これからつくられる過去に向き合う覚悟はあるか

『嚙みあわない会話と、ある過去について』(辻村深月著 講談社 2018)

 読み切りました。
 これは、読まなければならない。そんな使命感にも似た思いに駆られて、一気に読みました。頭も心もぐちゃぐちゃの状態ですが、この思いは今しか書けない、そう思ってこの感想を書き出しました。もしかしたら、今の僕は「早穂」なのかもしれません。
 ホラーよりもホラーな展開。僕はあまりホラーが得意ではありませんが、それでも読まなければならないと、そう思いました。それは、内容が「教育」に関わることばかりだったから。パッとしない子、モンスターペアレント、親子や家族の問題、いじめ。
 タイトルと作者を見て、衝動買いをしたあの時から既に「今」この時が決まっていたかのように思います。それも怖い。

 自分も過去に囚われている。この本が気づかせてくれました。そして、今、思うのは、「今どうするか。これからどうするか」を考えることが大切だということです。

 自分と、自分の過去と、真正面から向き合ったような、そんな感覚があります。「パッとしない子」の美穂の気持ちも、「ママ・はは」のスミちゃんの気持ちも、スミちゃんの母の気持ちも、「早穂とゆかり」の早穂の気持ちもゆかりの気持ちも、共感できる部分があって、今はこうして「共感できてしまう」ことを恐ろしく感じています。

教師である美穂とスミちゃん。
教師だった自分。

家族に思うところがあるスミちゃん。
家族に思うところがある自分。

真面目なスミちゃんの母。
真面目な自分。

学級委員だった早穂。
学級委員だった自分。

嘘つきだったゆかり。
嘘つきだった自分。

 これから僕は、子どもたちをはじめ、他人とどう関わっていこうか。今は大きな不安があります。これから出会う過去に向き合う覚悟が、自分にあるのか。これから子どもたちの中につくられていく過去に向き合う覚悟が、果たして自分にあるのか。

 これからどうなるかなんてわからない。過去も、目に見えなくて、事実としては変えられない。だったら、やっぱり、今どうするか。自分がどうしたいかが、大切。それだけは、はっきりしています。

 教育者を目指す人には、この本をぜひ読んでほしいです。覚悟を持って、読んでほしいです。読んで、人とかかわる覚悟を、他人のことを想像し続ける覚悟を持てるようになってほしい。(これは、自分への言葉でもあります。)
 もちろん、物語としても、心臓を手でギュッと握られるようなスリルを味わいたい方におすすめの本です。

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