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MLBにおける生存戦略

なぜ二番あるいは一番にチームの得点源となる強打者を置くチームが増えたのか?

昨日、四番打者についての持論を述べた。本日はこの持論について、もう少し掘り下げてみることにする。

結論から申し上げると、MLBでは従来のような一、二番タイプが絶滅危惧種となり、一、二番が省略された形が現在の最適解となりつつあるということだ。
従来の一、二番とは、イチローさんのような俊足巧打の一番打者が出塁し、井端さんのようないぶし銀の二番打者が送りバントをして得点圏に塁を進めるプロセスである。2000年代のMLBにおいても、典型的な一番打者を配置するチームや、戦術としてスモールベースボールを掲げるチームも決して少なくなかった。実際に2005年のChicago White Soxは一番に打率.290、本塁打0、59盗塁をマークしたPodsednik、二番にこの年からMLBの世界に舞台を移した井口さん、三四番に本塁打30本以上マークする選手を配置し、見事にワールドチャンピオンに輝いた。

しかし、2010年代より打順の組み方に変化が生じた。打球方向に関するデータ分析によって、極端な守備シフトを敷くチームが増加した。

例えば、引張傾向の強い左打者の場合、サードとショートが一二塁間にシフトする。左方向にゴロが転がる確率が極めて低いからだ。その結果、ゴロでヒットになる確率が大きく低下し、平均打率が年々減少している。

さらに、データ分析が発達し、フライボール革命と呼ばれるフライを狙ったバッティングスタイルが浸透した。統計的にもゴロよりもフライの方がヒットになる確率が高く、言うまでもないがゴロでホームランになる確率は限りなく0%である。また、戦術として、打率より出塁率を重視する傾向が強まっている。

以上より、生存戦略として、フライボール革命の理論に基づいたバッティングスタイルを確立する選手が大多数となった。ちなみに、8月17日現在の日米における盗塁数ランキングと各選手の本塁打、打率、出塁率、主な打順は以下の通りである。MLBでは出塁率の高い、あるいは長打の打てる選手が一二番にされ、それらの選手がランクインしている傾向にある。一方、日本では俊足巧打タイプというより、代走要員の選手が比較的ランクインしている傾向にある。

【MLB盗塁ランキングトップ5】
1 Whit Merrifield 盗塁34 本塁打8、打率 .276、出塁率 .322、一番
2 Starling Marte 盗塁33 本塁打9、打率 .320、出塁率 .406、二番
3 Fernando Tatis Jr. 盗塁23 本塁打34、打率 .299、出塁率 .376、一・二番
3 Trea Turner 盗塁23 本塁打18、打率 .319、出塁率 .366、一・二番
5 CedricMullins 盗塁22 本塁打20、打率 .315、出塁率 .379、一番



9 大谷翔平 盗塁18 本塁打39、打率 .269、出塁率 .364、一・二番
※両リーグ全体での順位
【日本プロ野球盗塁ランキングトップ5】
1 若林 楽人 盗塁20 本塁打2、規定打席未達
2 源田 壮亮 盗塁18 本塁打1、打率 .278、出塁率 .330、二番
2 周東 佑京 盗塁18 本塁打3、規定打席未達
2 塩見 泰隆 盗塁18 打率 .300、本塁打8、出塁率 .386、一番
5 和田 康士朗 盗塁17 本塁打0、規定打席未達
※両リーグ全体での順位

もしかしたら、日本だけでなくアメリカにおいてもイチローさんのような俊足巧打の地位を築くことが、究極の生存戦略なのかもしれない。

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