見出し画像

日の丸半導体

今日は本業の半導体について、私の考えをシェアしたいと思います。「テーマは、日の丸半導体は復活できるか?」私の考えをまずお伝えしておくと、その可能性は十分にあると思っています。

半導体製造で世界トップを走るのは、台湾のTSMC(台湾積電路製造)。TSMCのビジネスモデルはファウンドリと呼ばれます。エヌビディアのようなファブレス企業から委託を受け、生産に特化した企業です。ちなみに、ファブレス企業とは、自社で工場を持たずに半導体の設計・企画に特化した企業のことです。

TSMCといえば、熊本に工場ができたことでも話題になっていますよね。第1工場はすでに稼働しており、第2工場も2027年に稼働を始める予定です。この二つの工場に、日本政府は最大で1.2兆円以上の補助を決めました。これに対し、税金の無駄遣いであるとか、日本の半導体メーカーの凋落を示すものだという批判をよく目にします。

しかし、私から見ると、日本の半導体業界にとってはプラスしかありません。TSMCの技術は世界最高峰であり、日本のメーカーは現状では追いつけません。インテルやサムスンですら、かなわない状況です。TSMCを誘致することで、日本は世界最高の技術を直に学べるチャンスを得たのです。

半導体は回路線幅が細いほど性能が高くなります。熊本の第1工場では22~28ナノメートル(1ナノメートルは100万分の1ミリ)の半導体を生産しており、これはスマートフォンのカメラなど多くの電化製品に使われています。今後10年は、この技術が使われ続けるでしょう。第2工場ではさらに細い6ナノメートルの半導体が生産される予定です。

かつて、日本は「日の丸半導体」とも言われ、半導体製造のトップランナーでした。中国や台湾、東南アジアに工場を展開し、日本の技術を広めていったわけです。今は、その逆のパターン。TSMCという「巨人」から謙虚に学べばいいのです。

もう一つ、楽しみなプロジェクトが北海道で進んでいます。半導体ファウンドリの「ラピダス」が、新千歳空港の隣に製造工場を建設中です。生産するのは、AIや車の自動運転に欠かせない最先端の2ナノ半導体。2025年に試作し、2027年の量産開始を目指しています。

実現できるのか、疑問視する声も少なくありません。しかし、私は十分に期待できると思っています。特に大きいのが、IBMと技術提携していること。IBMはコンピューターの会社というイメージがもたれがちですが、実は半導体のイノベーターでもあります。2014年に半導体製造工場を別会社に譲渡しましたが、その後も半導体微細化の開発を続けています。2021年には世界で初めて2ナノ半導体の開発技術を発表しました。

地政学的な観点でも、日本には追い風が吹いています。世界の最先端半導体の9割は台湾で作られ、半導体全体でみても生産量の6割を占めます。台湾有事が起きれば、半導体のサプライチェーンは壊れてしまう。欧米が中国に対抗する意味でも、半導体の生産拠点は自国や日本に分散させた方が安全です。こうした意味でも、日本は重要な拠点となるでしょう。


日本の半導体装置は世界の3割のシェア、素材は5割のシェアです。ここにファウンドリ事業が加われば、世界有数の半導体国になります。当社トナリズムも微力ながら、「日の丸半導体」の復活のお役に立てるよう、全力で頑張っていきます。