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2021年夏の大傑作「サマーフィルムにのって」

久しぶりに映画館で映画を見た。「サマーフィルムにのって」。
この映画のことを知らない人もまずはとにかく予告編を見て欲しい。

時代劇オタクの映画部員「ハダシ」が自分の理想の時代劇を撮るためにやっと見つけた主演俳優は未来からのタイムトラベラーだった?という、何とも要素てんこ盛りな青春ムービー。観る前はこれだけの要素どうやって着地させるんだろうと思っていたけれど、ま〜〜〜〜あめちゃくちゃよかった。確実に私の好きな作品リストに載ったし、2021年暫定1位。映画作りに全力で臨む高校3年生たち、そのひたむきな熱量と友情と恋愛と、未来に対する絶望と希望。そしてなにより、映画に対する愛情が詰まりに詰りまくっていた。


*以下、少しだけネタバレを含みます。



未来から来た凛太郎が口を滑らせたことで、「未来には映画が存在しない」という絶望的な事実を知るハダシたち。「こっちの世界では動画は5秒がスタンダードなんだ」「みんな自分の物語を生きるのに忙しいんだ(ニュアンス)」と描写されていたのにはグサッときたなぁ。今だってTikTokが台頭してからというもの流行るコンテンツはどんどん短くなって来ているし、Youtubeですらショートムービーみたいなものに対応しだしている。そういえば数ヶ月前の菅田将暉ANNで、リスナーから「今の若い人たちは映画を倍速とか10秒飛ばしとかを使って観るらしいですよ」というメールが届き、菅田将暉が割とガチで落ち込んでたことあったな。5秒とまではいかなくても割とあり得ない話ではないかもしれない...。

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ハダシたちがそんな衝撃的な事実を知ってから物語は後半へと向かうのだけど、いや〜〜〜〜とにかくラストシーンがめちゃめちゃよかったですね!!!!!!!どうやら賛否両論あるらしいけれど私はめちゃくちゃ好きだった。ハダシが土壇場でラストシーンを書き換える決断をしたのは、ライバル視していた映画部のキラキラ青春ラブコメ監督の花鈴とも同じ映画を見て、泣いて、語り合った日があったから。そんなことが伝わってくるところも、もうめちゃくちゃ愛だった。正直、映画部にこんな花鈴みたいなキラキラ部員はおらん!とか、いやそもそも普通の高校にこんな大規模な映画部ないわ!とか突っ込みどころもあるのだけど、それらを補ってなお余りあるこの作品の魅力よ。スクリーンから放たれるその瑞々しい魅力がこの作品を完璧にまとめ上げていたのだろうし、私もその魅力に取り憑かれてしまったひとりだ。

で、ラストの殺陣シーンの素晴らしいこと!!!伊藤万理華さん、金子大地さん、二人ともとにかく目で訴えかけてくるお芝居がとんでもなく、「ライバルならさよならしなきゃだね。バイバイ」「さよなら」と言い合う二人のアップ、そしてお互いに斬りかかろうとした瞬間にスパッとタイトルが映し出される、その後味がめちゃくちゃ爽快で最高だった。エンドロールに入った瞬間、思わず立ち上がって拍手したい衝動に駆られたほどだった。

そして、凛太郎が未来人というSF要素は決してただの演出要素ではないんですよね。映画がない未来に映画を残したい。過去と未来を繋ぎたい。そんな軸が通ることで作品の隅々から感じる映画に対する愛とリスペクトが、とても心地よかった。


爽やかで、全ての瞬間が愛おしくて、それでいて熱量に圧倒された最高に気持ちの良い真夏の97分間。きっと私は、もう一度劇場に足を運んでこの映画を見ると思う。ハダシや凛太郎が撮った映画に、私も未来で出会えますようにと願いながら。


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余談ですが、私はこの作品の金子大地さんにマジでギュインギュイン(ギュインギュイン...)し、97分の間に何度もぐらついて危うく転げ落ちそうになってしまいました。辛い。助けてくれ...。あんな目で見つめられたら恋に落ちる以外の選択肢はないだろうが。あと予告にもほんの一瞬だけ映ってるけど、ラストシーンでは邦画史上最高の壁ドンを見ることができます。

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