鉄塔が映し出す映像

人間には知覚できない速さだった。次から次へと情報を送受信しては、無数の人間のもとへ情報を届けている。人間が作った物であるにも関わらず、追いつけない。車を使っても、走っても、新幹線に乗っても、その速度に追いつくことは不可能だ。

***

やっと追いついた。何年掛かったかわからない。数えたくもない。今はただ、目の前のガラクタを目の前にしてやっと辿りついた結論に酔いしれたい。言葉通り半壊している。数百年前の遺物だ。ついさっきまでは私たちにとって謎の構造物であった。

「デンキという物質を運ぶ役割をしているらしい」

喜びに酔いしれ、結論を端的に言う。隣のタカマツは不思議そうな顔をした。

「デンキ?」

「人間はデンキという物を使って生活していた。あたり一面に転がっているガラクタを修理しても動かない訳だ」

タカマツは「へえ」と曖昧な返事をして、目の前のガラクタを足で踏みつける。あたりを掘り返すと、人間が残して行った資料が発掘された。頻出する”デンキ”という文字。おそらく、人間はこの”デンキ”に頼って生活していたのだろう。

「で、そのデンキっていったいなんなのさ」

タカマツはガラクタから顔を上げるとズバリといった。答えに困る。

「いや、まだデンキが何なのかまでは分かっていない。ただ、たしかに人間がその物質に頼って生活していたことは確かだ。そして、デンキはあらゆる機器を動かすことのできる物質であったらしい」

発掘した泥だらけの資料を丁寧にめくる。デンキによってパソコンが動く、車が動く、灯がつく、どうやらデンキは万能物質であったらしい。

「デンキを使っていたのに人間はいなくなったの?」

「いや、いなくなったのではない……」

言葉の途中で、スーツの警報音が鳴る。滞在時間を超過していた。スーツ内の汚染物質濃度が上がる前に退避しなければ。

「酸化してしまう。続きは戻ってからにしよう」

タカマツは黙ってうなずくと、脱出用ポットの手配をした。空は暗く、星は見えない。おそらく、人間は他の惑星でも同様の汚染行為に及んでいるだろう。

着陸する地球脱出用ポット。こちらが乗り込んだのを確認すると、脱出ポットは急上昇した。地球の周りを周回する既にスクラップとなった衛星とぶつかりながら、脱出ポットは宇宙と地球のはざまを抜けた。地球を見下ろす。

茶色く濁った惑星は、ゴミをまとい宇宙空間に佇んでいた。



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