【私的読書生活】週刊読書録vol.23(2022/6/4〜6/10)
梅雨と夏がせめぎ合いながら過ぎる今日この頃。
雨の季節は早く過ぎてほしいと思いつつ、迫り来る灼熱の太陽に怯える、夏が苦手な樹田です。
ああ、夏ごもりして、涼しいところでずっと本を読んでおきたい。
そんな今週の読了本はこちら。
絵に込められた宇宙
日本美術が好きだ。
本当は仏像の方がより好みだが、仏画もなかなか捨て難い。
日本絵画はいわゆる西洋美術とは異なる色合いやその構図など、見慣れるまでは物足りなさもあるかもしれない。その上、仏画は日本絵画史の中では、「鳥獣戯画」、若冲や応挙の作品などと比べると、地味で知られていないものが多い。
しかしどうしてどうして魅力的なものは多いのだ。
その有名作品を、仏教絵画の第一人者の著者が解説してくれるこの一冊。
惜しむらくはコンパクトなだけあって、図版が小さいこと。
これは是非、大きな図版片手に読んでいただきたい。
理想を言ってしまえば、直に見られると、なお感動はひとしおであることを保証する。
信じられないくらい繊細な截金文様や、匂い立つような隈取、仄かに浮かぶ裏彩色などなどの技法。
私自身も美術館のガラス越しに見たことがほとんどなのだが、時に寺での展示や、ちょっとしたお手伝いで間近で拝観出来た時は、思わず息を呑んだものだ(20年位前の話になりますが)。
またこれは「日本人好み」というふうにも言えるのかもしれないが、先に述べた「鳥獣戯画」とまではいかないにしても、どことなく漫画的な描写も多く、それがまた面白い。「釈迦涅槃図」や「釈迦金棺出現図」の周りに描かれる者たちの表情は秀逸。
他にも「来迎図」のVR的な発想(描かれた仏の指に実際に糸を通した跡があるさえある!)等も、当時の人々の願いに触れるようで興味がそそられる。
美術館等に行かれた際は、是非、細部まで拝観し、その世界観に浸っていただきたい。
女には女の戦いがある
個人的に、次の大河にといつも心ひそかに願っているのだが、なかなかその話が出てこない「壬申の乱」。
日本古代史研究の第一人者(先週も著者の本読んでます『謎の豪族 蘇我氏』)の語るこの新書。
基本的なところは、これまでの研究に則りながら、女性側からの視点を中心に描かれる「壬申の乱」とその前後。
特に面白かったのは第4章の「大海人皇子をめぐる女たち」の中で述べられている以下。
壬申の乱という大乱を前に、女同士の寵を巡る戦いがあったかもしれないというのは、なんとも生々しくて面白い。
古代史フィクションと言えば、こちらも是非。
傑作!
一晩は語れます、笑。
と、どちらかと言わなくても、趣味の本に走った1週間。
そろそろフィクションの波が来そうな気配はしてますが。
最後までご覧下さり、ありがとうございました。
次の週も楽しく読んでいきたいと思います。
皆様にも、素敵な本との出会いがありますように。
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