世界中のねえさんへ、そしていもうとに。
本屋さんでの密かなマイルール。
それは、"本屋さんで酒井駒子さんのカバーイラストを見つけたら御招きする会"と名付けた、酒井さんの絵を見つけたら内容を見ずに本を購入するという小さな冒険です。
その日、見つけたのは淡いベビーピンクの中央に幼い姉妹が描かれた絵本。
タイトルは「ねえさんといもうと」
しっかり者で世話焼きのおねえさん。
そんなおねえさんから世話を焼かれることにあきあきしてしまったいもうとが、こっそり家を飛び出すという物語です。
いもうとが家に居ないことに気付いたおねえさんが、いもうとを探す場面で遠い過去の記憶が蘇ってきました。
それはもう30年以上前のことです。
私には10歳としの離れた妹 がいるのですが、彼女を迷子にさせてしまったことがあるのです。
いまこれを書いているだけで胸が詰まって苦しくなってしまいます。
妹が生まれる前に住んでいたアパートの仲良くして下さっていたお隣さんに会いに行ったときのことです。母とお隣さんは昔話に花が咲き、小さかった妹は初めて訪れる場所ということもあり、退屈そうです。そんな様子を見て母が私に「外で遊んであげて」と言いました。
私は妹を連れてアパートの前の細い路地裏をうろうろと散歩し始めました。幼い妹は歩くのも遅いので、ちょっと驚かせてやろうと思い、 電信柱の影に隠れて妹がやってくるのを待ち伏せていました。が、いくら待っても妹が来ないのです。
そこは一本道で迷子になりようがなかったのに。
私は必死で妹を探しました。今来た道を遡り、けれど何処にもいない。アパートに戻ってるかもと思いアパートに駆け戻り母に聞くと「帰ってきてない」と 言われた時の、血の気が引いていく感覚をまだ覚えています。アパートを飛び出し、とにかく探しました。どれくらいの時間探し回っていたのか、自分でも分からないほど探しました。何度もアパートへ戻っては妹が帰ってきてないかと母に尋ねた記憶があります。それでも母が妹を探すことは しなかったので、そんなに時間は経っていなかったのかもしれません。
一本道の先には車の往来が激しい大通りです。とうとうそこまで探しに出たら、大通りの向こう側で「おねえちゃーん」と泣き叫びながら走っている小さな妹を見つけました。私は急いで大声で妹の名を呼びました。 けれど、車がビュンビュンと走行している大通りで、私の声はなかなか妹に届きません。妹が飛び出してきて交通事故に遭わないように注意しながら、何度も何度も大声で呼んだところで私の記憶は途切れています。
どうやって合流できて妹をアパートへ連れ帰ったのか よく憶えてないけれど、とにかく妹はケガひとつすることなく無事でした。その日の帰りに立ち寄ったデパートで、罪滅ぼしのために妹にチョコレートを買ってあげたことは覚えています。
妹よ、あの時はほんとにごめんね。
そんな記憶がある私なので、絵本の中のねえさんがいもうとを 探し歩いているときの怖さが十分すぎるほど分かるのです。
なんだか緊張感あふれる、とんだ自分語りになってしまいました、すみません。
きっと世の中のおねえさん達はこの絵本を読んで、
少し泣いて、少し肩の荷を下ろすことができるのではないでしょうか。
何気ない日常の中で成長していく姉妹たち。
そんな世界中のねえさんへ、そしていもうとに。
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