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読書記録「猫だましい」河合隼雄著

新潮文庫
2002

心と体を分けることで見えにくくなった現代。その間にある、居場所を失った「たましい」について、猫を描いた物語を通して考察した一冊。
紹介されるのは日本や外国の小説から日本の昔話、絵本までさまざま。

冒頭、猫マンダラで表されている猫の多義性。
古代エジプトでは神だったり、西洋では悪魔の使いと考えられたり、癒やしの存在だったり、はたまた化けて出たり。

面白かったのはコレットの"雌猫"と谷崎潤一郎の"猫と庄造と二人のをんな"。
どちらも男のほうが、猫と愛とも言える絆で結ばれている。その関係性にはちょっとエロティックな感じも親子のような感じもある。
別に猫のせいではないのだけれど、妻との関係が結局はうまくいかなくなる。
男がどうにもたまらなくなって手放した猫にこっそり会いにいっても、以前とは違ってつれないというのがいかにも猫らしい気がする。
国が違っても猫に対するイメージは共通なのだと改めて思った。

読んでみたくなったのは"雄猫ムルの人生観"。音楽家クライスラーの伝記に雄猫であるムルの日記が混ざったちょっと複雑な一冊らしい。残念ながら絶版。
著者は自分は猫好きではないとあとがきに書いていたけれど、いや、絶対猫好きでしょと言いたくなるような、猫の魅力が存分に語られた一冊だった。


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