バレエ漫画原作9(1はこちら↓)

マサキ:主人公、21歳、大学4年生、金髪、182cm
ジン:マサキの親友、21歳、大学4年生、173cm
ナナ:女子高生、17歳、168cm
1番モエト:新国立入団審査参加者、色白の美少年、18歳、171cm
10番カナデ:新国立入団審査参加者、おとなしい印象の少女、18~19歳、165cm
高槻:強面の50代男性、新国立劇場バレエ団幹部、アメリカンバレエシアターで指導経験あり
リクト:背の高い30代男性、新国立劇場バレエ団関係者、審査員

「セリフ」【モノローグ】≪あぶく≫
00
@早朝・ハイエースの車内
ジン
「引っ越し当日!」
モエト
「誰だコイツは…」
マサキ
「俺の友達。俺免許無いからさ。」
「感謝しろよ。」
モエト
「…ありがとうございます。」
モエトを見るマサキ
≪まあ…でも…≫
車窓から外を眺めるモエト。大きなボストンバッグ一つ。
01
マサキ
≪こいつ、電車でも来れるくらい荷物少ないんだな…≫
モエト
「なんだ…、見るなよキモいな」
ジン
「ついた~!」
===
@家の外観

こんな感じかな…

ジン
「ベッドと洗濯機・冷蔵庫は午後に届くんだっけ」
マサキ
「そうそう。ジモティーで、三つ合わせて1万5000円。いいだろ?」
「モエトのベッドは?」
モエト
「ん、俺も同じようなヤツが届くよ…。」
ジン
「さあ~中に入ろうか。」
扉を開ける…

02
ジン・マサキ・モエト
「おおおおお~✨」

6畳+4畳+キッチン風呂トイレ

ジン
「綺麗で広いじゃん!」
モエト
「内見の時より綺麗になってる…」
マサキ
「クリーニング入れてくれたんだな。」
ジン
「さあ…、荷物が届く前に…、」
「マサキのお母さんが授けてくれた三種の神器で掃除だ!」
ウタマロ・鏡のコーティング剤・バルサン
===
汗をぬぐう軍手をしたマサキ
「さて…」
03
マサキ
「だいぶ綺麗になったな。」
ジン
「バルサン焚いた後、数時間外に出ないといけなくて焦ったけど…」
マサキ
「俺の荷物も入ったし…」
ピンポーン
マサキ
「はーい…って」
ぞろぞろと大きな荷物を抱えて配達員が入ってくる。
マサキ
「モエト!お、お前それ…。」
モエト
「うん。シモンズベッド。」

超高級ベッド

マサキ
≪そ、それ100万とかするんじゃ…?≫
モエト
「…母のお世話をしてくださってる方から頂いたんだよ。」
「色々思うところもあるけど…、それが俺の悩みの一つ。」
マサキ
≪…≫
モエト、配達員さんに声をかける。
「あ、そこで…」
===
ジン
「ふううう~~~~」
04
ジン・マサキ・モエト
「お、終わった~」
マサキ
「まじでありがとう。ジン。これから焼肉奢らせて。」
へろへろのジン
「いえ~~~~~い」
マサキ
「お~い、焼き肉行くぞ~モエト~」
モエト
「あ、ちょっと待って。」
小さい仏壇のようなものを段ボールの上に組み立て、手を合わせるモエト。
モエト
「ん。行こ。」
===
@焼き肉屋
ジン・マサキ・モエト
「う、うめええ」
ジン
「二人はビールも白米も無しなんて、お可哀そうに~。」
マサキ
「だろお~~?涙」
もくもく脂身の少ない肉を食べるモエト。
ジン
「モエトくんは、良い食べっぷり!」
モエト
「…」
05
モエト
「背が伸びないのが悩みなんだ。タンパク質とカルシウムは摂るようにしてる。」
ほほ笑むジン
「偉いね。」
マサキ
「そういやジン、大学のことなんだけど…」
ジン
「何々?」
楽しそうに話すマサキとジンを見つめながら、黙々と食べるモエト
===
@家に帰ってきたマサキとモエト
マサキ
「つ、疲れたな…」
モエト
「うん。流石に…。」
フラフラと立ち上がり、仏壇の前で手を合わせる。
モエトを見つめるマサキ
「…」
モエト
「お前もやるか?徳は積んだ方が良いぞ?」
マサキ
「いや、俺はいいや…」
モエト
「悩みがあったらすぐ言えよ?共有することで、楽になる。」
マサキ
「…」
06
マサキ
「俺は…、言いたくなったら言う。」
「言いたくないときは、言わない方が楽な時もあるな…。」
ちょっとハッとした顔をするモエト
「…」
マサキ
「シャワー先行くぞ?」
モエト
「うん…」
===
@新国立劇場・地下練習場
ナレーション
【10月1日ーー】
リクト
「皆様お集りいただき、ありがとうございます。」
「今年の新国立劇場バレエ団団員審査の合格者はーー」
07
リクト
「7名でした。うち、男性は3名です。」
ずらっと並んだ7人のカット
マサキ
≪男性は5人中3人も受かったのか…。≫
にやにや笑うリクト
「どのバレエ団も男性不足に悩んでいます。うちも無論そう。」
「ということは…女性よりも、男性の方がレベルが低いということはままある。」
マサキ
≪ぐ、ぐうっ!≫
リクト
「うちのバレエ団には階級があり、」
「上から
・プリンシパル←超主役級。
・ファーストソリスト←主役級
・ソリスト←ここからソロの役を貰える。
・ファーストアーティスト←以下は群舞が多い。
・アーティスト
と分かれている。」
リクト
「これから、役職を発表していきます。」
静かなざわめき…
08
リクト
「田中めぐみさん、ファーストアーティスト…」
呼びあげた後、一人ひとりにプリントを配るリクト。
マサキ
≪うおおお、緊張する…≫
リクト
「〇〇さん…、ファーストアーティスト」
マサキ
≪女性はファーストアーティスト3人とアーティスト1人か…≫
リクト
「上田一馬さん、ソリスト」
ざわめく7人。
ガタイの良い男性・30代くらい・カズマ
「ありがとうございます。」

イメージ

マサキ
≪初っ端からソリスト…!すげえ!≫
≪別のバレエ団で既に踊っていた人なんだろうか…≫
リクト
「神木萌人さん…」
09
リクト
「アーティスト」
モエト
「…」
マサキ
≪モエトはアーティストか…レッスンじゃあ断トツ上手いと思ったけどな…≫
モエト・プリントを渡すリクトに向かってぼそっと
「ソリストかと思いました…」
にやにやしたリクト
「思い上がるな。」
「…、でも、早くソリストまで上がってソロの役取らねえとな…」
怪訝な顔をしてリクトを見るモエト
リクト
「その身長じゃあ、群舞はちょっと…な。」
目を見開くモエト
憎悪の表情を浮かべながらマサキの隣に戻ってくる。
マサキ
≪な、なんだ…?≫
リクト
「鈴木マサキさん」
マサキ
≪…!≫
10
リクト
「アーティスト」
マサキ
「は、はいっ…!」
マサキ・リクトからプリントを貰いながら。
「ありがとうございます。」
リクトがマサキに耳打ちする
「実はな…」
「お前がこん中じゃあ一番実力が無い。」
「背が高いだけで選ばれたんだ。死ぬ気で練習しろよ。」
マサキ
≪俺が一番下ーーーか。≫
リクト
「さて!」
11
リクト
「これから1か月間、午前中にバレエ団の団員と混ざって全体練習。」
「そのあと、昼に公演がある場合は16時~、夜の公演後は21時~、新メンバーのみで基礎練習をしていただきます。」

「はい」
リクト
「今日は以上です。」
===
@徒歩でアパートまで帰るマサキとモエト
マサキ
「…」
モエト
「リクトさんに…、身長のことを言われた。」
マサキ
「そうだったのか…」
モエト
「俺は早くソリストに上がらないと、居場所を無くすそうだ。」
マサキ
「…!」
立ち止まるモエト
12
リュックのショルダーストラップを握りしめ、地面を睨むモエト
===
モエトの回想:

「モエト!モエトが無事に、健康に生きられるために、毎日お祈りするね。」
幼いモエト
「ありがとーママ。」

「モエト!背が伸びるように、毎日お祈りしてあげるわね。」
「私は、背が低いから…、その分徳を積まなきゃね。」
中学生のモエト
「ありがとう、お母さん。」

「モエト!」
13

「ごめんね…。お母さんが悪いの。」
「あまり背が伸びないのはお母さんの行いが悪かったせいよ…。」
高校生のモエト
「…」
「モエト…」
===
@現在
マサキ「モエト!」
ハッとしてマサキの顔を見上げるモエト
「…」
マサキ
「大丈夫か?」
モエト
「大丈夫。ありがとう…。」
マサキ
「俺は…、辛いことや悩み、言いたくなかったら言わなくてもいいと思うぞ。」
モエト
「…」
14
マサキ
「全部共有してくれなくても、俺はお前の側にいるから。」
モエト
「…」
マサキ
「嫌でも同じ家だから…。笑」
モエト
「…本当は、嫌だったのかも。」
マサキ
「…うん。」
モエト
「俺の考えを、みんなに知られている…。」
「悩みも、恥ずかしいことも。」
===
回想:
正座をして五人くらいが輪になっている。
その中の一人はモエトの母だった。
泣いている母を他の四人が慰めている。
===
マサキ
「俺らはさ…」
15
マサキ
「知り合ったばっかりなんだ。」
「ゆっくりやってこーぜ。」
モエトのうつろな目に少し光が差す。
マサキ
「あ~~~~、でも俺も、『お前が一番ヘタっ』て言われたんだよ~」
ちょっとぎょっとするモエト
「ま、まあ俺よりは下手だな。」
マサキ
「この気持ち、誰かに言わないとおさまらねえぇ~」
モエトが笑う。
笑顔で家に帰る二人。
つづく。
つづきはこちら↓


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?