「夏っぽい」をする、日帰りひとり旅
2024年のお盆休み。
海に行く
フェリーに乗る
水族館に行く
私が思う、この3つの夏っぽいことをする日帰りひとり旅に出ました。
はじめに
概要
「海に行く」は愛知県の伊良湖岬で、
「水族館に行く」は三重県の鳥羽水族館で、
「フェリーに乗る」は、この2地点の移動によって実現します。
名古屋を起点とすると、ちょうど伊勢湾を時計回りに一周する行程です。
参考にしたのは、鉄道系YouTuber「謎のちゃんねる」さんの、JRと名鉄のどちらも使わずに豊橋から名古屋に行く、という動画。
愛知県の二大都市・名古屋〜豊橋を公共交通機関で移動する場合、基本的に、東海道新幹線、JR東海道本線、名鉄名古屋本線の3択になります。ですが、そのいずれも使わずに、フェリーで海を渡って三重県経由で移動しちゃおう、というのがこちらの動画の趣旨になります。
こちらの行程に、名古屋から豊橋への移動と、伊良湖岬と鳥羽での観光を加えたものが、今回の旅になります。
背中を押してくれたのは
今回の旅は、お盆休みが始まる前には大体構想していました。ですが、さあ旅に出よう、という踏ん切りがつきませんでした。
と思ってしまう自分がいました。
そんな時に背中を押してくれたのは、『白い砂のアクアトープ』というアニメーション作品でした。
舞台は沖縄、老朽化と資金難による閉館寸前の水族館。館長の孫であり閉館阻止のために奔走する高校生「くくる」と、アイドルをクビになって沖縄に逃避行に来た同い年の「風花」の2人が出会い、水族館の仕事を通じて絆を深めていく物語です。
この夏、放送3周年を記念してYouTubeで期間限定配信されているのを見つけて、観はじめたらすっかりハマってしまって。それはそれは、最終話まで公開されるのが8月最終週なのが待ちきれなくて、先に観たいがためにAmazon Prime会員になってしまうくらいのハマりっぷりで。
↓放送当時のティザーPV
この作品の素敵な点はいくつもあります。絵が綺麗とか、描写が丁寧とか。ですが私にとって「いい作品」で終わらなかったのは、作品全体(ストーリーや主題歌など)を通して、「積み木を1つずつでも積んでいけば、(少しだけかもしれないけど)いずれ未来を変えられるかもしれない」「そうやって積み重ねた積み木が崩されてしまったとしても、(今までのとは形も材料も違う別の積み木になるかもしれないけれど)また積み直せばいい」ということを表現してくれていたことでした。
(「そう思えるのはあなたがいるから」というテーマもありそうですが、今回の旅には関係ないため割愛)
悲観的に捉えれば、人生に一発逆転必殺技ってほぼない。裏を返せば、今日は昨日までの積み重ねでできていて、明日は今日までの積み重ねで作られる。だから自分さえ一歩踏み出せれば、明日がほんのちょっとだけ変わるかもしれない。100×1が100にならないことを嘆いて今日も0を並べてしまうよりは、1×100が10くらいにはなってることを願って今日に1を刻んだほうがいい。
そう思えた私は、ショルダーバッグを肩にかけて、旅の一歩目を踏み出すことができたのでした。
旅の始まり
名古屋→豊橋(名鉄)
おはようございます。
朝9時の名古屋駅にやってきました。
この日、台風が関東に近づいている影響で、東海道新幹線は東京〜名古屋間が終日運休。でも、名古屋の天気は大丈夫そう。
まずは、名鉄の自動券売機で、豊橋までの乗車券と特急券を購入します。
特急券を購入します。
以前、浜松にひとり旅した時は、名鉄名古屋→豊橋を各駅停車で移動しました。ですが、フェリーの運行間隔が1時間に一本という都合上、今回の旅では移動に時間を割けません。
また、名鉄では優等列車であっても一般車は乗車券のみで乗車可能ですが、指定席ではありません。仮に豊橋までの49分間、直立不動を保ち続ける必要に迫られた場合、旅の後半に使う予定だったスタミナを消費してしまいます。
以上の言い訳をもって、特急券(490円)を購入していきます。
さて、改札機に乗車券を通したら(特急券は通さない)、3番ホームへと向かいます。どうやら課金勢専用のりばの模様。
お盆休み中とはいえ平日朝のラッシュアワー、ひっきりなしに来ては去っていく列車を何本も見送り、09時18分、ついに課金の報酬……もとい今回乗車する快速特急豊橋行きがやってきました。
乗車した1号車の車内は、意外にも空席が目立ちました。お盆休みなのでもうちょっと混雑を予想していました。
一般車だと「よくある通勤型電車」って感じの車内ですが、課金したことで全面展望を堪能できます。
快速特急は、名鉄名古屋〜豊橋間の最高種別。列車は名古屋、金山、神宮前と名古屋中心部の駅を出ると、以降は知立と東岡崎の2駅しか停車しません。あっという間に10時07分、終点の豊橋に到着です。
豊橋→三河田原(豊橋鉄道)
豊橋駅に着いたら、まずは窓口で「豊橋・鳥羽割引きっぷ」を購入します。これは、豊橋から伊良湖岬までのバス乗車券(右半分)と、伊良湖岬から鳥羽までのフェリー乗船券(左半分)がセットになったきっぷです。
豊橋から伊良湖岬へは、最初からバスに乗ってもいいし、途中三河田原まで電車(豊橋鉄道渥美線)に乗ってもOK。せっかくなので、今回は電車に乗ります。
10時15分。3両編成の列車は新豊橋を発車。轟音をたてながら、渥美半島を進んでいきます。市街地を抜けると、車窓には黄色に染まった田んぼと風車が見えてきました。
10時50分、終点の三河田原に到着です。
三河田原→伊良湖岬(バス)
三河田原は渥美半島の真ん中あたり。
ここからはバスに乗って、さらに渥美半島の先端・伊良湖岬を目指します。
11時、バスがやってきました。乗客は、私のほかに2〜3人程度。
渥美半島は電照菊の栽培で有名です。このため、窓の外にはビニールハウスが幾度となく登場します。
途中、海沿いに出ました。三河湾です。
バスに揺られることおよそ1時間、終点の伊良湖岬に着きました。バスを降りる際、豊橋駅で買った「豊橋・鳥羽割引きっぷ」の右半分は回収されます。残った左半分はフェリー乗船に必要なので、財布の中にしまっておきます。
昼食と散策
海の幸を堪能
時刻はちょうど正午を回ったところ。次のフェリーは13時発なので、それまで昼食を食べたり、周辺を散策したりして過ごす想定です。
昼食は、道の駅から徒歩8分程度のところにある「いちば食堂」にて、刺身定食をいただきました。とてもおいしかったです。特に、普段サワラを刺身でいただくことがないので、貴重な経験でした。
さて、「いちば食堂」ではなかなかレアなことに遭遇しました。お会計で10,010円を支払うと、店員さんが「ちょうど三世代いますよ」と笑顔でお釣りを渡してくれました。受け取った紙幣を見ると、旧千円札(夏目漱石)、現千円札(野口英世)、新千円札(北里柴三郎)の3枚が。
(そもそも新千円札を手にしたのもこれが初めてでした)
しかし、その写真を撮らずに3枚ともこの日使ってしまったうえに、ここで運を使い果たしてしまったのか、この後2つの事件に見舞われることになります。そのお話はもうちょっと後で。
「いちば食堂」を出ると、フェリーの出港時刻まであと20分程度になっていました。ご飯の後、本当は伊良湖岬の先端にある灯台を見にいこうかな、と思っていましたが、断念。フェリーのりば付近の海岸に設置された防波堤から、海を眺めることにしました。
防波堤の向こうは砂浜になっていて、白波が寄せては返しています。かなり強い風も絶えず沖の方から吹いていました。私は防波堤の上に座って、しばらくぼーっと海を眺めていました。
事件1 〜失せ物: 出ず〜
フェリーの出発時刻まで10分を切ったので、海を離れてフェリーのりばへと戻ります。
と、ここでとんでもない事実が発覚します。
なんと、財布の中にしまったはずの「豊橋・鳥羽割引きっぷ」の左半分がないのです。
ショルダーバッグの中身を全部ひっくり返してみましたがダメ。お財布のお札入れのところに入れていたはずなので、食堂かおみやげ屋さんでお札を出した時に一緒に出てしまったのかもしれません。一応、道の駅で乗船券だけを買い直すことは可能ですが、時刻はちょうどフェリーが出港する13時になるところ。時間の猶予がありません。
5分後——
写真中央から右に伸びるのが、先ほど私が呑気に座っていた防波堤。
その向こうを航行するのが、13時発のフェリーです。
はい、間に合いませんでした……。
乗船券は買い直し、14時10分発の次の便まで伊良湖岬に足止め。
痛い出費とタイムロスであります。
突然できた空白の1時間を使って、先ほどは断念した伊良湖岬の先端にある灯台に向かいます。灯台までの道は、海岸線に沿って岩やタイルで遊歩道が整備されていて、とても歩きやすいです。
10分程度歩いたところで、灯台に到着しました。
現役施設ということもあり中に入ることはできませんが、写真を撮るだけでも十分楽しめる場所です。写真だと伝わりにくいですが、意外と背が低くてかわいい灯台ですよ。
事件2 〜浸水〜
先ほどの灯台からそのまま道なりに進むと、伊良湖岬をぐるっと一周回って道の駅まで戻ることができます。その途中にあるのが、恋路ヶ浜という広い砂浜です。
遊歩道から砂浜に出ることができるようになっていたので、少し寄り道。海はすぐそこ、先ほどの防波堤よりも近いことに、調子に乗って水際に近づいた瞬間……
波が寄せてきて……
靴が完全に波に浸かってしまいました。
ふつーに、膝からくるぶしの間の3分の1くらいまで浸かりました。
弱り目に祟り目、泣きっ面に蜂、踏んだり蹴ったり。
傷口に塩というか、靴の中に砂と海水です。
ベンチに座って靴下を脱ぎながら、今おみくじ引いたら大凶だろうな、と思いました。
フェリーに乗船
伊良湖岬→鳥羽港(フェリー)
さぁ、ようやくフェリーに乗船です。
フェリーには冷房の効いた客室もありましたが、せっかくなので景色がよく見える甲板(船尾)に出ました。
14時10分、対岸の鳥羽に向けていよいよ出港です。
フェリーは白波とぶつかりながら、ゆっくりと鳥羽を目指します。時折、雨のような水滴が飛んできて、顔や手に降りかかります。海上の風は防波堤の時よりもさらに強く、リアル強風オールバック状態になります。誇張ではなく、本当に髪の毛強風オールバックになるし、甲板を歩こうにも進めないし、かけていた眼鏡を危うく海に飛ばされそうになりました。
途中には、神島、菅島、答志島などの離島を見ることができます。神島は伊良湖岬からの距離の方が近いですが、三重県鳥羽市なんだとか。
フェリーに乗ることおよそ1時間、鳥羽港に到着しました。
鳥羽水族館
電車とバスとフェリーを乗り継いで、ついに三重県の鳥羽に上陸しました。
ここから、徒歩で鳥羽水族館に移動します。鳥羽港と鳥羽水族館は隣り合わせの建物です。
お盆休み真っ只中ですが時刻はすでに15時、これから帰宅しようとする方が増えてくる時間帯だったため、そこまで混雑は感じませんでした。
帰路
鳥羽→名古屋(近鉄)
1時間分のロスはありましたが、それでもいろんな生き物を見て満足。
鳥羽水族館を後にし、徒歩で近鉄鳥羽駅に移動します。
窓口に並んで、近鉄名古屋までの乗車券と特急券を購入します。
特急券は1,340円。(名鉄との価格差……)
16時40分、列車は近鉄鳥羽を発車。
その後うたた寝しまったようで、気づくと白子(鳥羽と名古屋の中間あたり)でした。
列車は四日市、桑名と各主要駅に停車した後、夕暮れ時の木曽三川を駆け抜けます。揖斐、長良、木曽の順に渡り、木曽川を渡ると愛知県です。
伏屋あたりに差し掛かると、車窓から田んぼが消え、住宅街が目立つようになります。線路が高架になると、終点の近鉄名古屋はすぐそこです。
18時20分、近鉄名古屋に到着。
これにて本日の旅は終了です。
靴履き慣らしの岐阜旅以来の、久々の旅。
またときどき、旅に出よう。
明日も1を刻むために。