勘や経験則ではなく、心理学のエビデンスをもとに、バズるコンテンツを生み出そう
ソーシャルメディアの時代において、バズるコンテンツの作成は、マーケター、企業、コンテンツ・クリエイターにとって一つの目標となり得ます。
以前も述べましたが、バズは「新しいネットワーク」への接続が可能になるため、まだ我々を知らない見込み顧客の開拓に大きく寄与するからです。
なお、これについてはネットワーク理論について紹介した以下の記事を参照してください。
しかし、何がそのような広く拡散されるコンテンツを生み出すのでしょうか。どうすれば、視聴者の注目を集め、メッセージに広く共感を集めるような記事を作ることができるのでしょうか。
世間では様々な経験則が述べられていますが、再現性のあるノウハウを求めていれば、その一つの答えは「心理学」にあります。
近年では行動経済学の隆盛とともに、改めて注目が集まる心理学の分野では、人間の行動に関する新しい知見が続々と得られているのです。
いわゆる「マーケターの勘」は重要ですが、実証された知見をうまく活用することで、狙った効果を得ることは、費用対効果という点では非常に優秀です。
そこでこの記事では、エビデンスが存在し、利用可能な心理学の成果を紹介し、コンテンツ制作に応用できるヒントや考え方を提供します。
読者の感情に起伏を設定する
UCLAのStuart Sorokaは、実際のビデオ ニュース コンテンツに対する精神生理学的反応を17 か国、6 大陸で調査しました。
その結果、時事問題のニュース報道は主に否定的であることがわかっています。
これは、否定的なニュース コンテンツに、より注意を払うという人間の傾向の産物であり、世界中の平均的な人間は、ポジティブなニュース記事よりもネガティブな記事によって生理的に活性化されることを示唆しています。
(出典:Cross-national evidence of a negativity bias in psychophysiological reactions to news Stuart Soroka PNAS)
しかし「物語」として報道を見れば、否定的なニュースだけでは拡散されません。それは、ネガティブなニュースだけでは、読者が「高揚」しないからです。
現実的には、ネガティブな話の最後に「ポジティブな」ニュースを入れることにより、読者および視聴者の感情を高揚させることができます。
特に、努力、正義、善行が報われない物語は、読者に強い不満を残します。
心理学者のドルフ・ジルマンは「好きな登場人物が良い行いをして成功すれば人は快楽を覚え、嫌いな登場人物が悪い行いをして成功すると不満と不安を覚えることが、多くの実験でわかっている」と述べています。
(出典:ストーリーが世界を滅ぼす ジョナサン・ゴットシャル 東洋経済新報社)
ヒント
・メディアである以上は、耳目を集めるために問題、課題、否定的な出来事を取り扱うことは不可避です。
・ただし否定的な出来事で終わるのではなく、努力、正義、善行などの肯定的な物語を設定し、「そのための解決方法は?」として、最後には報われるようにすることが拡散のカギです。
有益で実用的な情報を提供する
良く知られたことですが、役に立つヒントやハウツーガイド、専門家のアドバイスなど、実用的な価値を提供するコンテンツは、よりシェアされやすくなります。
人々は、友人や家族、フォロワーに役立つと思われる情報を伝えようとする傾向があるからです。
事実、ペンシルバニア大学のJonah A. Bergerは、著書”Why Things Catch On”の中で、「私たちが気にしているものを、私たちは分かち合います。」と述べており、人々が情報を共有するタイプの一つは、「有益で実用的な情報」だと述べています。
特に、その内容が「簡単に実行できる」時は、なおさらです。
ユーザーは投稿の内容をすぐに実行するインセンティブを与えられるからです。実際、人々はあなたのコンテンツに価値を見出すだけでなく、心理的に共有したくなるでしょう。
例えば最近ではChatGPTに関する実用的な記事の拡散が目立ちます。
これらが拡散を獲得できるのは、時流であることに加えて、「お手軽に試せる、お得な情報」という状況があるからです。
ヒント
ここから先は
生成AI時代の「ライターとマーケティング」の、実践的教科書
ビジネスマガジン「Books&Apps」の創設者兼ライターの安達裕哉が、生成AIの利用、webメディア運営、マーケティング、SNS利活用の…
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?