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コンテンツマーケティング現状と、その基礎知識を、海外の実例資料をもとに、網羅的にまとめました

インターネットが広告媒体としてマスコミを上回る一方で、ネット広告には様々な規制が設けられるようになりました。
また、バナーなどを利用した「ディスプレイ」型の広告は、じつは早期から限界が指摘されています。

そのようにネット広告をめぐる環境が大きく変わっていく中で、新たに「コンテンツマーケティング」という言葉が注目されるようになりました。

では、コンテンツマーケティングとはどういったマーケティング手法なのか、導入や運用にあたっては何が必要なのか。
現在のネット広告が置かれている環境の変化と合わせてここでご紹介します。


激変するネット広告環境

インターネット広告費は2019年にはじめてテレビ広告費を抜き、その後も拡大し続けています。
コロナの影響をもろともせず、2021年のインターネット広告費は初めてマスコミ4媒体の合計を上回りました(図1)。

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図1 インターネット広告費とマスコミ4媒体広告費の推移
(出所:「『2021年 日本の広告費』解説-広告市場は大きく回復。インターネット広告費がマスコミ四媒体の総計を初めて上回る」電通報
https://dentsu-ho.com/articles/8090

それぞれの実際の金額と構成比は、下のようになっています(図2)。

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図2 2021年日本の広告費の内訳
(出所:「2021年 日本の広告費」電通 より作成)
https://www.dentsu.co.jp/news/release/2022/0224-010496.html


動画広告の充実やSNS対策など今後も成長が見込まれるインターネット広告ですが、一方で、周囲の環境は実は激変しており、以下のように、新たな対策が求められているのも事実です。


1)個人情報保護の強化による脱Cookie
「サードパーティークッキー」の廃止についてご存じの方もいらっしゃると思います。

まず、クッキー(Cookie)とは、ネットユーザーがあるウェブサイトを訪問したときに、サイトを管理しているサーバーからユーザーのパソコンのブラウザに送信され保存される小さなファイルのことです。クッキーはユーザーのパソコンに自動保存されます。
そしてユーザーがそのサイトを訪れた日時や回数などさまざまな情報を、サーバー管理者は把握することができます。

わたしたちがSNSや通販サイトを利用する時、一度そのページを閉じても次に訪問した時に自動的にログイン状態にあったりカートに商品が残ったりしているのはクッキーのはたらきによります。

サードパーティークッキー問題
しかし問題は、「サードパーティークッキー」と呼ばれる、「第三者によるクッキー」です。

例えばウェブサイトAの管理者と広告事業者Bが協力し、BがAのサイト内にJavaScriptを埋め込んでもらうと、JavaScriptはユーザーのブラウザに働きかけ、Bにも情報を送信してしまうのです(図3)。

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図3 サードパーティークッキーのしくみ
(出所:「(出所:「オンライン広告におけるトラッキングの現状とその法的考察(作成・森亮二)」総務省資料)
https://www.soumu.go.jp/main_content/000599872.pdf p.Ⅱ-6


これによって、ユーザーは訪問した覚えのないサーバーにも自動的にアクセスしたことになってしまいます。しかもそこにはクッキーが存在していますから、広告事業者Bにも、サイトの訪問履歴や回数などの情報が知られてしまいます。

また、広告事業者が複数の広告掲載先から得られる情報を集めると、手に入る個人情報はどんどん詳細になっていきます(図4)。

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図4 サードパーティーによる名寄せ
(出所:「(出所:「オンライン広告におけるトラッキングの現状とその法的考察(作成・森亮二)」総務省資料)
https://www.soumu.go.jp/main_content/000599872.pdf p.Ⅱ-7

このようにして広告事業者Bは、そのユーザーの関心事や好みについてブラウザの動きから詳細に把握できるため、ユーザーの複数の訪問先に、好みに合った広告を表示させ続けることができてしまいます。
こうした手法は「トラッキング(=追跡)」として問題視され、個人情報保護の面から規制強化が始まっています。

さらに、第三者がサードパーティークッキーを自動取得してしまうことで、さらなる他社との連携を広告主が把握できないまま、ネットユーザーに「迷惑をかけている」のです。

大手スポーツジム運営会社の場合、2018年5月の調査時点でサイト閲覧すると閲覧者のブラウザは86の広告会社や解析会社などにアクセスし、情報を送信することとなっていたが 、執筆者がこのジム運営会社にたずねたところ、把握していたのは代理店1社に依頼した6事業者の11のJavaScript のみであり、残る75の情報送信先については気づいていなかった。*1

かつ、この状況では、いったいどんなサイトに自社の広告が掲載されているのか、把握もできません。

クッキー送付でEUでは巨額の罰金も
サイトの閲覧履歴や回数は、れっきとした「個人情報」であり、サードパーティークッキーで得られる個人情報取得や理由については、世界各国で厳しい規制が設けられつつあります。

EUでは「GDPR」と呼ばれる個人情報保護規定があり、GDPRを踏まえた個人情報保護法を各国が設けています。

例えば、フランスの個人情報機関であるCNILは2020年12月に、Googleに対し1億ユーロ、Amazonに3,500万ユーロの罰金を科したと発表しています*2。
いずれも、ユーザーの事前同意なしにクッキーを送付したことが違法とみなされています。グーグルに対する罰金は、EUで科されたこの類の罰金としては最高額です。

また、EUでは現在「ePrivacy指令」が準備されています。一部では「クッキー法」とも呼ばれるこの法案では、オンライン広告の目的でクッキーを利用する際にはユーザーの同意取得が求められるなど、これまであいまいな部分もあったクッキーの運用について厳密な規定が設けられています*3。

日本でも、クッキー利用や「トラッキング」に関する規制を盛り込んだ改正個人情報保護法が2022年に施行されています。

なお、Appleの標準ブラウザであるSafariではすでにサードパーティークッキーが廃止されているほか、GoogleはChomeでのサードパーティークッキーを2023年後半に廃止するとしています。


2)「アドフラウド」という不正
また、近年では「アドフラウド」という不正が広がりつつあります。
広告は「人間」が読んではじめてその効力を発揮するものですが、アクセス数を水増しするためにロボットやAIに広告をクリックさせたり、不正に表示回数を増やしたりするのが「アドフラウド」です。

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インターネット上における 「生成AIの利活用」 「ライティング」 「webマーケティング」のためのノウハウを発信します。 詳細かつテクニカルな話が多いので、一般の方向けではありません。

ビジネスマガジン「Books&Apps」の創設者兼ライターの安達裕哉が、生成AIの利用、webメディア運営、マーケティング、SNS利活用の…

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