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読書記録「パルムの僧院」(上)スタンダール著、大岡昇平訳

新潮文庫
1951

とにかく時代背景が難しい。
舞台はオーストリアとフランスの間で揺れ動くイタリア、パルム公国。
更にはイタリア統一前なので、ちょっと隣にいけば違う国に恭順を誓っていたりするからややこしい。

主人公はデル・ドンゴ侯爵の次男として生まれたファブリス。
そしてもう一人、ファブリス叔母の侯爵婦人。凛色家の侯爵の代わりにファブリスの面倒を見る中で、彼を出世させようと目論んでゆく。

デル・ドンゴ侯爵はオーストリア贔屓だが、息子であるファブリスはその熱しやすい性格もあってナポレオンの共和制に惹かれてゆく。
フランスがやってきて敗れ、再び故郷がオーストリアへ恭順を誓うと、ナポレオンもとで何としても戦いたいと、ワーテルローの戦いへ向かう。
軍隊に着いて行く酒場の女に何とか面倒を見てもらいながら戦争へと進む。
なんという戦争でどこと戦っているのか、何を目指しているのかもわからない描写が個人が見た戦争をよく物語っている。

ナポレオンを追ってはるばるフランスまで行ったということから立場が危うくなり、亡命生活のようなものを余儀なくされる。
亡命生活だが、金持ちの息子といった感じでそれなりに楽しい生活をしているようにみえる。

一方、大公の寵愛を受けるモスカ伯爵の愛人としてパルムの宮廷で影響力を増してゆくサンセヴェリーナ侯爵婦人。
彼女が甥に対して抱いているのは単なる愛情なのか、それ以上なのか。モスカ伯爵は彼女を愛する故に、目つきからその思いを悟ってしまう。

ここまでのファブリスはまだ恋に恋する若者といった感じ。
この先、ファブリスの情熱はどこへ向かうのか、そして叔母のサンセヴェリーナ公爵夫人との関係はどうなってゆくのか楽しみだ。

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