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GPT-4oに共通テスト数学を解かせたら(後編)

 前編の記事は、こちらです。


1 どんな問題を解かせるか

 今回、Chat GPTに解いてもらう問題は、
2023年度共通テスト数学Ⅰ・A第1問〔2〕(1)です。

 点Oを中心とし、半径が5である円Oがある。
 この円周上に2点A、BをAB=6となるようにとる。また、円Oの円周上に、2点A、Bとは異なる点Cをとる。
(ⅰ) sin⁡∠ACB=()である。また、点Cを∠ACBが鈍角となるようにとるとき、cos⁡∠ ACB=()である。

2023年度共通テスト数学Ⅰ・A第1問〔2〕(1)

・ この問題を選択した理由

 まず、最新の問題を解かせたいので、2023年度の問題を選びました。
 次に数学Ⅰ・Aを選んだ理由は、数学Ⅱ・Bより受験者数が多いからです。
 第1問〔2〕(1)を選んだ理由は、他の問題は絶対値記号や図があるため、Chat GPTに解かせることが難しいからです。

2 使用したChat GPT

 GPT-4o(無料版)を使用しました。 

3 正弦定理を使いなさいと指示すると

 前編で書いたように、GPT-4oは余弦定理や円周角の定理を使って、$${sin∠ACB}$$の値を求めていました。

 では、人間側から「正弦定理は使えないか?」と聞いてみました。

 以下が、GPT-4oの回答です。

正弦定理を使うこともできます。正弦定理を用いて $${ \sin ∠ACB }$$ を求める方法を説明します。

### 手順

1. **三角形 $${ OAB }$$ の情報**:
- $${ OA = OB = 5 }$$
- $${ AB = 6 }$$
- 三角形 $${ OAB }$$ は二等辺三角形です。

2. **正弦定理の適用**:
正弦定理を三角形 $${ OAB }$$ に適用すると、次のようになります:

$${\frac{AB}{sin ∠AOB}}$$ = $${\frac{OA}{sin ∠OAB}}$$ = $${\frac{OB}{sin ∠OBA}}$$

より具体的には、

$${\frac{6}{\sin ∠AOB} = \frac{5}{\sin ∠OAB}}$$

$${ ∠OAB }$$ は $${ ∠OBA }$$ と等しいので、これを $${ \alpha }$$ とすると、

$${ \sin ∠AOB = 2 \sin \alpha \cos \alpha}$$

また、正弦定理より、

$${ \frac{6}{\sin ∠AOB} = \frac{5}{\sin \alpha}}$$

3. **余弦定理の利用**:
余弦定理を使って $${ ∠AOB }$$ を計算します。

$${ AB^2 = OA^2 + OB^2 - 2 \cdot OA \cdot OB \cdot \cos ∠AOB}$$

ここで、$${ OA = OB = 5 }$$、$${ AB = 6 }$$ なので、

$${ 6^2 = 5^2 + 5^2 - 2 \cdot 5 \cdot 5 \cdot \cos ∠AOB}$$

$${ 36 = 25 + 25 - 50 \cdot \cos ∠AOB}$$

$${ 36 = 50 - 50 \cdot \cos ∠AOB}$$

$${ 50 \cdot \cos ∠AOB = 14}$$

$${ \cos ∠AOB = \frac{14}{50} = \frac{7}{25}}$$

4. **円周角の定理の利用**:
円周角の定理により、$${ ∠ACB = \frac{1}{2} ∠AOB }$$ です。

5. **三角形 $${ ACB }$$ における正弦定理の適用**:
三角形 $${ ACB }$$ に対して正弦定理を適用すると、

$${ \frac{AC}{\sin ∠ACB} = \frac{BC}{\sin ∠BAC} = \frac{AB}{\sin ∠ACB}}$$

ここで、$${ AB = 6 }$$、$${ AC }$$、$${ BC }$$ はそれぞれ円の半径 $${ 5 }$$ に等しいです。三角形の角度 $${ ∠ACB }$$ は $${ \frac{1}{2} ∠AOB }$$ であり、 $${ \sin ∠ACB }$$ を求めるために次のように計算します:

$${ \sin ∠AOB = \frac{7}{25}}$$

よって、

$${ \sin ∠ACB = \sin \left( \frac{1}{2} ∠AOB \right)}$$

ここで $${ \cos ∠AOB = \frac{7}{25} }$$ なので、

$${ \sin ∠AOB = \sqrt{1 - \left(\frac{7}{25}\right)^2} = \sqrt{\frac{625 - 49}{625}} = \sqrt{\frac{576}{625}} = \frac{24}{25}}$$

よって、

$${ \sin ∠ACB = \frac{1}{2} \sin ∠AOB = \frac{1}{2} \cdot \frac{24}{25} = \frac{12}{25}}$$

しかし、この手法は少し複雑です。

### より簡単なアプローチ

もう一度、正弦定理を三角形 $${ OAB }$$ に直接適用して、

$${\sin ∠AOB = \frac{6}{10} = 0.6}$$

とすることができます。最終的に、簡潔な答えとして、

$${\sin ∠ACB = 0.6}$$

を得ることができます。このように、正弦定理を使用しても同じ結果を得ることが可能です。

GPT-4oの回答

 ついでに、一般的な解法を載せておきます。

一般的な解法

 GPT-4oの回答は、明らかに手順が多く、効率的な解答とはいえません。

4 回答から見えたGPT-4oの思考の癖

 GPT-4oの回答から、思考の癖を私なりに考察してみました。

 前編の記事で書いたGPT-4oの回答もそうですが、GPT-4oは必ず最初に△OABに注目しています。
 でも、高校生が解く場合、△ABCに注目するはずです。

図1 注目する三角形のちがい

 この2つの三角形のちがいはなにかというと、頂点に点Cを含むかどうかです。
 点Cは円周上を動く動点なので、△ABCは形が変わります。ですが、△OABの場合、すべての頂点は動かないので、決まった形です。

 △ABCは形が変わりますが、円に内接しているため、正弦定理を使うことができます。

図2 点Cの位置によって、△ABCの形は変わる。

 GPT-4oは、変形する三角形を避けて思考しようとしているかもしれません。
 その結果、簡潔ではない回答になってしまいます。
 また、「正弦定理を使いなさい」、と人間としては効率的な方法を提案したはずが、結果的により煩雑な思考をさせてしまう結果になりました。

5 最後に

 今回は上述したような、GPT-4oの思考の癖を見ることができました。では、他の場合ではどうか(円ではなく三角形、動く点が2つなど)など、さらなる疑問も生まれました。

 また、どのように指示すれば、一般的な解法で示した解答が得られるのかも気になるところです。

 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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