありません。
なんのために、限界まで張るのか?それはですね。
そう、分岐点が見えるんです。勝負どころがわかるって言うのかな。
リスクを負わず、寝ぼけた勝負をしてるとここが見えてこないんですよ。
安全な場所にいると、これを感じることができないんです。流れが変わる瞬間!
このことをぼくは「クイックス」から教えてもらいました。つまりこういうことです。
そう、ゲーム開始直後から、一直線に画面中央を突っ走る。「クイックス」を交わしながら、一気に陣地を真っ二つに割ること、を狙うんです。
これは燃えますよ、「三度勝てば顔は紅潮し・・・・・・・・・・体温が上がるくらいの「張り」・・・・!」と言っても過言ではないでしょう。
ぼくは小学生のころ、この瞬間こそ「生」を実感し、生きるとは何かを学んだつもりでした。
そして大体がこうなります。
「クイックス」に捕まってゲームオーバー。世の中はそんなに甘くない。結局、コツコツ積み上げていく奴が強いです。
ぼくは割とコツコツしたことが好きなんですが、思い切ったこともできるタイプです。
地道にいきましょう。〈自己紹介おわり〉
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