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2020年10月の記事一覧
〘異聞・阿修羅王27〙乾闥婆
阿修羅を除いた八部衆全員が、乾闥婆王(けんだっぱおう)の見解に興味津々とばかりに傍近く集った。
「始めに言うておくが、これから話すことは、あくまで、私が見聞きして来たことから推測したに過ぎん。それは承知の上で聞いてくれ」
六人が頷く。
「皆も薄々気づいているとは思うが、この須彌山(しゅみせん)は、幾度となく消失と再生を繰り返している。これは間違いないと、私は確信している」
〘異聞・阿修羅王26〙二分されしもの
天が二分されてから、どれ程の年月が経ったのか──。
無謀にも雷帝インドラに闘いを挑み、最初の敗北を喫した阿修羅王は、忽然と姿を消した。
その後、何度となく、いや、何十回、何百回とインドラに挑み続け、同じだけの回数、負けを喫していた。だが、いつも唐突に現れては去っており、阿修羅本人はおろか一族の者すら、どこに住まうか依然としてわかっていない。
ただ、いつの頃からか、魔族に襲
〘新話de神話〙異聞でも何でもないやつ6
とりあえず、何となく前半戦っぽいとこ(←!)までひと段落したので、1回休みってことで。
ホント、マジで、絶対、何があっても、信じちゃダメなやつですから!w
有名な神話であれば認知されてるから、誰もデタラメを信じたりはしないでしょうし、むしろ違う風に書いてるとこは指摘されまくる気がするんですが、どうも今回のように仏話成分と神話成分の比率が 6.5 対 3.5 とかだと、どうにも似非感
〘異聞・阿修羅王25〙勝敗
インドラが振り上げた大剣と、阿修羅が上空から振り被った二刀は、ぶつかり合った瞬間、激しい火花を散らし、衝撃波が床を捲り上げた。
押し引きの狭間、互いの剣が研がれ合う激しい鳴りが耳を突く。
(相変わらず、見かけによらぬ剛力よ……!)
一見、華奢な阿修羅の腕は、確かにその見かけからは想像出来ない力を放っていた。
(真、いとも簡単に、このおれを薙ぎ払った力と、再び相まみえる日が
〘異聞・阿修羅王24〙本性
矢を番え、毘沙門天(びしゃもんてん)は阿修羅に焦点を定めた。
「これも運命(さだめ)……恨むでないぞ……!」
低く呟いて放った矢が、周囲の空気を巻き込んで更なる勢いを纏い、龍の如く咆哮を上げて襲いかかる。
「フッ……」
己の正面から迫り来る矢に、阿修羅は怯むどころか、残酷なほど艶美な笑みを浮かべた。
「私をたかだか八部衆と甘く見たか? それとも、哀れんで情けをかけたか?
〘異聞・阿修羅王23〙火蓋
阿修羅王が兵を挙げた、との報に、いきり立つ者、奮い立つ者は皆無だった。
それだけに留まらず、八部衆にしろ四天王にしろ気が重い戦いでしかなく、兵たちに至っては震え慄き、戦意も喪失。仮にも立后と言う慶事を、喜ぶ暇(いとま)すらない有り様となった。
「……あやつのことだ。本気で来るだろうな」
八部衆の一人・夜叉王(やしゃおう)が、誰にともなく呟いた。唇を締め、迦楼羅王(かるらおう
〘異聞・阿修羅王22〙汚名
舎脂(しゃし)は背を正し、ついと膝を真っ直ぐインドラに向けた。
「摩伽(まか)様は……我が王を厭うておられるのですか?」
インドラの瞬きが驚きで止まる。
「……そなたは父を、父、と呼ばぬのか?」
質問で返され、少なくとも表面上、舎脂の表情は変わらなかった。だが、内心では、インドラが重きを置く優先順位に驚いていた。
「いえ、幼き時は……長じて、そう呼ぶよう言いつかりました
〘異聞・阿修羅王21〙阿修羅族の娘
毘沙門天(びしゃもんてん)が去った後、インドラは何かを考えるように黙り込んでいた。だが、その口角は、何かを期待するかのように薄らと上がっている。
「……何故(なにゆえ)、あのようなことを仰ったのです?」
不意に聞こえた声。いつの間にか傍にいた声の主に、インドラの意識は引き戻された。
「あのような、とは?」
半分は惚け、半分は本心からの疑問である。
「あの仰りようでは、よ
〘異聞・阿修羅王20〙断絶
その形相に、兵たちは文字通り震え上がった。
「貴様……それで黙って引き下がって来おったのか……?」
巻き上がる風に髪と衣を煽られ、宇宙を映した眼(まなこ)の周囲は血で烟ったように朱く染まる。
「ようも、それで四天王筆頭など名乗れるものだな」
その姿はまさに、かつて『魔人』とも謳われた鬼神・阿修羅王そのものだった。
「言葉が過ぎるぞ、阿修羅王!」
「間違いを正すも、その