見出し画像

今週の【ほぼ百字小説】2021年12月27日~2022年1月9日

 今週もやります。よろしくおつきあいをお願いします。【ほぼ百字小説】をひとつツイートすると、それについてひとつ書きます。「マイクロノベルの書き方」というほどきちんとしたものではありませんが、何から発想したか、とか、どう変形したか、どこに落とし込んだか、みたいなことをつらつらと書いてます。創作過程みたいなものを自分でたどってるので、私のやり方はだいたいそれでわかると思います。まあこれだけの数を書いてきたので、参考というか、ちょっとしたガイドにでもなれば。マイクロノベルを書く、というのはなかなかおもしろい遊びですから。

 今回はお正月を挟んだりして更新が滞るかもしれないので、100円で二週間分にしときます。一週間ごとに全部を通して朗読して音声ファイルを貼ります。まあ道端でやってるライブに投げ銭する感じで100円投げていただけるとなかなか励みになります。

 今回も、掌編『ショートカメリ』がついてます。

12月27日(月)

【ほぼ百字小説】(3542) あの怪獣のことを考えよう。いつも海からやってきて高い塔を破壊し、また海へと帰っていく。悪い夢のようにそれを繰り返すあの怪獣のことを、そしてあの怪獣が今も見続けている悪い夢のような我々のことを考えよう。

 これは何でしょうねえ。いや、怪獣、というかあの怪獣、はっきり言えばゴジラですよね。もちろん、あの怪獣のことは、よく考えるんですよ。だから、まあこういうのも書くだろう、と思うんですが、こうして解説みたいなことを書くようになると、なんでこれ? とあらためて思います。だいたい子供の頃から思ってたのは、みんな怪獣があんなに好きだったはずなのに、いつのまにか「卒業」してたりするんですね。今でこそオタク、という言葉があって、大人も怪獣のことを論じあったりしているんですが、私が子供の頃はそんなことなかった。やっぱりずっと卒業なんかできないままで、それでけっこう大きくなってから、そういう人もけっこういるんだ、ということを知るんですね。まあそんなわけで、今もよく考えます。なんでこんなに惹かれるんだろう、とか。夢にもよく出てきました。だからゴジラと悪夢は、私の中ではごく自然に重なってます。だからそもそも辻褄が合うはずないんですね、あんなの。あんな生き物がいるはずないし、そもそも生き物なのかどうかもわからない、というのが私のゴジラのイメージです。夢の中から出てきたもの、みたいな感じ。そして、こっちが夢に見るんだから、むこうもこっちの夢を見るんじゃないか、とか。これはまあそんな話。

12月28日(火)

【ほぼ百字小説】(3543) すべての都市は、ある種の地図なのだ。そしてどうやらヒトというのはそんな地図を次々作り、この惑星全体をひとつの地図として完成させるため生み出されたものらしい、とわかったのは、地図のひとつを解読したから。

 ドローンのおかげで航空写真というものがものすごく手軽になりました。昔は、小学校のグラウンドに作った一文字なんか撮影するのに、セスナで飛んでもらったりしないといけなくて、それだけで何万円もかかったりしたものですが、もうそんなことはないし、あの頃に感じていてありがたみみたいなものもないですね。これは、そういう空からの街の写真を見て、ああ地図とそっくりだ、と思ったことから。当たり前ですが、でもこれが別の何かの地図だったとしたら、みたいなことを思いました。そんなことを考えずに、人間はそれを作っていて、そういう方法で作られる地図みたいなもの、ということで。そして、地球全体がそういう地図になっている、という妄想ですね。地球の大きさの地図、ということは、宇宙の地図みたいなものか、とか。

【ほぼ百字小説】(3544) 箱の中に閉じこもる。それで、箱が開くまでは何も決定しなくてよくなる。全員で箱に入ったから、外から開けられる心配もない。なのに、何かが外から開けようとしている。箱の中から見れば、箱の外は箱の中なのだな。

 猫は出てきませんが、まあ猫的な話。いわゆる「シュレディンガーの猫」ですね。みんなで閉じこもれば、決定しなくてもいいのでは、という変な提案。確率的な状態のままにしておける。そして誰も開けないようにみんなで中に入ったはずなのに、誰かが。でも箱を閉じているからこっちからも外は見えなくて、いったい何者が開けようとしているのかわからない。最後の一文は、あれです、宇宙の缶詰。赤瀬川源平さんの作品に実際にあるのかアイデアだけなのか、ちょっと記憶があいまいですが、缶詰のラベルを内側に貼って、それをもういちど閉じたもの、です。すると缶が裏返ってるから、宇宙全部が缶詰の中、ということになる。たぶん、あそこからきてます。

 缶詰というネタは好きで、他にも書いてます。たとえば、これ。

【ほぼ百字小説】(11) 缶詰工場だ。缶詰を作る工場ではなく缶に詰められた工場。缶で送られ、目的地で缶から出されて稼働する。工員も缶詰になる。仕事がら自分で自分を詰めることはできるが、蓋だけは外の誰かにしてもらわねばならない。

ここから先は

18,379字 / 3ファイル

¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?