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ニーチェと荘子ともののけ姫 存在しない理想のパートナー

ツァラトゥストラは孤独でしたが、鷲と蛇が一緒にいました。

『荘子』に登場する神人も山に独りで住んでいましたが、飛竜が共にいました。

もののけ姫のサンも人間とは関わらず、山犬と一緒にいました。

彼らと動物たちは、以心伝心の関係であり、打てば響くような仲でした。これらの動物たちは、理想的なパートナーの象徴です。しかし、あくまで理想であるため、現実世界で出会うことはできません


人間は、分かり合える他者を求める生き物ですが、存在しない理想のパートナーを追い求めることが、苦しみを生み出します。


理想のパートナーは理想として持ち続け、イメージの世界で会話するのも良いでしょう。しかし、現実の世界では理想を捨て、現実の人間と関わり合いながら、人間関係で自己を鍛錬し、自分が理想の人間を目指していくことが大切なのです。


話が通じない人間と過ごすよりも、心で通じ合える動物と共にいる方が、より楽しく、平穏な日々を送ることができますが、人間に絶望していたツァラトゥストラが、それでも何度も下界の人間と関わりを持ったように、完全に人間との関わりを捨ててはいけないのです。

これはわたしの生き物たちだ」とツァラトゥストラは言い、心から喜んだ。「太陽のもとにおける最も誇り高い生き物と太陽のもとにおける最も賢い生き物」

ニーチェ『ツァラトゥストラ』「ツァラトゥストラの序説」手塚富雄訳、中公クラシックス、Kindle版。

藐姑射(はこや)の山(神話上の山)に、神人が住んでいる。肌は氷や雪のように白く、体のしなやかさは乙女のようだ。穀物は一切食べず、ただ風を吸い露を飲み、雲気に乗り、飛竜を操って、世界の外に遊び出ていく。彼の霊妙なエネルギーが凝結すると、あらゆる物は傷病なく成長して、五穀も豊かに実るのだ。

池田知久訳『荘子 全現代語訳』「逍遥遊篇」講談社学術文庫、Kindle版。

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