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GDPとその推移が「豊かさ」と「経済成長」の指針になる理由。

その国の「豊かさ」や「経済成長」などを論じる際には『GDP(国内総生産)』の数値やその推移を指針とするのが一般的です。

ですが、なぜ、GDPがその国の「豊かさ」の指針となるのか。
また、何故、GDPの推移が、その国の「経済成長」の指針となるのか。

これをきちんと説明できる人は、意外に少ないのではないかと思います。

この記事では、そんな「GDP」とそれに対する『一国の豊かさ』および『経済成長の関係性』などについて、教科書的な計算式などとは違った視点から解説してみたいと思います。

単純にGDPの教科書通りの解説などは、経済学の入門書やインターネット検索でいくらでもヒットすると思いますので、この記事では、あえてそのような視点とは異なるGDPの考え方、捉え方などについて解説していきます。

GDPとその推移が「豊かさ」と「経済成長」の指針になる理由。


一国の「GDP」や、その推移と共に議論されている『一国の豊かさ』や『一国の経済成長』といったものは、それら自体が、その定義などが曖昧なまま議論されている事が多いように思います。

ただ、それらの定義は、そもそもの「GDP」が何を意味している数字なのかをその背景と共に理解できれば、その「GDP」を指針とする『豊かさ』や『経済成長』の定義も併せて理解できることになります。

その上で「GDP」を辞書で引いたり、インターネットで検索した際にダイレクトに出てくる情報(定義)は、以下のようなものかと思います。

GDP(国内総生産)は一定期間内に、その国の国内で産み出された物やサービスの付加価値の合計額である。

引用元:https://ja.wikipedia.org/wiki/国内総生産(Wikipedia)

ただ、完全に前提となる知識がゼロに近い状態から「GDPとは何か」を調べた場合、ここで出てくる『付加価値』とされるものの意味が、おそらく、よく分からないのではないかと思います。

実を言うと「GDP」の理解は、この『付加価値』の定義、範囲、意味合いを完全に正しく理解できれば、それがほぼ100%に近い「理解」に及ぶものでもあります。

その上で、この『付加価値』というのは、端的に言えば、推計の対象となる期間内において、国内で新たに生成された物や、新たに提供されたサービスの「価値」を意味します。

そして、その「価値」というのは、自国通貨建ての市場価値(実際に市場で取引されている金額)によって算定されます。

よって、GDPを推計する対象期間よりも前の段階で、すでに生産されている物(すでに存在している資本)は、GDPの推計の対象となる『付加価値』には含まれません。

そのような「すでに存在している資本」はストック、備蓄、貯蓄、在庫といった言い方もできますが、これらは全て、その対象期間における「GDP」には『含まれない』ということです。

対象期間前からの備蓄・貯蓄・在庫などの「ストック」はGDPには含まれない。


特定の個人や世帯などを対象に『豊かさ』を捉える場合、大抵は。その人やその世帯が所持している資産の有無や、貯蓄(貯金)の大小などを、その指針にすることが多いと思います。

ですが、GDPを指針とする『豊かさ』や『経済成長』においては、その推計期間以前からの資本的なストックなどは一切、その対象には含まれません。

よって「GDP」は、個人や企業を対象とする形で近いものを言うのであれば、個人で言うところの「年収」や、企業で言うところの「売上高(総売上)」に該当します。

よって一国内に保持(ストック)されている金、米ドル、外貨証券などの有無、大小は、少なくとも「GDP」の推計値とは無関係ということです。

ただ、一国の「GDP」が、個人で言う「年収」や、企業で言う「売上高(総売上)」であるとしても、一国のGDPが全国民の年収の合算値、全企業の売上高の合算値にあたるわけではありません。

GDPの考え方は、一国を1つの集合体(組織)とみなすものであり、5000万円分の商品を生産した企業が10人の労働者に300万円(計3000万円)の給与を支払っていたとしても、その企業、個人を併せて1つの集合体と考えた場合、そこから生産された「価値」はあくまでも5000万円となります。

・企業A:5000万円分の商品を生産
・労働者10名に300万円の給与を支給(300万×10名=3000万円)
⇒ 企業・個人から成る集合体から「生産された価値」は5000万円

また、その企業が1000万円分の広告料を広告業者に支払い、商品製造用の部品などを別の業者から500万円で仕入れていたとしても、一国を1つの集合体として考えた場合、そこから生産された「価値」は、やはり5000万円ということになります。

・企業A:5000万円分の商品を生産
・労働者10名に300万円の給与を支給(300万×10名=3000万円)
・広告業者に1000万円の広告料を支出
・商品製造用の部品代金として500万円を支出
⇒ 企業・個人から成る集合体から「生産された価値」は5000万円

つまり、一国を1つの集合体と考えた上で『最終的な消費財』や『消費サービス』に該当するものの価値(市場取引価格)がGDPの対象になるということであり、それに先立つ人件費、広告費、原料や中間財の仕入れ費用などは、いずれもGDPには計上されないということです。

最終的な消費財・消費サービスの価値(市場価格)の合計額がGDPの対象となる。


ただ、国内で生産された物の中には、その期間内に「売れるもの」と「売れ残るもの」があるはずです。

これもGDPを捉える上で重要なポイントとなりますが、GDPの計上においては、ひとまず、その対らも期間内に生成(生産)された物の価値は、その全てがGDPの推計対象となります。

そして、その「価値」は生産に要した費用ではなく、実際にその商品が市場で取引されている価格が基準となるため、極端に言えば、その期間内に生産された商品がほとんど売れずに売れ残っていても、それらも全てGDPの推計対象となります。

ただ、全くと言っていいほど市場で取引されたことがないような商品は「市場価格」にあたるものが存在しないことになるため、そのような商品は生産に要した費用が、その商品の「価値」になりますが、いずれにしても、それもGDPに推計されます。

つまり、GDPの推計においては、原則として、実際に生産された商品が売れたかどうか(消費されたかどうか)は無関係に、その全てがGDPに計上されていくということです。

生産された商品の「消費の有無」はGDPの推計とは無関係。


ただ、1年間などの「一定期間のGDPの推計」において言えば、その間に次々と消費されるような「売れ行きの良い商品」は、その分だけ、その期間内に、より多く生産されていくことになります。

逆に「全く売れない商品(全く消費されない商品)」を継続的に生産し続けるような企業は、基本的には存在しません。

よって、実査いに生産された商品が「消費されるかどうか」は、その商品をストック(在庫数)で捉える視点においてはGDPを左右しないものの、一定期間中における生産のフロー(生産のサイクル・生産量)で捉える視点において、GDPを左右する余地があります。

ゆえに、静的な視点(最終的なストックの有無を捉える視点)では『消費の有無はGDPとは無関係』ということになりますが、動的な視点(消費と生産のフローを捉える視点)では「消費」が旺盛であるほど、その間のGDPも大きくなります。

1年間などのサイクルでGDPを推計すれば、その間の動的なフロー(消費に伴う形で増加する生産)の部分が、最終的なGDPの推計値に寄与していく形になるということです。

消費が旺盛であるほど「フロー」の視点において生産量も伸びていく。


よって、GDPは一国全体の傾向として「消費」が旺盛に行われる国であるほど、必然的にフローの回転(消費・生産の回転)も速くなり、その分だけGDPが伸びていくようになります。

つまり、より多くの「生産」を行っている国であるほど、動的な「フロー」の視点において、旺盛な「消費」が伴っているとみなすことができます。

そのような「生産量」および「消費量」の大小や、その増加傾向は、そのままGDPの推移に現れるため、その状況を踏まえて『豊かになっている』『経済が成長している』という見方をすることができます。

逆に、どんなに多くの資本的なストックを豊富に保有していても、国内の「消費」が冷え込めば「生産量」も減少することになるため、そのような国のGDPは伸びが悪くなります。

そのような状況にある国は、まさに「不景気」とみなされる形となると共に、GDPの減少傾向から『経済成長が鈍化している』という見方になるということです。

GDPの増加は消費量・生産量の増加を意味する。


よって、賃金労働者や株主などの資本家階級が全般的に「消費」を控え、所得や収入の大半を「貯蓄」に回すようになれば、当然、その国のGDPは伸び悩むことになります。

ただ、企業をベースに考える場合、個々の企業が売上や利益に対して、どれくらいの割合で賃金を支給し、どれくらいの割合を株主への配当に回すか、といった部分は、とくにGDPに直接な影響は及ぼすわけではありません。

つまり、個々の企業が賃金を削減しようと、利潤の大半を株主への配当に回そうと、そのほとんど一切還元せずに企業の資本としてストックしようと、それ自体で直接的にGDPは変動しないということです。

ですが、これも動的なフローの視点においては、個々の労働者に対して、より多くの賃金を支払うほど、労働者階級全体の消費が旺盛となれば、それがGDPを押し上げる要因となります。

つまり、企業単位でも、個人単位でも、賃金、投資、消費などの支出を控え、利潤や所得の多くを内部留保や貯蓄(貯金)に回すようになるほど、その間のGDPの伸びは鈍化することになります。

一定範囲の利潤の内部留保や所得の貯蓄が行われなければ、長期的な資本形成が必要となるような技術革新などに支障が出るという議論もありますが、原則的には利潤の内部留保、貯蓄率などが低いほど、その国の消費量は増加するため、短期的な視点で言えばGDPは伸びる形になるということです。

企業の内部留保、個人の貯蓄率が大きくなるほど「消費」は冷え込み、GDPは伸び悩む。


よって、一国における「好景気」「不景気」および、GDPを指針とする「経済成長」などは、一国内における消費量と生産量において論じられるものとなっています。

また、その期間内における「株式投資(および株式の売却)」や「外貨購入(および外貨の売却)」などは、とくに「生産」を伴っていないため、いずれも直接的にはGDPに影響しません。

株式を売却した売却益や、株価の上昇に伴う形で株式の売却によるキャピタルゲインを得る人が増えれば、それが消費を増加させるかもしれませんが、それはあくまでも間接的な影響の範疇となります。

つまり、GDPによって読み取れる「豊かさ」は、国内の企業や個人が保有する資産の有無、その大小とは実質的に「無関係」ということになります。

その国のGDPからは、その国の企業や個人の資産状況などを読み取ることはできないため、そのような意味合いの『豊かさ』は、GDPの推移から捉える『豊かさ』とは無関係ということです。

名目GDPと実質GDP。


よって「GDP」は、その国の内部(国内)において、どれくらいの消費・生産が行われたのかを、その国の通貨建て(自国通貨建て)で推計し、その推移を捉えることで、生産量・消費量を指針とした自国経済の成長率などを読み取ることが出来ることになります。

その上で『名目GDP』と呼ばれるものは、各年度ごとのGDPの推計額をそのまま示すもの(下記図の黒線)。

内閣府‘「国民経済計算」より作成

対して、特定の年度における物価水準を基準とした物価変動の影響を取り除いたものが『実質GDP』と呼ばれるものになります(上記図の赤線)。

物価水準の変動は、実質的に「物に対するお金の価値の変動」を意味するものになります。

よって『お金の価値が一定ではない』という前提の上で、そのような「お金の価値の変動分」を除外した純粋な経済成長(生産高・消費高の変動)を『実質GDP』の方で捉えているということです。

経済成長を捉えるためのGDPは「自国通貨建て」でなければならない理由。


その上で、日本のGDPの推移を示す際に、日本のGDPの推移を「ドル建て」で計算し、ドル建てのGDPの推移を示した上で「日本経済は成長していない」と論じる人がいますが、これは「大間違い」なのが実情です。

各国の名目GDP(米ドル建て)の推移
出所:国際通貨基金(IMF)より

ここまで解説を進めてきたように、GDPは自国の通貨建て(日本であれば円建て)で、その期間内に生産された物や提供されたサービスの合計額を推計するものに他なりません。

日本国内において「ドル」で消費を行っているような人は基本的には存在しませんので、日本のGDPであれば、それはあくまでも「円建て」の消費および生産を推計した『結果』ということです。

当然、日本で販売されているあらゆる商品、あらゆるサービスは常に為替レートの影響を受けた上で、その価格(物価)が決まっていますので、その物価を踏まえた消費・生産の結果が「GDP」ということです。

そんな消費・生産の結果から推計されたGDPをドル建てに計算し、円安の場合などに「日本のGDPは減少している」と論じるのは『GDPの意味合い自体を理解していない証拠』と言わざるを得ません。

例えば、以下は期末時70円台の円高だった2011年と、期末時140円台の円安だった2023年の各年度ごとの円建ての名目GDPおよび実質GDPと、それぞれを期末時のドル円レートでドル建てにした実質GDPの一覧になります。

データ出所:内閣府(https://www5.cao.go.jp/)「GDP統計・長期経済統計」より作成

名目GDP、実質GDP、共に円建てであれば、円建てのGDPは増加していますので、この間は「円安の進行と共に経済成長が伴っていた」というのが適切なGDPの推移から捉える「経済成長」の見立てです。

ですが、円高だった2011年(期末時76.5円)と、円安だった2023年(期末時140.9円)のドルレート換算の実質GDPは、2011年から2023年にかけて2.74兆ドルのマイナス(42.1%減)となっています。

このように「ドル建て」でGDPを対比すれば、このように、あたかもGDPが減少し、日本経済がこの12年ほどで4割ほども衰退しているように見えてしまうことになります。

外貨建て(ドル建て)によるGDPの減少は「日本経済の衰退」を意味する?


ただ、上記の一覧を見れば一目で分かるように、2011年の70円台の円高水準から、2023年の140円台にまで円安が進んでも、物価指数は11.7%ほどしか上昇していません。

つまり、ドルに対する円の価値が40%近く減価していても、日本国内の物価水準は11%ほどしか上昇していなかったということです。

その物価上昇率を踏まえた実質GDPが、実際に「497兆円」から「529兆円」となり、6.5%ほど上昇しているわけですから、このGDPの推移から読み取れることは『2011年から2023年にかけて日本経済は6.5%分、2011年より多くの消費と生産を行った』ということに他なりません。

GDPの推移から経済成長を論じる場合においては、これを一般的に『6.5%に相当する経済成長率』というわけですが、各年度のGDPを期末時のドル建てに換算してしまうと、円安が進行している分、GDPは減少しているように見えてしまいます。

ですが、物価水準は11%しか上昇しておらず、その物価上昇分を踏まえた実質GDPも上昇している以上、日本国内において『2011年より2023年の方が6.5%分多い消費と生産が伴った』という事実に変わりはありません。

全くもって、国内における消費量、生産量が42%分も減少したという事実は存在しないということです。

GDP = 国内の「消費量」および「生産量」の推移から経済成長を捉える指標


ドル建てで換算した場合のGDPの減少は、厳密に言えば『ドル建てで換算した場合の消費額および生産額が2011年より42%減少した』ということを意味するものであり、それ以上でもそれ以下でもありません。

ただ、GDPはあくまでも『国内の生産量・消費量から、その国の豊かさと経済成長を捉える指標』であって、少なくとも、ドル建てによる生産額・消費額の推移を捉えて経済成長を論じるような指標ではありません。

消費の「量」や生産の「量」こそが『豊かさ』や『経済成長』の指針なのであって、ドル建てによる消費や生産の「金額」にあたるものは、あくまでも、その時点における数字上の表示でしかないものです。

その国の国内で、どれだけの食糧、財物、サービスなどが生産・提供され、消費されたのかの「総量」こそが、GDPを介して捉えることのできる、その国の「豊かさ」や「成長率」なのであって、それをその時点の「ドル」に換算しても、何の意味もありません。

消費量、生産量の総量から、その国の豊かさ、経済成長率を捉える上で、GDPをドル建てにして「経済成長率がマイナスになっている」というのは、明らかに合理性に欠けるGDPの捉え方でしかないということです。

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ドル建てによる日本のGDPと経済成長が無関係という点については、以下の記事でも詳しく解説していますので、こちらも併せて参考にしてください。

輸入・輸出とGDPの関係


また、GDPはあくまでも国内の生産量、消費量が反映される指標のため、原料や製品を「輸入」する場合には、その輸入に要した支出分が「マイナス」になります。

円建てで単価100円の製品を輸入して国内で150円で販売した場合、国内で生成された「価値」は差額の50円のみであり、最終的にGDPは増加しますが、その輸入時点の支出額は「マイナス」になるということです。

もちろん、輸入の対象となるのは完成された製品だけではなく、特定の製品を生産するための原料や燃料なども輸入の対象となります。

この「輸入」に対して「輸出」の方は、国内で生産した製品を海外に販売する形となるため、これは国内でその製品が消費される場合と同じようにGDPの増加に寄与します。

国内の需要量を遥かに超えるほどの需要が海外にあれば、そのような海外需要のある製品はどんどん輸出される形となり、それが全てGDPの増加に繋がります。

国内では全く消費されないような製品であっても、海外に需要があれば、そのような製品を生産し、国外へ輸出していくことでGDPが伸びていく形になるということです。

国外の需要・市場を対象とした「輸出」でもGDPは増加する


よって「輸入」は、輸入における支出分がGDPから減算される形となり、対する「輸出」は輸出高がそのままGDPの増加に繋がる形となります。

ただ、これは決して「輸入」が、その国の経済においてマイナスになるという話ではありません。

為替レートの状況によっては、国内で1から製品を生産するよりも、国外から輸入する方が企業にとっては割安なコストで必要な原料や製品を調達できるケースなどが実際にありえるからです。

ですが、そのような原料や製品は、為替レートの変動状況によっては、例えば円安の進行によって、それを輸入で賄うよりも国内で賄うようにした方がプラスになっていくケースも考えられます。

そのような形でドル円の為替レートに影響を受ける原料や製品などの中には「円安」が進行していくことで、国内の原料や製品への代替が行われていくものがあり、そのような原料や製品の割合は円安が進行するほど多品目となっていきます。

これが意味することは、まさに「輸入(支出)の減少」に他なりません。

そして、そのような原料や製品の輸入が減った分だけ、国内の事業者は国内産の原料や製品を取り扱うようになるため、結果的に国内の消費者は国内産の商品を消費していく形になります。

それは必然的に「国内における原料供給業者」や「国内製品を取り扱う国内業者」の事業所得(売上)の「増加」に繋がるため、それらが総じてGDPを押し上げる要因となります。

一般的に「通貨安(円安)」が、その国における国内の経済成長に繋がると言われているのは、このようなメカニズムがその要因の1つになっているということです。

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通貨高(円高)が自国経済の成長に不利な要因となり、通貨安(円安)が自国経済の成長に有利な要因となる理由については、その傾向を裏付けるデータと併せて以下の記事で解説していますので、こちらも併せて参考にしてください。

政府支出とGDPの関係。


また、政府が企業や国民に支給する「補助金」「給付金」などもGDPを押し上げる要因となります。

そのような政府からの補助金や給付金そのものがGDPに加算されるわけではありませんが、それらによる消費が行われた場合、その消費分はそのままGDPの増加に繋がります。

極端な話、政府が多額の給付金を多くの国民に給付し、それら全てが消費に回った場合、その給付額分がそのままGDPの増加に繋がるということです。

これを「経済成長」と言えるのかどうかは議論の余地がありますが、GDPを表面的に捉える視点の上では、GDPの増加は「経済成長」とみなされます。

つまり、政府が積極的に補助金や給付金などの支出を増やせば、基本的にはGDPが増加する形となるため、GDPで捉える上での「経済成長」に寄与していく形になるということです。

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経済学者の中には、シンプルに政府からの補助金や給付金を増やして、消費を刺激する「ベーシック・インカム」などの制度が日本経済にとってプラスになると主張している学者も存在します。

もちろん、そのような政策には「財源の有無」「財政破綻リスク」「インフレリスク」などが反対意見として出ていますが、その議論の理論上の決着は実質的に、まだついていません。

ただ、日本における財政リスクやインフレリスクを、過去の歴史上で見られたような各国の財政破綻やハイパーインフレーションなどと同じ視点で論じている人も多いので、これは明らかに不適切な議論だと思います。

そんな日本における財政リスク、インフレリスクを、歴史上に見られた各国の財政破綻やハイパーインフレーションを踏まえて考察している記事もございますので、もし興味があればこちらも併せて参考にしてみてください。

・日本経済の財政リスクを財政破綻国の事例から考察する(準備中)
・ハイパーインフレ―ションの歴史と日本経済のインフレリスク(準備中)

GDPとその推移が豊かさと経済成長の指針になる理由。まとめ。


以上、GDPとその推移が一国の「豊かさ」や「経済成長」の指針となる理由について、あえて教科書的なGDPの計算式などとは異なる視点から解説させて頂きました。

GDPの算出方法や、その原則的な考え方などは、経済の教科書などはもとより、インターネットを検索するだけでも関連する情報はいくらでも出てくると思います。

ですが、そのような教科書的な説明では、いまひとつ読み取りきれないようなGDPの考え方、捉え方を、以下のような視点から解説させて頂きました。

・GDPは個人で言う年収、企業で言う売上高(総売上)に該当
 ⇒ 全ての個人・企業を1つの集合体として生成された価値を計上する
・期間内に生産された物は売れ残りも含めて全てGDPの対象となる
 ⇒ 期間内に生産された商品の価値は消費の有無を無関係に計上される
・期間内に高い頻度で消費される商品はそれだけ多く生産される
 ⇒ ゆえに「GDPの増加」は「消費量と生産量の増加」を意味する
・企業の利潤に対する賃金や配当の割合は直接的にはGDPに影響しない
 ⇒ 賃金や配当を受け取った個々の消費量がGDPに寄与する形となる
・個人単位でも企業単位でも投資、消費の抑制はGDPの伸びを鈍化させる
 ⇒ 企業の内部留保、個人の貯蓄率が低いほどGDPは増加傾向となる
・輸入は国内消費分はGDPに寄与し、輸入時の支出はマイナスとなる
 ⇒ 輸出は世界市場の需要と消費がGDPの増加に寄与する
・給付金などの政府支出は消費増加分がGDPに寄与する
 ⇒ 政府支出の増大によって名目的には経済成長を実現できる

併せて、以下のようなコンテンツもございますので、もし興味を持たれたなら、お読み頂ければと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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