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いきものもけものももののうち Vol.11

お中元と云えば
水ようかん。

いまもそんな風情なのだろうかわからんが
昔はだいたい水ようかんか素麺だった。
暑い夏に涼しげなCMを見て
さぞかしみずみずしくつるんと美味しいものだと思い
食べてみた幼少期のショックたるや。

わたしはそもそもあんこはそこまで好きではなかった。
生クリームもだめだったのだが
あれは某トラウマの所為なので置いといて、
小豆。
わたしが食す和菓子はだいたい白あんばかりだった。

甘いものがそんなに好きではない母だが
それでも結構手作りのお菓子を作ってくれた。
ゼリー、クッキー、ドーナツ、ケーキ。
ケーキに至っては、
向かいに越してきたフランス料理店の一家と仲良くなった際、
なんとレシピをもらって当時まだケーキ屋でも珍しい
レアチーズケーキを完コピしたこともあった。

そんな母だが、和菓子はあって白玉ぐらいで
まあほぼ登場することはなかった。
母は作りはするけど自分は食べないので
結局わたしが責任を持って食することになる。
と云う一連の流れから
お中元などの戴き物など
開封すればひとりで食べきらねばならない使命を追うのだった。

そう、水ようかん。
水ようかんがお中元として我が家にやってきたのだ。
未知であったのとCMの影響でわたしはかなりの期待を膨らませていた。
当時よく母が作る牛乳寒天やらコーヒーゼリーなんかの口当たりを想像していたからだ。
もちろん全部食べる!開けるね!
と開封して一口・・・

ざらり

舌にあたるざらり感。
まったりとしたのどごし。
思ってたつるん感じゃない!

案の定食べきれず、たいそう怒られたのであるが、
まあ個包装であった為、
お隣の洗濯屋のおばあちゃんちへと流れていったのであった。

確かにね、
小豆が好きでなくてどっちかっていうと粒よりこしでも
あれは苦手かもしれないな
と今は懐かしく思う。

今は全然、美味しい和菓子屋の小豆は美味しいし
ってのも知ったし、
ゼリーみたいにつるんと喉がさっぱりすることを望まず
ちゃんとお茶なり珈琲なりといただくので
じっくり和菓子を味わえる大人になった。

てなことを思い出しながらドラッグストアでリーズナブルに入手した
かつてCMでよく見たあの水ようかんを久々に戴く
そんな初夏であった。

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