読書:『岸辺の旅』ー湯本香樹実
湯本香樹実作の『岸辺の旅』を完読しました。
三年間の長い間失踪していた瑞希の夫がとつぜん姿を現す。ただし、夫の優介は「俺の体は、とうに海の底で蟹に喰われてしまったんだよ」と曖昧なこと言う。瑞希は次、旦那が導く海の方向へ旅にでていく。神秘的な哀しく深い夫婦の間の愛を表す物語。
徐々に、方向感覚はなくなった。ある時は海辺を、あるときは山里をとさまよううちに、椰子の木が湿っぽい風に吹かされる火山の麓にいたかと思うと、忘れられたような雪国の宿にいる。時も場所もほどけてしまって、脈絡を失くしていった。優介は家に戻るまで三年かかったと言ったが、私はもう生まれてから三十八歳の今までずっと、水の音を聞こえる宿で眠りながら旅し続けているような気がした。
湯本さんみたいに、美しい文を書けるようになりたい!
この作品は全体的にキレイに書かれています。幾つか食事を送るシーンがありますが、食べ物の盛り合わせの説明以上、食べてる間のダイアログや無言の対応で、登場人物の間に長く付き合ってきた夫婦の愛情が伝わります。平穏でもある、哀傷でもある、複雑な何か所のシーンが印象的でした。
最近の私は日本語の自習が乱れていて、noteにあまり投稿せず、書くときは拙い文書で、自分から残念な気持ちでいます。こういうときにこんな風に綺麗に仕上げられた小説を読むのがいいですね。少し頑張れるようになった気がします。
再読する予定です。