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【掌編】見透かされた悪夢

足がずぶずぶと飲み込まれていく。
泥水のような、もっとねばつくような、スライムみたいな水。
必死で足を前に出す。
重たい重たい。
なんとか抜け出さなきゃ。

ビシャッ…

助かった

今度は上から滝、そして剛流が押し寄せてくる。
そのまま小さな箱に閉じ込められる。
やばいやばいやばい。
どんどん水が溜まってくる。

パリン

助かった

え?え?今度は何?
ここ自分の部屋だよね?
だよね?
なのになんで、なんですぐそこが海?
波打ち際がもうそこまで。
怖い。怖い。
窓が割れる、割れる、割れちゃう!

バリン!

助かった……のか…?

あれ?
あれは誰だ?
なんか知ってる人だ。
家族…か?うん、家族だ。父?ん?いや、違うか?
何をしてるんだ?
え、ちょ、やばいって。
そんな、人を突き落としたら、そんな濁流に突き落としたら!!!

ーーーーー

「おはよ。大丈夫?だいぶうなされてたから起こしたけど。」
「こ、怖かった!」
「ん?なに?夢?」
「うん、そっか、そうだ、夢だ、夢か〜。でもまじで怖かった。なんか溺れそうになったり、なんか父さんが人を殺そうとしてたり……。」
「死因は水死でしょ?」

!!!

声も出ない。

と、今度は、夢の中身を言い当てられたことに震える。

「な、なんでわかったの?」
「トイレ行きたいんだよ、そういう時間だよ」

目の端で時計をチラリと見て、片方の唇の端を少し上げて笑う。

「ついでに言えば、喉もカラカラ。違う?」

確かに。
そう思った次の瞬間、水を差し出される。

コップに口をつけると、ちょうどいい温度の水が、するすると喉を降りていく。

思いしる。
見透かされている。

かなわないな。

自分のことを自分よりわかられている。
存外、心地よい。

「だーかーらー寝るなって!」
バリっとタオルケットをひっぺはがされる。

なんだよな、せっかくいい気持ちで二度寝しようとしたのに。

「また夢で溺れるよ」
笑いながら君が言う。

それは嫌だな。
渋々ベッドから這い出した。


ーーーーー了



こっそりオリジナル掌編。

必ず見ちゃう悪夢ってあるかなと。
ちなみに私は本が崩れて埋もれる夢かな。
枕元の積読が多い時によく見ます。
と言うのは創作で、実際は仕事に遅刻する夢が多いかもしれない。
ベタですね。

最後までご覧下さり、ありがとうございました。

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