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楽園のカンヴァス感想文(イラスト付き)

今回は読書感想文です。

わたしはほぼ毎日何かしら絵を描いています。

自分が絵を描くからか、画家がテーマの本はとっても面白いです。

ここ数年、アートをテーマにした作品といえば原田マハさんが有名ですね。

私も全作読んだわけではないけれど、数冊読んだだけで引き込まれてしまいました。

特に面白いと思ったのが、今回紹介する原田マハさんの「楽園のカンヴァス」です。

私も絵描きの端くれなので、文章と自作イラスト付きで紹介したいと思います。



原田マハさんについて


まずは作者の原田マハさんについて紹介します。

原田マハさんは東京都生まれですが、小6から高校卒業まで岡山で過ごしたそうです。
大学卒業後にニューヨーク近代美術館で勤務、キュレーターとしても活躍されています。
2005年に「カフーを待ちわびて」で小説家デビュー、「楽園のカンヴァス」は2012年山本周五郎賞を受賞されました。
キュレーターの経歴を生かし、美術を題材にした作品をたくさん発表されています。
兄は同じく小説家の原田宗典さん。



私は「たゆたえども沈まず」で初めて原田マハさんの作品を読みました。実在した画家を題材にここまで自由に書ける人がいるんだと衝撃を受けました。
お兄さんの原田宗典さんの作品も好きです。

それでは楽園のカンヴァスに戻ります。


楽園のカンヴァスあらすじ(ネタばれなし)

主役となる人物は二人います

ニューヨーク近代美術館のキュレーターであるティムと、日本人でルソーの研究者である織絵です。

二人はスイスに住む有名な美術コレクターバイラーの大邸宅に招かれます。

そこで二人が目にしたのはルソーの「夢」に酷似した一枚の絵画でした。タイトルは「夢をみた」

バイラーはこの絵が真作か贋作か、ティムと織絵の二人に見極めて欲しいというのです。

そして真贋判定が正しいと思ったほうにこの絵を譲ると約束します。

バイラーは二人にヒントとなる一冊の古書を、一日一章ずつ読み進めるようにと告げます。

その本は全部で七章からできていて、全てを読み終えた日、つまり七日目に真贋判定をしなければなりません。

ライバルとなったティムと織絵。

そしてその古書にはルソーとピカソの知られざる物語が描かれていました…。





以上が簡単なあらすじになります。

ティムと織絵が謎解きをする時間と、古書に描かれたルソーとピカソの時代が交互に描かれ、それでいてごっちゃになることがなく、とても読みやすい作品だと思います。

私も絵を描くからか、心に響く名言がたくさんあり、感動の嵐でした。それについてはのちのち書きたいと思います。

その前にまずルソーについて、簡単に紹介していきたいと思います。



アンリルソーについて



アンリルソー

ルソーは19世紀後半~20世紀初頭にかけて活躍したフランスの画家です。

40代前半から絵を描きはじめ、49歳で退職すると本格的に絵を描くようになりました。

税関の職員として働いていたため「税関史ルソー」とも呼ばれます。

独学の日曜画家であり、画風は素朴派。日本ではヘタウマといわれます。

「ヘタ」「ヘタ」とよく言われるのですが、私はその色彩感覚がとても好きで、決して下手とは思いません。

まぁ確かに最初の頃は人物が浮いていたり、子供の顔が怖かったりするけれど…。そこが愛嬌があってかわいらしいです。

晩年に描かれた「眠れるジプシー女」や「夢」はとっても上手になった思います。

ルソーの特徴として有名なのはジャングルです。この植物の色彩がいいんですよね。うちもポスターを飾っています。

ルソーは無審査で誰でも出品できる「アンデパンダン展」に何度も作品を展示しています。

さらにあのピカソにも大きな影響を与えたとして有名です。

私がルソーに抱く印象は、天才肌の芸術家というよりも超天然の可愛いおじいちゃんという印象ですかね。だから親近感が湧きとても好きな画家のひとりであります。



印象に残ったシーン


ここからは楽園のカンヴァスで印象に残ったシーンや言葉を、ネタバレにならない程度に紹介したいと思います。


①「見る者の心を奪う決定的な何かが、絵の中にあるか。
「目」と「手」と「心」、この三つが揃っているか。
それが名画を名画たらしめる決定的な要素なのだ。」

これは物語のはじめの方に語られていた言葉です。
「目」と「手」と「心」。わたしもこの三つは気をつけて描いているところです。目は観察力、手は技術、さらに心を込めて描くことが大事だとつくづく思うのです。

とにかくこの文章だけで作者がどれだけ美術に精通しているかよくわかる一文だと思います。


「アートを理解する、ということは、この世界を理解する、ということ。アートを愛する、ということは、この世界を愛する、ということ」


これはティムと織絵が動物園に行った時に織絵が語った言葉です。
何故二人が動物園に行くことになったのか、などは省かせていただきます。

これも私が絵を描いてきて、最近もっともよく思うことです。
絵を描いていると、この世界の全てが愛おしく思えます。
花や木、動物や一生懸命生きている人たち全てに愛着が湧き描き残したいって思うんですよね。

この動物園のシーンでは名言連発で、どうしてこんなに画家の心が分かるの〜と涙が出そうでした。

「ひょっとすると私は、アートばかりを一心にみつめ続けて、美を驚きに満ちたこの世界を、眺めてはいなかったんじゃないのだろうか?『なんとなく、わかったんです。そのとき、ルソーの気持ちが。彼はアートだけをみつめていたわけじゃない。この世界の奇跡をこそ、みつめ続けていたんじゃないかなって』」


この台詞もぐっときます。この世界って本当に奇跡で出来ていますよね。

他にもこのシーンでは紹介したい台詞がたくさんあるのですが、ぜひ読んで確かめてください。


③夜会のシーン

私が描いた夜会

「祝宴の時代(ザ・バンケットイヤーズ)」といわれる時代を書いたシーンです。


ルソーはピカソなど20世紀初頭の前衛作家たちに影響を与えたと言われています。

ピカソは「ルソーを讃える夕べ」といわれる夜会を開いたそうです。ピカソはルソーのことが大好きだったんですね。

そこには詩人のアポリネールや恋人のマリーローランサンなども参加していました。

この夜会は美術史でもとても有名な出来事のひとつです。

そしてこの物語で描かれている夜会のシーンがまた、その夜の空気まで肌で感じるような、紙面から熱気が伝わるとても素晴らしいシーンになっているのです。
私も20世紀初頭のパリの夜に飛び込んだような気分になりました。

こうした疑似体験が出来るのが、本当に読書のよいところですよね。

ルソーはアンデパンダン展に出品した当初は「涙を流して笑わないものはいなかった」と馬鹿にされ続けてきましたが、不思議な魅力を持つ人物だったんですね。友人が集まってくるのも納得できます。

以上が私が特に印象に残ったシーンや台詞になります。

ですが、本当に全編通して飽きることのない作品になっています。

ミステリーの要素もありますから、謎解きが好きな方へもおすすめできます。(昔ダヴィンチコードが流行った時も一気に読んでしまいました。アートミステリーは本当に面白いものですね)



終わりに

冒頭に述べましたが、私はほぼ毎日絵を描いています。

歳をとっても、おばあちゃんになっても続けようと思います。

だからアートをテーマにした作品には、いつも以上に感情移入してしまいます。

わたしもこの世界の奇跡をもっと見つめつづけようと思いました。

やはり絵を描くのに必要なのは、「目」だと思うのです。

また次回読書感想文を書くときも頑張って挿絵つきで紹介したいと思います。

今回3枚しか描きませんでしたが、表紙は透明水彩で描きました。

長々とお付き合いくださりありがとうございました。

アートを愛する全ての人へおすすめの作品です。

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