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そして無職。無農薬栽培のお米物語

まずは無農薬栽培のできる田んぼの選定から始まった。

山から流れるミネラルたっぷりの水が上流から下流へと流れるその川の地形に沿うように田んぼは広がっている。
田んぼ(水稲すいとう)には水が必須だ。
遥か太古より、そんな自然の恵を分け合い助け合いながら栽培していた。

だが、今は少し勝手が違う。

多くの農家は慣行栽培といって、1反あたり8俵ほどの収量を確保するため
稲と稲の間の感覚を狭め苗を植え育てる。
そうすると必然的に風通しが悪くなり、熱がこもったり、虫の棲家になりやすい環境になる可能性があるそうだ。
そんな環境悪化を防ぎ、確実な収量を確保するため使用されるのが、農薬散布だという。

なので、隣同士に田んぼが広がっているような台地の田んぼでは
無農薬栽培をするにしても、農薬散布された田んぼの水を分け合うことになるし、
一番はその相手方がこちらが無農薬栽培をすることで虫や病気の発生を危惧し嫌がられることが多いのだそう。

そんなこともあり、無農薬栽培をしている人を探しても見つからないうちのような地域では、田んぼ探しに一苦労だった。

一苦労というのも、現在米屋を営む父に私のワガママを聞いてもらい、父の友人が探し出してくれたのだが。笑

そうして山奥の田んぼを貸してもらえることになった。

自然と一部に水が残りしっかり生態系が守られている山の田んぼ。
水を必要とする生き物たちの退避場所となる。

棚田になっており、山間地の景観保護の観点から市から補助金が出る代わりに

休耕田であっても、定期的に草刈りをし、それなりに景観を保つ必要がある地域らしい。

初めて行った時の山の田んぼにしかない、爽やかな空気と棚田の美しい地形に

思わず深呼吸、そのあと深いため息をついた事をよく覚えている。

田んぼの畦の横は小川が流れていて、夏場の作業も気持ちよさそうだと思った。

5年間休耕田だったらしい田んぼを近くで覗いてみるとまさにビオトープ。生き物の多様性がそこにはあった。
カエル、オタマジャクシ、イモリ、カメ、、
れんげやカラスノエンドウなど田んぼの緑肥に良いとされる緑もたくさん自生していた。

そんな様子から、再び父にワガママを打ち明ける。

‘’今年は無肥料で育ててもいいかな?5年休んだ田んぼの力を借りるだけでいいお米が育つ気がする“

米屋を長年勤め、慣行栽培のプロでもある父。父の作るお米は本当に美味しく、実は全国から注文が入る。

そんな父の返事は、ふんっと鼻で笑っているような、小馬鹿にされたような複雑なものだった。

これからの栽培と同じように父にも正直に向き合っていきたい。

そんなことを感じた、初めての無農薬栽培の田んぼとの対面だった。




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