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失敗が次々と重なった日

実家帰省の最後の夜は、父が焼肉屋を予約してくれた。近所に夫婦で暮らしている、私の2歳年下の弟も誘った。18時半に予約をしたから、現地集合ね、ということで声をかけていたらしい。

18時半ちょうどにお店に着いて、「すみません、予約したオガワ(私の旧姓)です」と伝えると、「えっ、すみません……予約は18時以降とっていないんですが……。オガワ様の予約も入っていません」と戸惑う店員さん。

待合スペースには大勢の人が、そして私の後ろにはお腹を空かせた子どもたちが待っている。駐車場に車を停めて、遅れて入店した父に状況を伝えると、「予約したはずなんですが…ちょっと待ってくださいね」と、スマホで何やら探している。

どうやら、WEBから予約したらしい。「こちらが予約画面なんですが。」と、父がスクリーンショットを店員に見せる。店員はじーっと眺めて一言。

「……これ、うちの店じゃないですね」

予約した店が、市内の系列店でもない、全く別の焼肉店だった。弟はまだ来ていない。

「今からここに並ぶとかなり時間かかりますよね?」「そうですねえ。18組お待ちなので……」「わかりました。ありがとうございます。」

いくら春休み中とはいえ水曜の夜に18組待っている焼肉屋、強いな……と思いながら、予約している(ことになっている)店舗へ私が電話してみると、しっかり予約ができていた。父が予約をしようとしたところ、なぜか違う店舗に予約をしてしまっていたらしい。こういう失敗をするの、珍しい。

「すみません、ちょっと勘違いして違うお店に来てしまって、今から向かっても大丈夫でしょうか」と訪ねると「大丈夫ですよ!6名様分お席ご用意しておりますのでお待ちしています」との返事。なんとも安心感の持てるさわやかな返答をもらった。

弟に場所の変更を伝えようと電話をして「今どこにいるの?」と聞くと「もう、店の前だよ」と言う。が、姿が見えない。「森野の店のとこにいるよ」「え、いまいるの、成瀬の店なんだけど」「え?森野じゃないの?」「まあいいや。かくかくしかじかでこの店に来てくれる?」と、予約した店舗を伝えた。

そもそも、父と弟が向かっていたのが、系列の別店舗だったのだ。仮に、「焼肉ムーン」という店舗があったとして、父は「焼肉ムーン 成瀬店」弟は「焼肉ムーン 森野店」にいた。「牛角」のような有名チェーン店ではなかったため、父も弟もひとつしか店舗がないと思い込んでいたらしい。

店が間違っていたから、それぞれ別の場所から予約している店舗へ向かうことになったが、正しく予約ができたとしても、すでにすれ違っていたのだった。大人が慌てる姿を見て、子ども達も笑っていた。

少し前に、昨年大ブレイクした鈴木のりたけさん作の絵本「大ピンチずかん」の特集番組を父と子どもたちと見ていたばかりだった。

鈴木さんの、なんでも面白がる観察眼があったからこそ生まれた絵本。大ピンチの大きさや対処法などがユーモアたっぷりにまとめられている本で、「ピンチって面白いね〜」なんて子どもたちと話していたのだった。

私も父も、失敗を恥ずかしがるタイプで、普段ならばソワソワ、イライラしていたかもしれない。でも、この番組を見ていたから、「なんか色々なピンチが重なってたね!」「面白かったね」「まさかじいじと〇〇(私の弟)の間でも勘違いが起きてたなんてね〜」と、起きた出来事を楽しみながら、美味しく焼肉をいただいたのだった。そうそう、大人だって間違えるんだよ。子どもたちは、間違いに優しい人になっていると思う。

3月27日の日記


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かたおか由衣
最近、活動名を「片岡由衣」から「かたおか由衣」に変えました!!






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