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銀河鉄道の夜と、ももクロと、宇宙

みんなで同じ時間、同じ本を読み、ともに語ろう

こんなええ感じのコンセプトで開催された #キナリ読書フェス

課題図書の中から僕が選んだのがこれ。久しぶりに手にした銀河鉄道の夜。

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単行本は実家にあるので、今回は電子書籍。大切な本は紙で持っておきたい派だけど、どこでも読める電子書籍の魅力も捨てがたい。

というわけで、今回は銀河鉄道の夜に関する読書感想文を書く!書くよ!

銀河鉄道の夜といえば、宮沢賢治が執筆中に亡くなったことから、解釈が難しいということで知られている。そう書くと「難しい感想なんかなー」って印象を受けるかもしれないけど、この本が僕に与えてくれた影響をできるだけ主観でライトに綴ろうと思ってるので、ゆるめに読んでくれたら嬉しい。

銀河鉄道の夜をじっくり読んでなくても、なんとなく伝わると思います。



というわけでさっそくいってみよう。まずは本との出会いから。


僕とこの本の出会いは、実は3度ある。


1度目は小学生の時。

確か5年生か6年生だったと思う。夏休みの読書感想文の題材として指定されたので、素直に買って読んだ。

もうリフォームしてなくなってしまったけど、実家の部屋の本棚に飾ってあったのを覚えている。でも、内容はカンパネルラが川に落ちたってことしか覚えていない。

やたらとそこだけ鮮明に覚えてる。

一緒に遊んでた友達がよくわからないうちに川に落ちている。そんな恐ろしい印象を僕に与えた。銀河鉄道の夜の魅力を1ミリもわかってない小学生の頃の僕。まぁ無理もないだろう。


2度目の出会いは2015年。

この2度目の出会いが今回の読書感想文のキーである。

2015年と聞いて、多くの人は「何があったんだ?」と思うよね。なんでこのタイミングで銀河鉄道の夜?って。

ただ、一部の勘のいい人はもうピンと来てるに違いない。というかわかった人は是非仲良くしてほしい(笑)

そう、2015年は僕が全力で応援しているももいろクローバーZの映画「幕が上がる」が公開された年なんです!

なつかし〜!!もう5年も前なんじゃなぁ…

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当時、映画館に見に行った時の写真


で、なぜこれが今回の話と関係あるかというと、映画の中の劇中劇で「銀河鉄道の夜」が選ばれているんですね。

地方都市の県立富士ヶ丘高等学校2年生の高橋さおり(百田夏菜子)は、部長を務める演劇部最後の1年を迎えようとしていた。それぞれに個性豊かな部員たちと共に年に1度の大会、地区大会突破を目標に稽古に励む中、元学生演劇の女王だという吉岡先生(黒木華)が赴任してくる。吉岡の指導の下、全国大会出場を目指し彼女たちの演劇に打ちこむ日々が始まる。

銀河鉄道の夜の感想を読みに来たのに、全然知らない映画の話を聞かせてしまってごめん。なのであらすじを簡単に引用しておいた。

そう、「幕が上がる」は高校演劇を舞台にした青春映画なんです。

アイドルが主演と聞くと、どうしても「ファン向けのものなのかな?」って印象があるかもしれない。けど、これ実は映画としての評価がすこぶる高いんですよ。

『幕が上がる』が一番突き刺さるのは、ももクロにも演劇にも興味がない人だと思う。夢中になることの説得力がもの凄く強い映画だから、まだ夢中になれるものを見つけてない人が見たら爆発しちゃうような作品。そういう人に届くといいな、と『キッズ・リターン』に人生を決められた僕は思いました。(映画監督 松江哲明)

ね?このコメントを見るとちょっと気になってくるでしょう?


当時、この映画を見て僕はえらい感動した。ファンだってことを差し引いても、みんなすばらしい演技をしていたし、映画から伝わってくるメッセージも熱かった。

そこで、劇中で使われてた銀河鉄道の夜を、もう一回読んでみようかな?と思って読んでみたんですね。

ちょっと長くなってしまったけど、これが2度目の出会い。


そして3度目が今。

noteを中心に活躍する作家の岸田奈美さんが、読書の秋ということで企画されたキナリ読書フェス。

おもしろそうだから参加しようと企画概要を読むと…課題図書になんと銀河鉄道の夜があるじゃないですか。

思えば2015年に2度目を読んだ時、いろんなことを感じた。

「カンパネルラが川に落ちる話じゃなかったんだ…」

小学生の頃の自分は一体なんだったんだ?と思うほどに衝撃を受けた。

しかし、この時わざわざ文字にして感想を残しておくことをしなかったので、何を感じたかをよく覚えてないのだ。

小学生の時の感想はレベルが低いながらも覚えているというのに。やっぱり読書感想文を書くってすげーな!書かないと感じたことが泡のように消えてしまう。

というわけで今回はしっかりと書く。1度目の出会いから30年の時を経て、銀河鉄道の夜の読書感想文をしっかり目に書こうと思う。

アーティストっぽくいうならば「銀河鉄道の夜・読書感想文(2020年ver)」だ。うん、いい感じ。

もしこれが表彰されたら。小学生の時に書いた1990年verは価値があがる。メルカリとかで高額取引の対象になるだろう。当時担任だった植岡先生は、もしまだ原稿持ってたらチャンスです。

というわけでようやく感想に入っていこう。よろしくお願いします。


銀河鉄道の夜から感じるテーマ

銀河鉄道の夜は「ほんとうのさいわい」を探す旅だと言われていて、それは恐らくだけど、自己犠牲により人のために尽くすことだと考えられる。

さそりの話(みんなの幸せのために命を差し出せず後悔しているさそり)や、ジョバンニが友人を助けるため、自らの命を犠牲にしたことからも、それは伺える。

「カンパネルラ、また僕たち二人きりになったねえ、どこまでもどこまでもいっしょに行こう。僕はもう、あのさそりのように、ほんとうにみんなの幸せのためならば僕のからだなんか百ぺん灼いてもかまわない」

これは、銀河ステーションから銀河鉄道に乗って旅をする二人が終点と言われるサウザンクロスについた時、乗客がみんな降りて二人きりになった時に交わされた会話だ。

このあと、いくつかの会話を交わした後、銀河鉄道の座席に座っていたはずのカンパネルラの姿はいなくなってしまう。直後に目覚めたジョバンニは、カンパネルラが命を犠牲にして友達を助けたことを知る。

このシーンが銀河鉄道の夜のクライマックスで、ここをどう受け取るか?で作品が読み手に与える影響が大きく変わってきそうだ。


解釈は様々あるだろうけど、多くの人が「ほんとうのさいわい」という部分が印象に残るのではないか?と思う。実際に僕もそのフレーズが強く残っているのは間違いない。


ただ、僕がいちばん心に残っているのは実はその部分ではなかったりする。


では、どの部分がいちばん心に残っているのか?


それが、実は先ほど書いたももクロが主演の映画「幕が上がる」に大きく起因してるんですよ。そうなんす、これが伏線ってやつですね。ただ好きなアイドルについて語ってたわけじゃあないんです。

伏線がある読書感想文!これは小学生の頃には到底できなかった芸当ですよ。


幕が上がるのテーマは「あきらめない心」なんですが、チラシにはこんな言葉が書かれてるんですよね。

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私たちは、舞台の上でならどこまでも行ける


そう、これを見たらピンとくるでしょう。僕が銀河鉄道の夜で最も心に残ってるフレーズは「どこまでも行ける」の部分です。

そしてこれが宮沢賢治が伝えたかったテーマなんじゃないかとさえ思う。いや、そう思うことが自分にとって一番プラスになる。そう思ってるんです。


私たちはどこまでだって行ける

映画「幕が上がる」を見て、直後に銀河鉄道の夜を読むと、このフレーズがとても際立って印象に残る。これマジで。

なお、この読書感想文を書くために一度Blu-rayで映画を丸々一本見て、その後に銀河鉄道の夜をしっかり読んだ。

つまり2015年とほぼ同じ条件で書いている。結構ガチめに2015年時点に感じたことを正確に思い出してて、自分が恐ろしい。いや、どちらかというと作品が持つパワーなのか。


もう自分の中では銀河鉄道の夜のテーマはこれで間違い無いんだけど、また数年後に「あれ、銀河鉄道の夜で感じたことって何だったっけ?」ってなったらマズイので、その時のための忘備録として、「どこまでだって行ける」について掘り下げて書いておきたい。

以下、映画「幕が上がる」を見た後に銀河鉄道の夜を読むと、僕たちはどこまでだって行ける気分になれる3つのポイントについて書きます。どこまででも行きたい人は特に読んでおいてほしい。


1.環境について

まずは環境について。何かをやろうとした時、一番初めに浮かぶのは環境を理由にした言い訳じゃないですか。

この両作品は主人公が決して恵まれていない環境にいるというところで通じるものがある。

銀河鉄道の夜のジョバンニは、病気の母親と二人暮らし。父親は漁に行ったっきり帰ってこないという、経済的に厳しい状況にいる。学校のあとは自らアルバイトをするなどして、同級生にそれをバカにされているシーンもある。

一方、幕が上がるの主人公たちは、演劇の弱小高校として登場する。新入生への部活アピールのシーンでは、新入生たちに全く相手にされないシーンもあり、演劇で全国を目指そうなんて夢からは程遠いところにいる。

両者とも恵まれた環境に初めからいるわけではなく、それでも「どこまででも行ける」という希望を持つところが非常にいい。

まぁ、銀河鉄道の夜の作中ではジョバンニはまだまだ「どこまででも行ける」という感覚は妄想に過ぎないのかもしれないが。


2.願えば叶うという力

銀河鉄道の夜を読んで「ああ、やっぱりこれ大事だな」って思ったことがある。それが、願えば叶うという力を信じることだ。

たまに世の中はシンプルだなって思うことがある。なりたいようになるし、やりたいようにできる。でも、それを信じて行動するのは怖い。どうしても頭でいろいろ考えて複雑にしてしまう。

そんなことを思ってモヤモヤしてる人も多いんじゃないだろうか。僕もそんなことがあったりします。

銀河鉄道の夜に出てくる「鳥を捕る人」のシーン。電車に乗っていたはずなのに、いつの間にか外に出て鳥を捕って、ふと気づくと電車の中に戻ってきているという不思議な描写。

ここでジョバンニたちは「どうやって戻ってきたんですか?」と聞くんだけど、「鳥を捕る人」は不思議そうに「来ようとしたから来たんです」という。

これ、なんか宇宙的じゃないですか?宇宙に願いをオーダーしたらそれが当たり前のように返ってくる、的な。

さらには車掌さんに切符の確認を求められた時に、ジョバンニが出した紙切れは「どこまででも行ける切符」として認識される。これもジョバンニが「どこまでも行きたい」と強く願ったからに他ならない。

映画「幕が上がる」の主人公たちも根拠のないところから「私たちはどこまでだって行ける」と強く信じるところから始めた。

願う力、両作品からこの強さを感じずにはいられない。


3.失うものがあっても、進む

最後三つ目はちょっとヘビーな話。

サウザンクロスで「どこまでも一緒に行こう」と約束した直後にカンパネルラは消えてしまう。

このシーンの後、勉強や神様、歴史に関する描写が続いていくんだけど、ここが結構とっつきづらくて難しい。

けど、言わんとすることはわかる。めちゃくちゃよくわかる。

ここで正直に僕にかかっているバイアスを話しておくと、映画「幕が上がる」の中で宮沢賢治が相対性理論や宇宙に影響を受けていたという描写がある。このことを踏まえてこのシーンを読むと、感じることがある。

人間は生まれた時からいつも一人。つながっているように思えても、結局は一人。けど、宇宙から見ればみんな同じ。

どこまでも行けると思っていても、宇宙はこの瞬間もどんどん広がっている。だから、宇宙の果てには絶対にいけない。

僕らはどこまででも行けるけど、宇宙の果てには絶対にいけないという矛盾。

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ここでもう一度これ。

私たちは、舞台の上でならどこまでも行ける。

宇宙を考えると、どこまでも行けるという言葉は一気に空虚なものになる。どこまでも行ける僕たちだけど、宇宙の端には辿り着けないという現実を突きつけられると不安だけが現実として残ってしまう。

だからこそ、舞台の上でならという制限が生きてくるんです。誰かが作った、どこかで聞いたような真理ではなくて、自分たちが生きている現実。自分たちが作った現実。

その現実の中でどこまでも行けるという、制限の中での可能性が希望ってことです。

こう考えると、「ほんとうのしあわせ」って宇宙の果てなんだろうなって思う。どれだけ求めても辿り着けない、的な。

でも、自分の家族や友達。身近な人という制限を設けると何をすべきかが見えてくる。こんなことを宮沢賢治は言いたかったのではないかなって思うし、そう捉えると僕は自分の人生が輝かしいものになると思える。思い込める。

宇宙の果てには行けないけど、ほんとうのしあわせには辿り着けないけど、やるべきことはある。可能性を信じるパワーで現実を生きる。これだなって思った。


これが僕が感じた銀河鉄道の夜(featuring 幕が上がる)でした。いやぁ、いい読書ができた。


最後に

小学校の時に読んだ本の感想を大人になって書くことになるとは思わなかった。しかも、ももクロが幕が上がるをやっていなかったらこんな感想にはならなかったに違いない。

僕ね、奇しくもこの映画「幕が上がる」を見た2015年に、どこまでも行けると思ったのか会社を辞めて独立してるんですけど…可能性を信じたときに逆に動けなくなるってことがよくあるんですよ。

自分はなんでもできる!と信じれば、それは世界がそれ以上のスピードで進んでいくのを知ることになる。上を見ればキリがないってやつですね。これ、さっきの宇宙の話と同じですよね。

その時に原動力になるのは制限です。やっぱり。まずは自分の目の前のことをやる。その中でベストを尽くす。自由過ぎると動けないんですよね。

ほら、会社員だった頃は時間に縛られる電車通勤なんて絶対嫌で、何がなんでも自転車か車で通勤してたんですけど…独立して制限のない今、逆に縛りが欲しくて電車通勤にしたりしてます。必要なんですよ、制限が…(なんじゃそりゃ)

こう思えるようになったのも銀河鉄道の夜と幕が上がるのおかげかもしれないなぁ。


文章にすると「うーん、ちょっとまとまらないなぁ」とか「うまく言えないなぁ」と思うところもあったし、これが100%言いたいことを上手く書けてるとはとても言えないんだけど、銀河鉄道の夜の感想をこうやって書く機会を下さったことに感謝してます。

ちなみにこれを書いてる時のBGMは「小沢健二のSo kakkoii 宇宙」でした。

上手く書けないのもモヤモヤするのも、宇宙から見れば多分同じ。すげーな宇宙って。よし、タイトルには宇宙を入れて終わりにしよう。

最後まで読んでいただきありがとうございました!


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