見出し画像

音を楽しむ

昨日に続いて音のお話。話がマニアックになったり僕が勝手に盛り上がってして、皆さんをひかせてしまったらすみません。と、先に謝っておきます。

僕は音が好きです。音楽が好きです。
音と音楽が好きだからミュージシャンなのです。と、当たり前のように書きましたが「音楽」は好きでも「音」には興味がないミュージシャンもいます。信じられませんが。
色々な音が好きです。色々な楽器の音色は楽しいものです。自然の音も人工の音も好きです。心地よい響きというのは味覚と同じようなもので、人それぞれ好みがあるのでしょう。僕が心地よいと思う音を心地よく思わない人もいるのは全く不思議ではありません。その逆もあるのですから。誰かが気持ちよく弾いている音が僕にはどうしても無理で眩暈がしてその場を離れたこともあります。心地よい、なんて感覚は極めて主観的で個人的な体験なのだなとその時思いました。話を戻すと、色々な楽器の美しい音があります。ピアノやバイオリンなどの名器と呼ばれる楽器の音の深みや素晴らしさがあります。そういう音も大好きです。ですが僕は困ったことに非常に下品な音も大好きなのです。それがいわゆるロック音楽におけるノイズとかフィードバックとか呼ばれる雑音、騒音の類です。それらははっきり言って市民権はありません。雑音です。耳を塞ぎたくなるような音です。人を不快にさせます。耳障りどころか耳に痛い時もあり、鼓膜に悪影響がある時もあります。まさに人に害を及ぼす可能性すらある音です。汚らしく下品です。

でもそんな音がたまらなく心地よく感じてしまう感性を僕は持ってしまいました。開き直っているみたいです。ただ本当に申し訳ないのですが、心地よいのです。逆張りで汚く下品なものをいい音だ素敵だと言っているのではないのです。世の中の多くの人が好きであろう美しい音色も好きなのです。でもそれと同時にその対極にある音も大好きなのです。ロックという音楽がこの世に誕生して何十年も経ち、昨日お話ししたペダル、いわゆるエフェクターというものの多くはこの汚い音を作り出すためのものであるという現実を考えると僕と同じような嗜好を持った人もかなりの数いるのでしょう。昨日のブログでアップした写真をバンドに詳しい人に見てもらえればわかると思いますが、僕の機材の半分くらいがそうした不快なノイズを出すためのものなのです。意味を成すのかどうなのかわからないくらいです。自分でも笑ってしまうようなこのセッティングが好きです。バカバカしいなと自分でも思います。でも楽しくて仕方ありません。
僕はよくこのノイズと呼ばれる雑音を録音するという極めて矛盾したことを行います。雑音というのは取り除かれるべきものです。この世からは排除すべきものです。特に録音という現場においては最も忌み嫌われるものです。それをわざわざ録音機器を使って記録するのです。愚かの極みです。
ですが。
楽しいのです。とにかく楽しいのです。

僕がこうしたノイズ、フィードバックを好む理由を何度かブログなどで書いたこともありますが、その理由の一つが「コントロールできないこと」です。これもまた矛盾した話です。演奏というのは録音というのは自分や音をコントロールすることによって成り立つ作業です。それなのに、コントロールできないから好き、というのは訳がわかりません。これは僕にとってはノイズは風や雨などの自然の音と同じだからかも知れません。自然の音はコントロールできません。いつどこでどんな音が鳴るのかわかりません。ノイズもフィードバックもそうなのです。感覚的にこんな音になるかも、というイメージはありますが、時々それもわからず破綻することもあります。それもまた楽しいのです。人間の理解を超える可能性があるから好きなのです。随分壮大な話になってしまいましたが、訳のわからなさ・コントロール外にあること、というのは僕にとってとても大事な要素です。不確定なもの、予測できないものというのはいつだってワクワクさせるじゃないですか。違いますか?

そんな訳で、僕は音を楽しむアイテムをずらりと揃えることができました。
幸せです。
スタジオに入る度に、これらのペダルを組み合わせて下品なノイズを作って楽しんでいます。音は楽しむものです。音楽は楽しむものです。
そのシンプルさを何よりも大切したいと常々思っています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?