島の卒業式と子どもたちの入学進級
竹富島にやってきてから、卒業式を見たのは3回目だった。こちらの学校行事は、島民が気兼ねなく参加できるものが多い。コロナ禍で縮小傾向にあるものの、今回の卒業式は学校の保護者であれば参加できるものだった。
大きな学校だと、卒業式に参加する在校生は5年生のみだったと記憶している。こちらは小中学校合わせておよそ30名の小規模校なので、在校生は全員参加するし、私のように卒業生がいない保護者でも参加ができる。
涙涙の卒業式
今年は中学生4名、小学生2名が卒業した。人口350名の島には、高校がない。フェリーで15分の石垣島には3つの高校がある。15歳で、ほぼ確実に親元を離れて寮生活を送ることになる。4人の中3生は、近くの石垣島へ進学するのかな、と思っていたが、幼い頃から親戚のように仲良く一緒に過ごしてきた4人は、皆別々の学校へ進学すると知った。沖縄本島の学校へ進学した子もいる。
「まさか沖縄本島へ進学したいと言うとは思ってなくて、調べたり見学に行ったり大変だったよ〜」と、ひとりのお母さんから話を聞いた。
大変だっただろうし、一人目の娘を遠い飛行機や距離へ送り出すのは寂しさや不安な気持ちもきっとあると思う。それでも、子どもの決めたことを尊重し送り出す姿には親としての誇りや強さを見たような気がした。
そして、卒業式では6名の子たちが一人一言、これまでの学校生活や感謝をスピーチした。体育館の舞台で、一人ずつ。話しながら、想いが溢れて涙が止まらなくなる子もいる。私も、泣いた。周りからも涙をすする音が聞こえた。同じ敷地内の中学校へ進学する小6生も感極まって泣きじゃくっていたし、15年分の島への感謝を話す中3生には、毎年、感激する。
たくさん目にかけてもらい、愛情をもらい、旅立つ。でも、帰ってくる場所がある。帰る場所があるのは、きっと大きなエネルギーになるのだと思う。
卒業式が終わって外に出ると、保育所の子たちや先生が「おめでとう〜〜〜!!!」と、待っていてくれる。保護者や在校生で校庭に花道を作り、卒業生を送り出す。
わが家の長男も、4月に小6になった。来年は同じように舞台で話すのか? とふと気づくと、こちらまで緊張してくる。
今年は島を離れる家族や先生も多くいた。そのたびに、「今日◯時の船で△さん家族が出発します」とLINEにメッセージが入る。港へ駆けつけると、多くの島の家族が集まり、みんなで船が見えなくなるまで手を振る。太鼓や小さなドラのような楽器を鳴らす。毎年3月の風物詩だけれど、寂しいな。今年は特に、私たち家族と同じタイミングで島へやってきた先生家族が島を離れた。
お父さんは息子の担任、娘さんは息子たちのクラスメイト、息子さんは娘の同級生……奥さんは、同志のように感じていた。文字にするとややこしいけれど、つまり家族全員、何かしら関わりがあった。同じ地域の一員として地域行事を共にすることもある。学校の先生と家族ぐるみで関わり、お互いの家庭の方針から学校の教育について話せるのは、安心感の大きさがこれまで子どもを預けたり送り出したりした中でも桁違いに大きかった。
先生は子どもたちの自主性を大切にしてくれた。海洋教育サミットや学習発表会の準備など、放課後も集まって主体的に取り組む姿にわが子ながら感心した。長男は、読書感想文で八重山地区で入賞し、さらに沖縄県でも入賞して、大きな自信を得たようだった。家にいるときはのんびり省エネに見える子どもたちで、私が「◯◯行こうよ」と誘ってもあまり乗ってきてくれない。でも、学校でならば、色々な挑戦をする。なんだか健全だなあと子どもたちを眺めていると感じる。みんな、すっごく子どもらしい。
娘の入学式で夫がスピーチを
わが家の3番目の末娘は、保育所を卒所し、小学校へ入学した。長男、次男、長女。ついに3人が小学生になった。新1年生は、3名。入学式にも卒業式と同じく、在校生と地域の皆さんが集まった。
3人の子どもたちが小学生になり、子育てをはじめてから10年も経ったことに我ながら驚きを隠せない。自分の中身は大学生くらいから何も変わってないのに……いや、中学生くらいから変わっていないかもしれない。子どもたちの新年度とともに、私も心機一転、気持ちを新たに引き締めていきたいなと、思う。
入学式には、直前に思いついて義母に来てもらった。子どもたち3人の初登校を見届けてもらい、3人でランドセルを背負う子どもたちを見送る。
「行ってきまーす! 学校、すっごく楽しいよ」
そんなふうに話していた娘。でも、一週間経って金曜日になると
「今日はかっか(お母さん)といっしょがいいなあ……」とぶつぶつ言い始めた。やれやれ、と思い、一緒に教室まで送って行った。
今年もどんな1年になるのか。アカショウビンの鳴き声が響く竹富島の春。私もなんだか、新年度に心が弾む。
【講談社の子育てメディアで連載しています】
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