見出し画像

OGATA Paris とヴァンブの蚤の市

友人に案内してもらったOGATAは、「ひとうたの茶席」で展示をさせていただいた八雲茶寮を作った、緒方さんというプロダクトデザイナーがパリに作った店。レストランと茶房、ブティック。事前に見たウェブサイトの動画は実際より映像効果で大きく見えているのかと思っていたが、実際にかなり大きかった。この美しさは映らないから写真はほとんど撮っていない。現地の人も日本の人も、誇りを持って働いている。お香の部屋も最近出来て、松栄堂から出向した人という人もいた。

内装だけ現地の建物に合わせて作って出店している日本のブランドはいくつか見たが、スケルトンの状態からここまでくるのは大変だ。実際開店予定は1年半くらい遅れ、その後コロナで開店できない時期もあった。

一見緒方さんの日本でのお店である八雲茶寮やHIGASHIYAMA、HIGASHIYAのデザインをそのまま持って来たように見えるがそうではない。これは緒方さんの思うおもてなし、かっこよさを具現化し、日本はここまでできるんだと命を燃やすように提示した場所だ。情熱と迫力に圧倒される。

最近すごい建築を見せてもらうことがあるが、建築は、世界の創造だと思う。何もないところに頭の中に描いたものを実現する。空即是色。

それをここまで執拗なレベルまで思い描き実現するのは並大抵ではない。「こういうもの」と当たり前すぎて素通りしそうになるくらい小さな要素まで厳密に検証し、設計に相応しい物に置き換える。さらにそれを規制も働く人の気質も違うパリで実現するのはもう、想像を絶する面倒くささだと思う。

いくら資金があってもたいていは想像力の方が負ける。お金に勝てる想像力があれば、資金はどうにかなる。

今回の旅のもう一つの目的は、私がお茶を始めるきっかけになった茶師のお茶を頂くこと。今OGATAで働いている。彼と初めて麻布の店で出会った頃、8年後にこうしてパリでお茶を淹れてもらうことになるとは全く想像できなかった。ここを始めた緒方さんの夢に導かれ、それに惹かれて集った人たちと、その周辺の人に波及していく。

アーユルヴェーダの先生は、「大きな夢」しか叶わないと言っていた。大きな夢を叶えるために、まずは小さな夢からと考えがちだが、小さな夢はたまにかなったとしてもすぐに失い、満たされない。人々を巻き込む大きな夢しか本質的にはかなわないのだそうだ。

私にとっての大きな夢ってなんだろう、と思いつつお茶を頂いた。

https://ogata.com/paris/

次の日はヴァンブの蚤の市へ。バスが到着すると、輝くようにおしゃれなマダムが一緒に降りた。

白髪にストローハットをかぶり、白い麻のパンツに大判のスカーフを巻いている。振り返ると小ぶりのサングラス。真っ赤なルージュに瑞々しく優雅な笑みをたたえていた。よほど「あなたとても素敵だから写真を撮らせてもらえませんか?」と声をかけたかったが勇気が足りず盗撮。こうして自分の髪型やファッション、姿勢や表情までも妥協なく作り上げることも、建築と同じ創造だな、と思う。テキトーな格好に甘んじている私も、せめて表情だけでも、とにっこりすると、ビルのガラスにベトナムの舟こぎの人みたいな自分が映っていた。麦わら帽子がいけないのか。

のみの市で会った素敵なマダム

器と布を求めて丁寧に探したが、いいものは見つからなかった。ここでは3人くらい日本の人を見かけた。

のみの市で見かけた切ないぬいぐるみ

(2022.7.15)