読書記録「SF魂」小松左京著
新潮新書
2006
SFというジャンルはあまり得意ではない。
学生の頃、教科書や試験問題で星新一がよく出てきて面白いと思い、何冊か本も買って読んだ。
そんな時にちょうど広瀬正の作品が復刻されたので読んだ。なんだか怖くて眠れなくなった。ちょっとエロティックな描写も当時の自分には刺激が強かったのかもしれない。中身は今となっては覚えていないのだが。
それ以来、SFにはほとんど手を出していない。
この本を読んだきっかけはアナザーストーリーズの小松左京の回。
阪神淡路大震災のあと、被災した地域をまわる中で鬱状態になったという。そんな繊細な、それと同時に大胆な本を書く小松左京という人に興味を持った。
この本でも当時について触れられている。
小松左京は1931年(昭和六年)生まれ。
SFという表現方法を選んだきっかけには戦争体験があるという。
SFは綿密な考証に基づいた思考実験なのだ。それがあまりにも的確で現実に起こってしまうこともある。それでも思考実験、シュミレーションそのものをしておくことは必要だし、きっと何かの役に立つ。何もないときは物語として楽しめば良い。
最近のドラマや小説はフィクションだから何でもありという感じが強いと思う。しっかりと調べ上げたifの物語の価値がもっと見直されても良いと思った。
今だからこそ特に目にとまったのは万博との関わり。
そもそも万博とは何か、そして近年の万博に求められるものは何かを考える、「万国博を考える会」。ここでの議論は実際の万博に組み込まれていくことになる。最初は単なる好奇心だったかもしれないが、著者はじめ錚々たる人たちの熱意が感じられる。大阪万博が多くの人を集めた理由が少し分かった気がする。
会を始めた背景には64年のオリンピックに対する消化不良があったという。お祭り騒ぎそのものへの違和感とオリンピックを機に社会が大きく変わっていくのに無関心な論壇と知識人。
オリンピックを日本でこの時代にやる意味。今回、2020年にオリンピックを誘致するという際には検証があっただろうか。いざ開催が決まったあとはお祭り騒ぎで突き進み、議論なく進んできたことも国民の理解を得られない一つの要因ではないか。
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