海外への音楽旅が普通の旅行よりおもしろい理由 その1

Written by 山下裕矢

前の記事にも書いたように、仕事としてと、表現活動のひとつとして、僕は音楽をやっています。そして海外への音楽旅にハマってるんですが、そのおもしろさの理由をお伝えしていきます。

まず最初に挙げたいのは、その道の友達ができること。しかも強烈な出会いがあることです。

Sandwich Parlourで2017年にシドニーに行ってオープンマイクに参加した時の画像。

帽子をかぶったこのおじさんはZedという名前で、はじめはただの近所のおじさんかと思ってたものの、彼の番が来て歌い始めた瞬間に心を持って行かれました。フォークソング的な曲を3~4曲歌って、歌声、メロディ、伴奏、歌詞など、どこを取っても素敵で、持ち時間が終わる頃にはすっかり彼のファンに!特に、僕らがこの日の最後に演奏した曲に対するアンサーソングと言って歌ってくれた彼の最後の曲がじんわり心に沁み入りました。

出番の後にはバーで1時間ほどゆっくり話をして、帰りの方向が同じとのことで、一緒に電車に乗って帰ったんですが、その時に彼が言ってくれた言葉が忘れられません。

彼はもともと30年ほどプロのトランぺッターとして活動してきたそうですが、数年前に身近な人を3人、ほぼ同時に亡くしたそうで、自分の人生に意味を見いだせなくなった時期がありました。それから少し時間が経って、やっと気持ちの整理が付き始めたころ、家にあったもののろくに触ってもいなかったギターを弾いてみていたら、この「my heart a home」が出来たそうで、そのおかげでぐっと気持ちが軽くなったそうです。

その理由をたずねると、
「表現者は特別な存在だってことに気付けたからさ!オレもお前たちも、どんなに悲しい経験をしても、それを美しい歌に変えられる。もちろん辛い気持ちが消えてなくなるわけじゃないけど、随分救われるし、人に聴いてもらうこともできる。こんな素敵な事ってあるかい?」
と。

ズドンと来ました。

駅のホームで思わず3人でハグ!初めに見た時にはちょっと失礼な印象を持ってたのが、この時にはもう音楽の仙人か!ってくらい。もっと自信を持って進め!と背中を押してくれたようでした。

そして別れ際、宿題もいただいてしまいました。

この日僕らがやった最後の曲は、生まれ育った地元高知への思いを歌ったもので、特に県外や海外に行くと必ず歌っていたんですが、歌詞の内容を英語で簡単に説明してから歌ったせいもあってか、メロディや歌の響きが良くて、故郷への愛が感じられたそうで、だからこそ彼が一番大切にしてる曲をアンサーとしてくれたんだそうです。

でも、メロディや響きは良かったものの、君たちらしさや日本らしさは特に感じなかったとのことで、故郷を愛していて、せっかくこんないい曲が作れるんだから、次に会うときは日本人の君たち自身でないと作れないような、ルーツが垣間見えるような歌を聴かせてくれ、と言ってくれました。

あれからもうすぐ2年が経ちますが、彼の言葉は2つともずっと心に残っています。宿題はまだできてるのかどうかわかりませんが、あれ以来間違いなく活動の指針のひとつになっています。

ちなみに、これって別に音楽じゃなくても、表現することなら何でもあてはまりますよね。

そしてこんな出会い、普通に観光旅行しててもなかなかないんじゃないでしょうか。音楽やってて良かった!がんばってギター持って行って良かった!

次回は、バスキング(路上演奏)してて出会った人たちの話。

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