タイムトラベルしてきたお客さま
気持ちの良い秋晴れが続くこの頃。
先日一瞬だけ寒い日があった。その1日は寒すぎて思わず床暖房をつけたが、そんなことなどとうに忘れるような、半袖で過ごす人もいるほどの暖かさ。
あれれ。11月ですよね?タイムスリップしていませんよね?
こんなポカポカにされたら絶好のお外活動日和やん、まいったね。
お外活動日和に抗うことなく、ここ最近は毎週末にあちこちの大きめの公園へ行っている。
公園でブランチと称したパンを食べたり、散歩したり、秋探しをするのがなんとも楽しい。公園だからといってがっつり走り回らなくても満足する、わたしはそういう大人なのだ。
といいながらも、今回はちょうど良い高さのコンクリートの長い塊(名前がわからん)を見つけると家族4人で「どんじゃんけん」をした。
4人を2チームに分ける組み合わせは3パターンあるので全3回。これがなかなか勝負がつかず何度も降りては走り、再び登るので、じんわりと汗をかく。そのくらいの暑さである。
ちょっとした森の中も散策する。
坂を登るとたくさん木が生い茂っている場所になるので、わが家では“森”と呼ぶ。どんぐりにまみれた森の中をずんずん歩く。少し歩くとすぐ反対側が見えるくらいの大きさで、分かれ道はたくさんあるけれど、きっとどこにでも繋がっているのだと思える安心感のある森。
この森をGoogleMapで開くと、鍵穴のような形をしているはずだ。
そう、ここは。
古墳なのだ。
ここの古墳公園(とわが家は呼ぶ)は、埴輪が並ぶ。触れる埴輪や、ドラム缶のような土器もあるので、縄文時代を身近に感じることができる素敵な場所なのだ。
わたしはまんまと、縄文時代にタイムトラベルしている様子をもわんと妄想したりする。土器、上手に作れるかな。皆と違う土器を作ってしまいタイムトラベラーだということがバレてしまいそうだ。わたしのポンコツ具合はきっと縄文時代の人にも感づかれるだろう。
そして足元のどんぐりたちは一体何年前のタイムトラベラーなのだろうか。
古墳公園には何度か訪れている。
それは子供以上にわたしが気に入っているからで、積極的にタイムトラベルをしたがっていることを示している。
3年前のある日にも訪れた。
たしか少し寒い時期だったので、白いパーカーの上にGジャンを羽織っていた。その日も森の中をずんずん歩き満足して帰ってきた。
子供たちがゲームをしている間、夫はソファでうたた寝していて、わたしはダイニングの椅子でウトウトしていた。ほどよい疲れと共にやってくる眠気。こんなにも気持ち良いものはない。
ウトウトしたまま右手を机の上に置いた瞬間、わたしの視界に何かが映った。
白いパーカーの右肩からひじにかけてゆっくり動く、何か。
ウトウトの眼でそれを見てみると、
薄い黄緑色で、ゲジゲジとしていて、うにょうにょと動くものが。。。
「。。。っっっぎゃーーーーー!!!」
毛虫、と認識するよりも先に叫んでいた。
叫んでから徐々に認識したような気がする。
あまりの絶叫に夫は飛び起き、子供たちはゲームの手を止めてものすごい恐怖の顔をしてこちらを向いた。
「何?!どした?」という夫に
「むしっ!むしーっっ!」とパニックなわたし。
今すぐ離れたい一心で右手をぶんぶんし、“うにょうにょ”はリビングの床に落ちた。
「なんやねん。びっくりしたー。」「もう!ママこわいー!」「その声にびっくりする!」と、非難轟々。わたしはあまりの絶叫に息を切らす。はぁ、はぁ。すみませんね。
状況が分かり冷静になった夫は、リビングに常備している虫取り網で毛虫を捕獲し、外へ出してくれた。
ウトウト寝からの不意打ち。腕を伝う“うにょうにょ”は、古墳公園からのお客さまなのだった。お客さまになんたる扱い。
そして今に至る。
いくつかのお気に入りどんぐりを持ち帰ってきた次男は「学校に持って行く」とジップ付きの袋に入れた。
「どんぐり何個あるん?」と聞くわたしに
「んーと、1、2、、6個とー、ちっちゃい虫さんもいるね〜」
「6個かぁ。学校に持って行くならもうちょい取っても良かったかなぁ。。。。。へ?今なんて?」
袋を見ると白くてちっちゃいもの。
どんぐりの中の身かな?かわい♡なんて思って見ていたのに、うにょうにょうにょ。。。
「ぎゃー!これ、虫やん!」
思わず絶叫。
またしても古墳公園からお客さまはやってきていて、どんぐりにカポッと丸い穴を開けて「おじゃましまーす」と出てきた。
今回も不意打ち。3年前のデジャブが。。。
完成に油断しているときの“うにょうにょ”は絶叫につながる。次男を再び怖がらせてしまった。
そしてお客さまに気づかず3日ほど放置してしまった。袋の中で、またもや失礼いたしました。
再び玄関からお外へとお見送りをさせて頂いた。
うにょうにょする彼を見て考えた。
タイムトラベラーどんぐりから登場したお客さまは、もしかしたら3年前の“うにょうにょ”の彼の子孫かもしれない。もしくはタイムトラベラーした“うにょうにょ”の彼本人の幼少期かもしれない。
きっと古墳公園には何かがあるはずだ。何かが。