界 ポロト | 文化の尊さをアイヌに学ぶ
1年のうちに2回も北海道に来るとは思わなかった。夏と冬、ふたつの景色をこんなに早く見ることが出来るなんて。
その夏、わたしたちは初めて北海道に行った。初めての北の大地に感動することだらけだった。洞爺湖、室蘭、小樽、余市、札幌、すすきの、そしてトマムを回った。北海道はでっかいどう!とはよく言うが、本当にその通りだった。
大自然、食はもちろん、そして白老にあたらしくできたウポポイ(民族共生象徴空間)が本当に楽しかった。異文化が大好きなわたしたちにとっては、最高のアミューズメントパークだった。
ウポポイではアイヌ文化を隅から隅まで体感することができる。目で見て、耳で聞いて、頭を使って、味わって、アイヌの人々が昔、そして今も、どんなことを大切に暮らしているのか、知ることが出来る。そんな空間である。
夏の旅行では札幌から洞爺湖へ向かう途中で寄り、1時間ほど滞在したのだけれど、まったく時間が足りなかった。口琴を買って、旅から戻った後も練習をした。そして、またすぐに行こうね、と話した。
旅から帰ったちょうど矢先に、ウポポイのすぐとなりに界ブランドの施設が開業すると知った。「界 ポロト」である。ポロトとは施設のすぐ近くにある海跡湖のポロト湖が由来。
わたしたちは、「これは行くしかないね。」と、すぐに宿泊予約をした。今度はどっぷりアイヌ文化を楽しむために北海道に行こう、と。こうしてわたしたちはまた北海道に来たのである。
ところで「界」とはなんぞや、というと、星野リゾートが持つサブブランドのひとつで日本全国に展開するご当地の魅力に出会うことができる温泉旅館である。「王道なのに新しい」というコンセプトの通り、従来の温泉旅館の型にはまることなく、地域の魅力を存分に味わえる施設になっている。
冬の北海道で運転をするのは少し自信がなかったから、わたしたちは空港から電車で向かうことにした。JR新千歳空港から南千歳駅まで約3分(近い)、そして南千歳駅から白老駅まで特急で約40分(近い)。本当にあっという間に白老に到着してしまった。
昼前につき、わたしたちはウポポイの奥に見える界ポロトを確認しつつ、ウポポイへ向かった。慣れた手つきで、といってもたった2回目なのだが、チケットを購入し、入館する。入館の際、スタッフの方がチケットをチェックしてパンフレットをくれるのだが、このときの対応が本当によかった。ほんの一瞬なのだけれど、「あ、ウェルカムされている」と感じることができる。特別なことを言われたわけでも、もらったわけでもないのに、その言葉にある温度とやっぱり笑顔と、雰囲気がわたしたちにそう感じさせた。おもてなしを大切にしているひとりとしては、とても勉強になる瞬間だった。
ウポポイへ入るとそこはもう別世界だった。ウポポイはとても広くて、いくつかのエリアに分かれている。シアターがある場所、展示がある場所、ものづくりをしている場所、アイヌ語で集落を意味するコタンを再現したエリア、などなど。敷地はとても広くて、移動もまあまあ歩く。様々な催しがそれぞれのエリアで行われていて、それがタイムテーブルで確認できるようになっている。前回来たときはそのことを知らずに、うまく時間を合わせることが出来ず、伝統芸能を1つ見ただけだった。
今回はもう、学習済み。わたしたちはもらったパンフレットを大きく広げ見たいもの、参加したい体験のタイムテーブルを確認した。伝統芸能、コタンでのアイヌ語でのビンゴ、民話のシアター上映、工房見学、展示、そしてショップ。完璧なスケジュールを組み、わたしたちは順々に回った。
知らないものに触れることはどうしてこんなにも楽しいんだろう。知らないものを知るたびに、知らないことがあることを知るたびに、もっともっと生きていきたいと思う。知るという行為は、わたしの命をいつまでもこの世界にいさせてくれるように思う。寿命が延びている感じさえする。
アイヌの歴史は決して明るいことだけではないということがよく分かった。同化政策などにより苦しんだひとたちがたくさんいた。どんな暮らしにだって、どんな家に生まれたって、それぞれの苦労があるのだけれど、それでもどうしたってその苦労の大きさに差もあるのだと思う。そしてそれは、生まれた場所や家柄、文化、宗教に左右されること、それはどうしても事実なのだ。でも、悲しみや苦しみの大きさを比べることはできないと思うから、それぞれをその立場で正しく理解したいと強く思う。それがわたしに出来る想いを馳せる唯一の方法であるように思う。知れることを知りたいと思う。そして出来れば、その中にある幸福も見つけたい。傲慢かもしれないけれど、そう思う。
アイヌ語のビンゴ大会は本当に難しかった。わたしが覚えたアイヌ語は「ヒンナ(おいしい)」と「カムイ(神)」それから「ウポポイ(歌うこと)」。帰りにゴールデンカムイの漫画を買った。
そんなこんなで夕方になり、わたしたちはまた来るだろうと思いながらウポポイをあとにした。次は料理教室に参加したいな、と思っている。
そうしてわたしたちは、ウポポイから歩いて5分ほどの界ポロトへ向かった。
▼つづきです▼
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