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今週の【情報通信をとりまく】気になるニュースまとめ

東京大学・鳥海研究室発AIベンチャー、TDAI Labさんによる「石丸旋風」分析によると、実は「なんとなく」支持していた人が多かったと。意外性があり非常に興味深いです。そのほか、ビッグテック同士が「裏で手を組んでいた」疑惑に関するスクープ報道に、東京キー局が主導するウェブニュース改革、さらにメディア史に残るかもしれない、プラットフォーム事業者による「ジャーナリズム支援基金」創設決定のニュースなど、注目の話題が目白押しです。

①衝撃スクープ…ビッグテック寡占の闇

フィナンシャル・タイムズのスクープだと思いますが、衝撃の内容てんこ盛りでした。ビッグテックによる寡占に、対応できる術などあるのでしょうか。

–関係者によると、グーグルはユーチューブ上で13〜17歳の利用者に照準を合わせ、インスタグラムを宣伝する広告を配信
–このマーケティングは、広告を表示するためのシステム上で属性が「不明」に分類されている利用者を意図的にターゲットにしていた
–一方で関係者の指摘では、グーグルはこの分類のユーザーが18歳未満に偏っていることを把握していた
–「メタは若者から搾れるだけ搾ろうとしており、裏口を見つけ出した」
–関係者によれば、グーグル従業員はこの方針をかいくぐる手段として「不明」と呼ばれる分類に目をつけるよう提案
–「不明」の分類には若年層、特に18歳未満が多く含まれていると高い確信をもって判断

②囚人からスクープ記者への転身劇

これは素晴らしいエピソード。記者という仕事がもつ不思議な魅力の一つ。

–インタビューしている間、私はかすかながら力関係の変化をたしかに感じ取った
–彼が言いたいことを頭で整理し、失言しないよう慎重に言葉を選んでいるのがわかった
–私はそうした意味ありげな沈黙を追い、真実を探し求め、自分の周りの世界に秩序をもたらす力を得たように感じた
–過去の経験がいまの私をつくっている。私は刑務所のにおいも、囚人たちが絶えず感じている空腹のつらさも知っている
–そういった過去があるからこそ、私は誰に話を聞けばいいか、誰なら口を開いてくれるか、どうやれば真実に迫れるかを知っている

③コンプライアンス全盛時代は無菌過ぎる

環境に違和感を抱く人も増えている。

ーSNSでは、匿名性を盾に心理的安全性などどこ吹く風、聞くに堪えない罵詈(ばり)雑言が飛び交う
ー言論空間の分断という現実を前に、表の世界のみを無菌状態にするかのような風潮をどう考えればいいのだろう。パワハラ回避が優先され、上司が厳しく指導してくれずに不満を持つ若者の「ホワイト離職」も、無菌状態の不自然さへの抵抗と言えまいか

④財政難メディアが賄賂で操られ始めた?

これは危惧されるべき事態です。

ー政府が資金不足に直面するメディアの統制を強化し、中国が影響力を拡大している
ーパプアでは記者は最も低賃金の職業のひとつで、チョイ氏は「所属する組織から十分な報酬をもらえなければ、賄賂を受け入れやすくなる」と警鐘
ー財政難にあえぐメディアが、情報操作を図る外国勢力の影響工作の対象になると懸念する声も

⑤「世界一の富豪」を誰も止められない

世界一の富豪であり、最多フォロワー数を持ち、様々な事業領域に関わる人物には、誰も歯止めがかけられないのが現代社会、と。

-イーロンマスク氏の1億9400万人に上るフォロワー数は驚異的な拡散力をもたらしている。関わる事業領域もテクノロジー、製造、宇宙、防衛と多岐にわたり、多くの政治家は同氏との衝突を避けたがる
-最近、この自称「言論の自由の絶対主義者」に影響力が集中する状況がいかに危険かが浮き彫りに
-2024年の大統領選挙に関する同氏の投稿のうち少なくとも50件(閲覧数は計12億回)は、ファクトチェックにあたる独立組織によって事実ではないことが判明
-マスク氏が22年に440億ドル(当時約6兆4000億円)で買収する以前から、ツイッターは偽情報の発信源だった。同氏がコンテンツモデレーション(投稿監視)の担当者を減らし、英国の極右活動家トミー・ロビンソン氏など以前凍結したアカウントの一部を復活させた結果、極右の投稿やヘイトスピーチ(憎悪表現)が急増
-マスク氏に対しては、自身の企業の取引先や投資家がいさめることができるかもしれない。とはいえ彼らも同氏の才覚を信じており、巨額の投資リターンを失う不安もあってマスク氏を批判することには及び腰

⑥TBS発ニュースサイトの動向に注目

TBSが2年前に立ち上げたニュースサイトが、あっという間に月間2億PV越えのウェブメディアに成長。さらにニーズをとらえて経済分野への進出にあたり、ブルームバーグと提携。このスピード感は、これまでのテレビにはなかったものです。いよいよ本格的なテレビの改革が始まる。

ーネットの世界で既存メディアが強くならないとダメかなと思っている
ー我々の不徳の致すところで、テレビを若者が見なくなり、そこから(多様な意見による)世論形成がしにくくなっている

⑦日テレの出資は、事業シナジーに繋がるか

日テレが収支度外視で出資、本業のシナジーは生み出せるか。そしてこの稟議がどう通ったのか、興味深い。

ー驚いたのはその出資元だ。スタートアップ投資の老舗JAFCOと日本テレビだった
ーJAFCOはVCとしては、よりレイトフェーズでそれなりのサイズになった実績あるベンチャーを支援することが多い。そのJAFCOがメインとなり、ドラマ制作というくくりの中では競合ともいえるテレビ局の日テレが出資をしている
ーたくさん見られたとしても、その収益はどうなのか。TikTokの再生回数あたりに制作者に支払われる広告収入(YouTubeでいうアドセンス)は微々たるものだ

⑧宮崎から広告ビジネスのイノベーション

宮崎から巻き起こるイノベーション。これは広告ビジネスや、店舗型ビジネスの大きなヒントになりそうです。

ー店舗自体を広告媒体として収益を確保し、同社が目指す「洗濯無料化」の実現につなげる
ーアプリを200万件まで増やすことができれば、店舗と合わせ50億円程度まで広告収入を伸ばせるとみており、「洗濯無料」が実現できるという

⑨米スタートアップの倒産件数が急増

これはひどい話。ブームというだけで中身も見ずに乗っかるのは本当にやめた方がいい、という教訓です。

ーこの2年間、存続のためにコストを削り、成長を犠牲にしてきたスタートアップ企業は特に憤りを強くしている
ー「助言の方向性が変わった。(以前は)VC側は、費用がいくらかかろうとも成長し、その後に利益が出るようにすればいいと言っていた」
ー「コストカットで成長を犠牲にすれば、VCに相手にしてもらえなくなるかもしれなかった」
ーブーム期にはVC側が創業者たちにますます大きな出資の受け入れを促し、評価額を膨らませた。「VCと創業者の狙いが必ずしも重なり合わない、常軌を逸した資金調達環境」だった

⑩世論は多数決ではない、という視点

世論は多数決ではない、と。メディアは数に振り回されず、議論すべき公共の問題は何か、にアンテナを張らなければなりません。

ー「公共の問題に関する人々の意見」という要素は共通します。「犬が好きか猫が好きか」という問いに対する回答を集めても世論とはいえませんが、「公園にドッグランを設置することへの賛否」なら世論になり得ます。世論の本質は、単に多数の意見というだけでなく、その公共性にある

⑪人への投資を後回しにしたツケは重い

この記事を読んで、やはり組織は人次第だなと感じます。社内整備を後回しにして目先の仕事を取りに行く急成長のワナに陥った、と。

ー受託案件数が伸びる半面、徐々にスタッフ不足が深刻になり、金融機関経験者などの転職組を受け入れつつ、経験の浅いコンサル初心者も取り込んだ
ー異変は23年春。案件の採択率が全体平均を9ポイント下回る36%へ落ちた。矢継ぎ早の人員補充で教育・研修が追い付かないなど「プロフェッショナル未満」のスタッフが増え過ぎてしまったことが要因だと考えられる

⑫東大鳥海研発ベンチャーが石丸旋風を分析

東京大学鳥海研究室発AIベンチャー、TDAI Labによる分析。ネット上では圧倒的な人気を誇ったかに見える石丸氏だが、実は「ポジティブな情報をネットで見るからなんとなく共感している」という程度の層が多かった可能性がある、と。

ーネット社会を生き抜く上では、情報が表示される頻度に惑わされるのではなく、視点について多様に理解することが重要
ー従来のメディアも、賛成と反対意見を紹介するなど質的公平性に配慮した報道がますます求められる

⑬メディア業界の歴史に刻まれる一歩?

メディアが汗水流して製作したコンテンツによって広告収益を得ているプラットフォーム事業者が、その収益を「基金」としてメディア側へ還元する仕組みはこれまでになく斬新。

ー米グーグルなどが報道機関を支援する基金の立ち上げで合意
ーカリフォルニア州は報道機関の記事を利用するグーグルやメタなどのIT大手に対し、広告収入の一部を「ジャーナリズム利用料」として報道機関へ支払うように義務付ける「ジャーナリズム保護法案」を審議していた

⑭SNS時代に増加する「社会不安症」

適切に他者への興味を示すことが、「不安」を減らすことにつながる、と。

ー自分が他者からどう見えているかにばかり気を取られ、他者への興味を示さないといったことがその一例
ー自分にばかり気を取られずに、好奇心や寛容さ、共感を働かせることにもなる

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