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結月美妃の着物読本

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着物の着付けのこと、着方のこと、着物の種類のこと。また着物を着るということはどういうことか、そして、着物を着たら、あなたはどうなるのか、ということ。
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(6)豊饒から引き算していく色無地

(6)豊饒から引き算していく色無地

着物にはいくつかの種類があって、留袖、訪問着、附下、小紋、そして色無地などがあります。

それぞれ格式や使う場所が異なるので、欲を言えば一通りすべて持っているとどこにでも行けます。

ただし、留袖となると小紋でさえ特別な機会でないと着ない時代では、なかなか出番はありません。

ですから、現実的には訪問着までを持っているといいわけです。

訪問着には柄の重いものや軽いものがありますが、基本的には柄が

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(5)振袖の終わり

(5)振袖の終わり

成人の日といえば振袖ですが、振袖は着物の中でも最も華やかで、ゴージャスで、この上ないものです。しかし、その振袖も今ではまともなものをお召しになっているひとはほとんどいなくなってしまいました。

成人式といっても、ほとんどがレンタルで済ますようになってもう長い時間が経ち、その日のために振袖を娘のために誂えることはあまり聞くことがありません。

レンタル業者はできるだけ安い振袖で高い値段で貸したいため

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(4)着物はコスプレであってはならない

(4)着物はコスプレであってはならない

 今は着物が特別なものになってしまって、街でも着物姿を見ることはほとんどありません。あったとしても、わたしの目から見て、着こなしているなと思えるひとは滅多にいません。

 では、着物を着こなすとはどういうことか? 実はそれは着付けをバッチリと仕上げることではないのです。

 昔、宇野千代という作家がいて、彼女は着物のことが好きで自分で着物のデザインもし、銀座に着物の店もオープンし、着物雑誌まで刊行

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(3)着物はあなたを丸裸にする

(3)着物はあなたを丸裸にする

 着物は不思議なもので、着るひとの内面、生活水準、教養の具合、育ち、生い立ち、そういったものすべてをあからさまにしてしまいます。

 「馬子にも衣装」という言葉がありますが、着物はそうはいきません。中身がないひとに極上の友禅を着せたところで、むしろ着物のほうが勝ってしまって、着るひとをみっともなく見せるものです。

 着付け師にいくらきれいに着せてもらっても、その浮かれた表情でこれまた芯のない女に

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(2)楽しいの前に「美しい」

(2)楽しいの前に「美しい」

 着物というのは、着る物であって、定義するには広すぎるし、洋服ではない日本の衣装が着物と言われています。

 大昔は服と言えば着物しかなかったので、着物を着ることが普通であり、そんな気張るものでなかったはずです。

 昭和初期など洋装をするほうが珍しく、モダンボウイ、モダンガールなどと呼ばれていたようですから、やはり着物のほうが日本人にとっては当たり前だったと言えます。

 それが今は洋服のほうが

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(1)わたしにとっての着物

(1)わたしにとっての着物

 着付けを教えたり、着物を販売する仕事を始めて、いつしかそこそこの年月が経って、その間に随分、着物というもの、着物に対する意識や印象といったものが社会の中で変わったなと思います。

 しかし、いくら社会が変わっても、ふと自分を振り返ると、わたしの着物への考えは何一つ変わってないと気づきました。

 つまり、わたしは着物そのものが好きというよりも、いえ着物そのものは好きですが、それよりも着物を着て美

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